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2015年11月27日23:26

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レトロプロブレムの世界(補記 その1)

R58 A.Frolkin (Die Schwalbe 1986)
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黒Pg7の初手は?このPは少なくとも何手動いているか?(15+11)

 白B2枚と白S1枚は成駒であり、白のなくなった駒はQのみ。一方、黒のなくなった駒はQBPPPの5枚。最終手は1.Rf3xQf4+であることが明らかであり、黒の駒取りはこれで尽きている。白側の駒取りはPd4によるものが1枚、Pe6,f6のcross captureで2枚、a筋及びh筋の白Pが成る為にそれぞれ1枚ずつの計5枚で、これで白側の駒取りも尽きている。すると、まずa筋の白Pがb筋の黒Pを取ってb8でBに成り、その後b筋の白Pが直進してまたb8でBに成ったことが分かる。(h筋の白Pはg8でSに成ったのだ)
 ここで妙なことに気付く。c筋の黒Pは白Pc3xd4とした後で成っている筈だが、その成駒が盤上に見当たらないのだ。しかし、明らかに白の最後の駒取りはPd4によるものなのだが…。散々悩んだ挙句、Be1が成駒である可能性に思い至る。だが、そんなことが本当に可能なのだろうか?

 まず、何はともあれ白Sの成を戻してみよう。

1.Rf3xQf4+ Sb3-c1 2.Pa3-a2 Sa5-b3 3.Pa4-a3 Sc6-a5 4.Pa5-a4 Se7-c6 5.Pa6-a5 Sg8-e7 6.Pa7-a6 Pg7-g8=S 7.Ph7-h6 Pg6-g7 8.Kh6-h5 Ph5xg6 e.p.+! 9.Pg7-g5 Sg5-h3+

(失敗図1)
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 en passant captureが出てくるのが如何にも作意らしい展開だが、ここで黒がretro-stalemateになってしまっている。やはり、一目散にS成を戻そうとすると失敗するようだ。
 en passantに持ち込む迄の手順を工夫することによって、黒Pの着手を1手少なくすることはできないだろうか?そう考えると、白Bb2をh4に運んで白Sh3をunpinし、白Rh3-h2とすることで黒Sg4を開放するというアイデアが見えて来る。ではこの線に沿って逆算してみよう。

1.Rf3xQf4+ Ba3 2.Ph7-h6 Bf8-a3 3.Pa3-a2 Bh6-f8 4.Pa4-a3 Bg5-h6 5.Pa5-a4 Bh4-g5 6.Pa6-a5 Sg5-h3 7.Pa7-a6 Rh3-h2 8.Sh2-g4 Sf7-g5 9.Sg4-h2 Sh6-f7 10.Sh2-g4 Sg8-h6 11.Sg4-h2 Pg7-g8=S 12.Sh2-g4 Pg6-g7 13.Kh6-h5 Ph5xg6 e.p.+! 14.Pg7-g5 Qg4-f4+ 15.Sf4-g2+ Rg2-g1 16.Pa7-a6

(失敗図2)
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 黒Sg4を解放することにより、a筋の黒Pをa6で止めておくことには成功したが、en passantの直前の白の手が14...Qg4-f4+しかなく、結局これも失敗に終わる。黒の手を稼ぐという方向は間違っていない筈だが…。
 ここで、黒に手待ちをさせるもう一つの方法が見えれば、作者の構想が見えて来る。それが以下の手順だ。

1.Rf3xQf4+ Sb3-c1 2.Pa3-a2 Sa5-b3 3.Pa4-a3 Sb7-a5 4.Pa5-a4 Sd8-b7 5.Ph7-h6 Sf7-d8 6.Kh6-h5 Sg5-f7+ 7-9.Kh5-h6 Bb8-d6-a3-b2 10-14.Kh6-h5 Pb3-b4-b5-b6-b7-b8=B 15-18.Kh5-h6 Bb8-d6-a3-b2-a1 19-24 Kh5-h6 Pa3xPb4-b5-b6-b7-b8=B 25.Kh5-h6

(途中図1)
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 まず白Sc1をg5に挟み込み、黒Kがh5-h6を往復できるようにする。そして、これを利用して、白Bを2枚ともunpromotionするのだ。そうすれば、b筋の黒Pをuncaptureでき、これが更なる黒の待ち手として利用できる。
 これで舞台は整った。後は最初に思い描いていた手順が成立していることを確認するだけだ。

25...Sf7-g5 26.Pa6-a5 Sh6-f7 27.Pa7-a6 Sg8-h6 28.Pb5-b4 Pg7-g8=S 29.Pb6-b5 Pg6-g7 30.Kh6-h5 Ph5xg6 e.p.+ 31.Pg7-g5 Sg5-h3+

(途中図2)
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 失敗図1との違いは、黒に1手の猶予があるかどうかだけ。だが、このわずかな違いが、右下の塊をほぐす為には決定的な意味を持つ。少し長いが、以下の手順も載せておこう。

32.Pb7-b6 Rh4-h2 33.Sh2-g4 Qg4-f4 34.Sf4-g2+ Qh3-g4 35.Sg4-h2 Bg2-h1
36.Sh2-g4 Pa2-a3 37.Sg4-h2 Qh1-h3 38.Sh2-g4 Bh3-g2 39.Sg4-h2 Pg2-g3
40.Rg3-f3 Qh2-h1 41.Pf3-f2 Bf2-e3 42.Re2-e4 Se3-f1 43.Sg6-f4 Ke4-f5...

(途中図3)
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 ここまで来れば、後の逆算は容易だろう。いかにもFrolkinらしい、重厚な作品であった。
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