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2015年11月04日16:04

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ああわが愛しのはらこ飯よ

はらこ飯。(はらこめし)

しゃけの炊き込みごはん、と言ってしまうと間違い。
まずしゃけは上ってきたばかりの秋じゃけ、しかも新鮮な生じゃけを使う。
身を薄切りにしてしょうゆみりんと酒で煮る。
どういう配合でどれだけ煮るか、他に何を入れるかは各家の秘伝がある。
煮えたらその煮汁でごはんをたく。
このごはんも、水加減をどれだけにするかが大事。
濃い煮汁で炊けばかたいごはんになってしまって
あとでしゃけの身とのまざりが悪くなる。
水が多くて薄くなれば当然「はらこ飯」のごはんとしては失格。
しゃけの風味を香りを生かし、味はほんのりして、しかもごはんが固すぎてはいけない。
で、しゃけの煮汁でたけたごはんに、先ほど煮たしゃけの薄切りと、
いくらのしょうゆ漬けを乗せる。
このいくらはもちろんとれたての秋しゃけから取り出したものを、
各家庭でしょうゆ漬けにするわけだが、つけておく時間やつけ汁の配合はこれまた秘伝。
はらこ飯を作る人の数だけの秘伝があるのだ。
大事なのははらこを乗せすぎないこと。
はらこがあまりに多いとはらこの味だけになってしまう。
しゃけの煮汁でたいたご飯の風味を殺さないだけのいくらが必要。
いくらごはんが食べたければ白い炊き立てごはんにたっぷり乗せればいいが、
それは「はらこ飯」ではない。
はらこを乗せた上にしゃけの切り身を崩さないように並べてできあがり。
何切れをどういうふうに乗せるかでセンスが問われる。
理想的なはらこ飯の姿は、
つやのあるうす茶色のごはんの上に、さながら草原に咲くすみれのように、
または貴婦人の化粧台に散らばる宝石のようにいくらが乗り、
その上に、横1列、または放射状、またはおちゃめなランダムにしゃけの切り身が乗る。
食べるときはごはんといくらとしゃけをいっきに口の中に入れる。
しゃけはやわらかく煮えているので箸で簡単にちぎれる。
口の中ではらこ飯が完成する。
しゃけごはんの香りと歯ごたえ、いくらのぷちぷちした贅沢な味、しゃけの優しい味わい。
この味を知らない人は本当に気の毒!!

宮城県亘理町がはらこ飯の本場である。
先日、どうしても食べたくて車で数時間走って亘理町を訪れた。
はらこ飯を食べさせる店はいくらでもあるが、
自分のお気に入りは町営の鳥の海荘という宿泊施設の食堂のはらこ飯だった。
津波ですっかりダメになったが、今年、宿泊研修施設だけは復活した。
その近くに町営の物産館があり、そこではらこ飯販売があると聞き、
ここにあのはらこ飯を作っていたおばちゃんたちがいるのではないか、とあたりをつけた。
到着したのは1時近くだったが、「はらこ飯弁当」はたったひとつ残っていた。
わたくしを待っていたように、ちょこんと売り場の真ん中にあったのだ。
急いでゲット、財布を車に忘れたのに気付いて走って戻る。
レジのお姉さんに「今お金持ってくるのでおいててください」と叫んで。
そして入手したはらこ飯、どれだけ言葉をつくしてもこのおいしさは表現できない。

はらこ飯は11月いっぱいまでしか食べられない。急げ美食家たちよ。
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