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2015年10月27日23:03

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L.Cerianiレトロプロブレム傑作選(37)

(36)Luigi Ceriani(La Genesi delle Posizioni 1961)
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局面をほぐせ(12+14)

 なくなった駒は、白がSPPPの4枚で、黒がQRの2枚。黒側の駒取りはb6,c6,d5,f5のPによるもので尽きている。従って、黒Pg4は直進しており、これより白Pg6が少なくとも一枚駒取りをしていることになる。(あと一枚は、現時点では不明)更に、a筋とe筋の白Pが成っていることも明らかだ。 
 (35)を参考にすると、白Qh4をa8でunpromotionさせることが目的になる筈だ。その為には白Kd8とする必要があるが、すると白Bh8/黒Kf8という形を取らないといけないことがすぐに分かる。(白Rg7+白Bh6でも黒Kf8とできそうに見えるが、実際にやってみると途中で黒が手詰まりになるので不可)ということは、白Sh8を動かさなくてはならないことになり、その手段はunpromotionしかない。これで白がg-h筋でcross captureしていることも判明し、白側の駒取りもすべて確定した。では、この線に沿ってQa8型を目指し、手を進めてみよう。

1.Ba7-b8+ Qg3-h4 2.Se7-g8 Qa3-g3 3.Rg8-f8 Bf8-g7 4.Rg7-g8 Q-- 5.Sg8-e7 Be7-f8 6.Sf8-h7 Bd8-e7

(図1)
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 まずは白Sの成を戻すのだが、単にh7が空いているだけではダメ。先に白Rh6を脱出させておく必要があり、その為に白Bはd8まで移動させられる。

7.Se7-g8 Rh7-h6 8.Rg8-g7 Rg7-h7 9.Sh7-f8 Q-- 10.Sf8-h7 h7-h8=S 11.Rh8-g8 Ph6-h7

(図2)
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白Pをh6まで引き戻し、d8まで送り込んだ白Bを今度はe7-f8-g7-h8とジグザグに動かして右端まで連れていく。その際に白Rg7/黒Rh8ではなく、白Rh8/黒Rg7としておくのも芸が細かいところ。(そうしないと、白のBf8-Rg8というバッテリーができてしまい、Bg7-f8がillegalとなる)

12.Rh7-h8 Rg8-g7 13.Rg7-h7 Rh8-g8 14.Sg8-e7 Be7-d8 14.Sh7-f8 Bf8-e7 15.Se7-g8 Q-- 16.Rg8-g7 Bg7-h8 17.Sf8-h7 Rh7-h8 18.Rh8-g8 Q-- 19.Rg8-h8 Bh8-g7 20.Rg7-g8 Q-- 21.Rg8-g7 Rg7-h7 22.Sh7-f8 Q-- 23. Kf8-e8 Kd8-c7 24.Bb8-a7 Qa8-a3

(図3)
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 これで当初の予定通り、白Qa8の局面を作ることに成功した。では、この後すぐに、25.Ph3-h2 a7-a8=Q 26.Ph4-h3 a6-a7 27.Pa7xSb6...と戻せばよいのかというと、そうは問屋が卸さない。つまり、このままだと白が27...Sa4-b6と戻した局面は、黒がretro-stalemateになってしまうのだ!(この辺の構造は、(35)と全く同じである)
 この局面を白番で迎える為にはtempoを失うことが必要であり、それが可能な駒は一つしかない。勿論それは黒Rだ。Rが同色の桝を移動できるよう、白Bは再度d8まで移動させられる。

25.Ba7-b8 Kc7-d8 26.Ke8-f8 Qb8-a8 27.Sf8-h7 Rh7-g7 28.Rg7-g8 Qa8-b8 29.Rg8-g7 Bg7-h8 30.Rh8-g8 Qb8-a8 31.Rg8-h8 Rh8-h7 32.Sh7-f8 Bf8-g7 33.Rg7-g8 Qa8-b8 34.Sg8-e7 Be7-f8 35.Sf8-h7 Bd8-e7 36.Se7-g8 Rh7-h8 37.Rg8-g7 Rg7-h7 38.Rh8-g8 Qb8-a8 39.Sh7-f8

(図4)
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 これでやっと舞台が整った。ここで黒Rがtempoを失った後、これを逆に辿れば、図3の局面を白番で迎えることができる。

39...Qa8-b8 40.Rh8-f8 Qb8-a8 41.Rg8-f8 Qa8-b8 42.Rh8-g8 Qb8-a8 43.Sf8-h7 Rh7-g7 44.Rg8-h8 Rh8-h7 45.Rg7-g8 Qa8-b8 46.Sg8-e7 Be7-d8 47.Sh7-f8 Bf8-e7 48.Se7-g8 Qb8-a8 49.Rg8-g7 Bg7-f8 50.Sf8-h7 Rh7-h8 51.Rh8-g8 Qa8-b8 52.Rg8-h8 Bh8-g7 53.Rg7-g8 Qb8-a8 54.Rg8-g7 Rg7-h7 55.Sh7-f8 Qa8-b8 56.Kf8-e8 Kd8-c7 57.Bb8-a7

(図5)
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 24.0手目の局面から数えると、実に32.5手もかけて手番を入れ替えたことになる。あとは、57...a7-a8=Q 58.Ph3-h2 a6-a7 59.Pa7xSb6 Sa4-b6 60.Ph4-h3 Pb6-b7 61.Bb7-c8...と戻せば、その後は容易に局面をほぐすことができる。
 恐らく作者は、前作の創作過程で白Bをd8まで送り込むことができることに気付いたのであろう。白Bの振幅が広がったことで、作品自体のスケールもまた一段と大きくなったという印象を受ける。


(37)Luigi Ceriani(FIDE-Turnier 1957, 3rd Prize)
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局面をほぐせ(15+12)
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