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2016年02月28日15:07

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楽しいレトロプロブレム(07)解答編

(19)Michel Caillaud(StrateGems 1998, 3rd Prize)
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Proof Game in 11.0 moves (15+15)
b/c) Pd7→d6/d5

 取られている駒はどちらもP1枚。また白の手は11手ちょうど。よって白Pb2は不動のまま取られています。黒はPxb2としてからb1で成る迄、白にPa4-Ra3-Rc3-Sa3としてもらわないといけません。この4手を含めると、黒には2手しか残されていませんが、b1で成った駒を後2手で白に取らせることはできません。従って、黒はa8のRを捨てておいて成Rをa8に戻すことになります。
 a)の作意は、a)1.d3 a5 2.Be3 a4 3.Bb6 a3 4.e3 axb2 5.a4 Ra5 6.Ra3 Rf5 7.Rc3 Rf3 8.Sa3 b1=R 9.Ke2 Rb5 10.Kxf3 Ra5 11.Kg3 Ra8となります。

 b)では当然a)と同じ手順は成立しません。しかし、黒Bc8は2手でe2に捨てることができるので、1.d3 a5 2.Be3 a4 3.Bb6 a3 4.e3 axb2 5.a4 d6 6.Ra3 Bg4 7.Rc3 Be2 8. Sa3 b1=B 9.Kxe2 Ba2 10.Kf3 Be6 11.Kg3 Bc8という順が成立します。

 更にc)では、B成も成立しませんね。しかし今度は、Qを2手でa3に捨てることが可能です。従って、c)では1.d3 a5 2.Be3 a4 3.Bb6 a3 4.e3 axb2 5.a4 d5 6.Ra3 Qd6 7.Rc3 Qa3 8.Sxa3 b1=Q 9.Ke2 Qb5 10.Kf3 Qd7 11.Kg3 Qd8が作意となります。

 このように「出題図で原型位置にある駒が実は成駒である」というテーマは、Pronkin themeと呼ばれています。本作では、3種類のPronkinがd筋の黒Pの位置によって鮮やかに描き分けられています。流石はCaillaudですね。


(20)Luigi Ceriani(Chess Amateur 1929, HM.)
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白Bを1枚加えて、#1にせよ(9+8)
b)全ての配置を1筋左にずらしてから白Bを1枚加えて#1にせよ
c)全ての配置を2筋左にずらしてから白Bを1枚加えて#1にせよ

 まず、なくなった駒の確認から。白はQRRBBPPの7枚で、黒はQRRBBSSPの8枚。また、白側の駒取りはPg7による4枚で、黒側の駒取りはPc5,c6,f4による3枚です。
 a)は、b1に白Bを追加して1.Ba2#ですね。g8にBを追加した場合、このBは成駒ということになりますが、白側の駒取りが多過ぎてillegalです。

 ではb)はどうでしょうか。今度はh筋の白Pを利用すれば、f8にBを追加してもlegal positionになりますね。従って、作意は1.Bxe7#となります。

 c)の場合は、黒Pによる駒取りが6枚となり、これで黒側の駒取りは尽きています。従って、白Bをc1以外に追加すると黒の駒取りが多過ぎてillegal。作意は1.b3#となります。

 作者のL.Cerianiはレトロ界の巨人。その創作力は、本作からも十分に窺い知ることができます。


(21)Gianni Donati(Thema Danicum 97 01/2000)
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Proof Game in 10.0 moves (15+15)

 白のなくなった駒はP1枚のみ。一方、黒が取られたのはQ1枚だけです。黒Pd6は駒取りをしていませんから、d筋の白Pは直進してからc7で黒Qを取り、c8で成ったことが分かります。黒がf6で取った白駒は何だったのでしょうか?もしc8で成った駒なら、Ceriani-Frolkinということになりますが…。
 何はともあれ、序は1.d4 c6 2.d5 Qb6 3.d6 Qc7 4.xc7 d6とするしかありませんね。

(図1)
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 この瞬間、白はPc7以外の駒を動かすことになりますから、c8で成Sを作ってb6-d5-f6と持っていくのは手数オーバー。また、c8=Qだと黒Kにチェックをかけてしまうことになり、黒はBxc8と取らざるを得ません。以上より、Ceriani-Frolkinは成立しないことが分かりました。
 従ってPronkinということになりますが、c8は白桝ですから黒がf6で取った白駒はBではありません。Sではやはり手数オーバーなので、ここはQしかありません。よって5手目以降は、5.Qd4 Bh3 6.Qf6 exf6 7.c8=Q+ Ke7と進行します。先にQを捨てておけば、黒KはKe7とチェックを躱すことができます。

(図2)
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 この後はもうお分かりでしょう。8.Qg4 Ke8 9.e3 Se7 10.Qd1 Bc8となって出題図に到達します。
 白QのPronkinというメインテーマに対し、黒Qのtempo moveと黒BとKのswitchbackが彩を添えています。そして何より、これらが綺麗に溶け合って表現されているところが素晴らしいではありませんか!10.0手という短手数でも、これだけのことが表現できるんですね。
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