産経新聞夕刊の夕焼けエッセーが毎日の楽しみのひとつです。
■こりゃ最高!笹舟のお客にいそうな話
http://nishinomiya.areablog.jp/blog/1000061232/p11316505c.html
仕事柄、終日ものをいわずに過ごすことが多いため、先日初めてひとりカラオケに挑戦してみた。
不慣れながら好きな曲にいくつかトライし、興が乗り始めたときである。おそらく隣のルームからだろう。中年女性の太い声が猛烈な音量で聞こえてきた。
そのパワーに唖然(あぜん)としたのはともかく、次々と繰り出されるその歌が、ことごとく懐旧の情を催すものばかり。花の中三トリオやキャンディーズ、ピンク・レディーといった昭和40年前後生まれの者にとってなじみ深い往年のヒット曲を、朗々と熱唱している。私は壁越しにうごめく懐メロのオンパレードに聞き耳をたて始めた。
アラウンド・フィフティ。思えばバブルの頃に若い時代を過ごし、その後家庭を持った世代にとって、今や子供たちも成人してようやく若干のゆとりを見出せる時期を迎えているのだろう。子宝に恵まれなかった私にはその苦労は知る由もないけれど、隣の女性も、これまで持ち得なかった貴重な余暇を満喫されているものと思われた。
利用時間が終了しルームを出ると、横のルームのドアが半開きとなっていて、その女性が燃え尽きたように放心の体でソファーに座り込んでいるのが見えた。
「お疲れさま。素敵なステージでした」。私は拍手したかった。お互い人生の折り返し地点を過ぎ、後半生の始まり。次なる人生のステージへ向け元気で歩み出していってね。そんなねぎらいの言葉が心をよぎるまま、店を後にした。
永田美咲 50 自営業 大阪市東淀川区
http://www.sankei.com/west/news/151228/wst1512280055-n1.html
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