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2016年01月31日14:41

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楽しいレトロプロブレム(03)解答編

(07)Roberto Osorio(Retro Championnat de France RIFACE 2014)
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Proof Game in 10.5 moves (15+15)

 黒には1手の猶予もないので、Pd7は白が取ってあげなければなりません。従って、序の1.Sf3 a5 2.Se5 Ra6 3.Sxd7 Kxd7迄は必然で、以下の局面となります。

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 ここからが本題。白は後8手指さねばならず、そのうち1手はPe3ですから、7手消費する必要があります。しかも、黒Kをb5に連れていくには白Bf1の利きを遮断しておかなければなりません。遮蔽駒は白Kをd3に置くしかありませんが、このKのswitchbackに4手かかりますから残りは3手。となれば、自然と白Qのtriangulationが見えて来る筈です。ということで、作意は1.Sf3 a5 2.Se5 Ra6 3.Sxd7 Kxd7 4.e3 Kc6 5.Ke2 Sd7 6.Kd3 Kb5 7.Qe2 Rc6 8.Qe1 Sb6+ 9.Ke2 Bd7 10.Qd1 Qc8 11.Ke1+ となります。
 ぐずぐずしていると黒Qからチェックをかけられますから、白Kはd3に余り長居できません。このことから、どちら回りでも良さそうな白Qの回転の向きもちゃんと限定されています。このKとの絡みで、白Qが例えばg4-f3-d1と動いてtempoを失うこともできないようになっています。最後はいずれも初形位置に戻って幕。明快に表現された、KとQによる複合tempoでした。

では、今回も同様の構想を持つ作品を紹介しておきましょう。

(07-a)Gianni Donati(Thema Danicum 98 04/2000)
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Proof Game in 10.0 moves(16+16)

 作意は、1.f3 e5 2.Kf2 Qh4+ 3.Ke3 Ke7 4.Qe1 Kf6 5.Qg3 Be7 6.Qf2 Kg5 7.Qe1 Qe4+ 8.Kf2 Kh4 9.Qd1 Bg5 10.Ke1 です。意味付けの純粋さという点では、こちらの方が上かもしれませんね。

(08)Wolfgang Pauly(The Chess Amateur 1913)
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#2 b)+bPg2 (4+4)

 Orthodoxでは、それが論理的に否定されない限り白から指し始めることになります。ということは、その直前の着手は黒だった筈ですが、そうすると出題図において黒のKとRがどちらも不動ということはあり得ません。従って、a)では黒の0-0はillegalで、作意は1.Ra8! Kf8/Rg8+ 2.Be5/Bg3#となります。尚、1.Be5?では1...Rg8+!で逃れです。
 b)では、黒Pg2が加えられた為に黒のKとRが不動である可能性が出てきます。レトロでは、castlingは「不可能性が証明できない限り可能」ですから、黒の0-0は今度はlegalとなります。よって、今度は1.Be5!がkey moveとなり、その後は1...Kf8/0-0 2.Ra8/Rg3#となります。a)と同様に1.Ra8?とすると、今度はcaslingによって逃れとなるのは明らかですね。
 必要最小限の配置で、castlingの可否を巡るロジックが鮮やかに描かれています。2解で白の初手と2手目が入れ替わる構成も見事で、流石は巨匠Paulyの作品ですね。

 ちなみに、castlingの可否に関するレトロ解析をプロブレムに初めて持ち込んだのは、かの有名なSam Loydです。

(08-a)Samuel Loyd(Musical World 1859)
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#2(2+4)

 作意は1.Qa1! --- 2.Qh8#というもので、1...0-0-0はillegal!全く無駄がなく、原理図にして完成品という感じですね。


(09)Martin Wolfgang Hoffmann(Die Schwalbe 122 04/1990)
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Proof Game in 8.0 moves (14+14)

 なくなった駒は双方ともQとR。特にRは自陣から出られないので、何かで取りに行く必要があります。となると、RをQで取るのが最も効率が良く、その為にはBが邪魔なので移動して貰わないといけませんね。ここまで分かれば、後は簡単な試行錯誤で解決する筈。作意は1.e3 d6 2.Ba6 Bh3 3.Qg4 Qd7 4.Sf3 Qb5 5.Rf1 Qxf1+ 6.Bxf1 Sa6 7.d3 Rc8 8.Qxc8+ Bxc8です。
 作者の狙いは勿論、双方Bの最遠Switchback。短手数で無駄な装飾もない簡潔な表現には好感が持てます。

 2枚の駒によるSwitchbackの作例を、もう一つ紹介しておきましょう。

(09-a)Roberto Osorio(StrateGems 10-12/2007)
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Proof Game in 12.0 moves(16+14)

 作意は1.Sc3 c6 2.Sd5 Qa5 3.Sxe7 Qa3 4.Sd5 Bb4 5.Sf3 Se7 6.Se5 0-0 7.Sxd7 Rd8 8.Se5 Be6 9.Sc3 Rd4 10.Sb1 Bc3 11.Sf3 Ra4 12.Sg1 Bc4 というもの。白はSしか動いていないことが明らかですが、こちらも2枚のSwitchbackが明快に表現されていますね。

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