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2015年11月05日22:18

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Advanced Course of Retrograde Analysis(最終回)

第50問 どちらの手番か?
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 なくなった駒は白がQRSPPの5枚で、黒はQRRBSの5枚。黒Pe2はa筋のものだったので、これだけで4枚駒取りをしている。ということは、残りの黒Pは駒取りできないので、白Ph7は少なくとも2枚駒取りをしている。また、よく見ると白の2枚のBは同色である。つまりどちらかは成駒であり、成った場所はf8かh8のいずれか。つまり、こちらも2枚の駒取りを必要とする。よって、ここ迄で判明した白側の駒取りも4枚となる。どちらもあと1枚の猶予があることを覚えておいてほしい。

 さて、ここで白Kの解放の仕方を考えてみよう。このような形にするには、Bf8-e7 Re7-d7+と戻すしかない。このことからg7に何か遮蔽駒が必要なことにすぐ気付くだろう。それは黒駒だろうか、それとも白駒だろうか?
 まず黒駒だと仮定しよう。その場合、それはSでなければならない。もしRだとするとこれは右上の空間から出られない。よって白Sで取るよりないが、すると今度はこの白Sがg5に戻れなくなってしまう(Sg7-f5とするとチェックがかかってしまう)この黒Sがf5から出た後で白Sに取られたとすると、一見矛盾はないように見える。だが、その場合は以下のような局面になっている筈だ。ここでPd7-d6と戻せば良さそうに見えるが…。

(図1)
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 ここでQ側の黒Bに着目しよう。白は黒Sg7を含めて5枚の駒取りをしているので、この黒Bを取ったのは白Pでなければならない。ところが、どう見ても白Pは黒Bの取りを戻すことができない。従って、g7の遮蔽駒は白駒ということになる。しかし、そうであったとしても、果たしてそのことが前述の矛盾を解消することに繋がるのだろうか?だが、その疑念は次のような想定によって解消される。即ち、遮蔽駒として使われた白Sはf5で黒Bに取られた。そして更にその黒Bが白Sによって取られたのだと思えばよい。これで双方の駒取りもちょうど5枚ずつになる。
 ところが、これでもまだダメなのだ。というのは、もしこの通りなら黒の駒取りはPで4枚、黒Bで1枚ということになる。しかし、もし黒Pをe3-e2と戻すと、黒Pによる駒取りは全て黒枡ということになり、白Bf1を取った駒がなくなってしまう。
 一方、Pd3xe2と戻すとすると、これは白Pを取った筈。すると白Bf1はそれまで不動ということになり、やはり矛盾。ということは、「実は不可能局面であって、どちらの手番でもない」というオチなのか??

 いや、そうではない。実は「e筋の白Pはe筋で取られた」という思い込みが間違っているのだ!このことと黒Bの処理の仕方とが結びついたとき、漸く作者の構想に辿り着くことができる。つまり、白Sを取った黒Bがd3で白Pe2に取られ、e2で取られたのは白Bだとすればよい。具体的には、以下の局面からSf5+ Bxf5 Sg5 Bd3 Pxd3 Pxd3 Be2 Pxe2 Pd3と進めればよい。

(図2)
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 後は当初の予定通り、Be4をc8へ格納し、Pd7-d6として白Kを解放すればよい。以上より、この局面は黒番であることが判明した。
 分かってみれば、Cerianiなどで散々出てきた駒取りの連鎖(sequence of capture)なのだが、論理構成に奥行きがあって結構難解作となっているのではなかろうか。

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このシリーズもこれにて終了。一応これもWordに張り付けたものを作成しておりますので、通読してみたい方はコメント欄にその旨書き込んで下さい。
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