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2015年07月29日22:16

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プロパラを振り返る(136)

(セクションH)Retro

H83 T.Le Gleuher(Phenix 2001, 2nd Prize)
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Where was the wQ captured?
Monochrome Chess(9+7)

 問題設定は、白のQがどこで取られたかを問うもの。
 まず、この局面に至る最終手は、黒が0-0+を指した手であったはず。このキャスリングは、白Rf7の存在によって普通だとillegalだが、Monochrome Chessだとlegalである。
 さて、白は明らかに0-0を指している。Pe5はhPがxg3xf4xe5と3回駒取りを行ったもの。そこで取っているのは、Q,B(f8)とePである。そのhPの軌跡から、白のKを左上に抜こうと思うと、e1-g1-h2-g3-f4-e3-d4-c3-b4として、そのときにa7-a5+、Kb4xa5とするのが絶対(黒gPは後で見るようにg7-g5とダブルステップしているので、白Kを右上から抜くコースはない)。
 また、黒Sb1は明らかな成駒である。それはfPが成ったものであり、f7-f5xPe4xB(Q)d3xPc2xSb1=Sという軌跡をたどった。ここで駒取りが4回。さらにSg1は原位置で取られているし、残る黒マスの駒はBc1だけなので、黒のPc5及びPg5はいずれもダブルステップしている。
 さて、白が0-0をするためには、その前にSg1が原位置で取られていることが必要。それには、Ph2cBg3としてh筋を空ければ、Qh2xSg1と取ることができる。そこで問題になるのは、黒がQをf4に捨てる瞬間の局面である。

(図1 Qf4まで)
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 この図は仮のものだが、Qが取られてしまうと、黒はa7-a5を指すまでに、テンポを稼ぐ手が他のPを動かすしかないことに注意しよう。そして、黒がa7-a5を指す直前には、すでに白のKがb4まで来ていなければならない。
 図1から、次のような手順が想定される。
1.gxf4 f5 2.fxe5 fxe4 3.Kg3 exd3 4.Kf4 dxc2 5.Ke3 cxb1=S 6.Kd4 g5 7.Kc3 h5 8.Kb4 a5+ 9.Kxa5(図2)

(図2 Kxa5まで)
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 これでぴったり間に合ったわけだが、逆に言えば、これ以上の余裕はなく、KxPa5を指した時点での黒の配置は一意に決定している。
 それに対して、白の配置は多少の自由があるが、この後黒が動かせるのはRa8とc7-c5だけなので、このままでは白のBc1を取ることはできない。つまり、図1に至るまでに、すでにBc1は原位置で取られている必要がある。それを取れるのはQである。
 さらに、図2では白Qを残したが、もしB(f1)を残していれば、黒Bc8を原位置で取る駒がない。従って、図2の時点ではやはりQを残しておく必要がある。
 しかし、それではどうやってQで黒Bc8を取るのか?それだと黒のKにチェックがかかって、黒はKf7といったん逃げなくてはならず、キャスリングの権利を放棄せざるをえないのではないか?(黒はd8に埋める駒がない)困ったようだが、珍案がある。白のKをd8に挟むのだ!

(図3 Qxc8まで)
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 こうやってチェックにならないようにしてから、Bを取り、Qを抜けばいいのである。
 黒のSb8はKで取れるから、残った問題は、黒のSg8をどうやって取るか。もちろん、先ほどと同じで、Qで取るしかない。それでは、ここでもやはり白のKをシールドにして、チェックがかからないようにして取るのはどうだろうか?

(図4 Qxg8まで)
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 ところが、今度は図3とは少し事情が違う。このままの状態でQを抜こうと思っても、Rh8がいるので、それはselfcheckの禁手になってしまうのだ!もちろん、白はKを動かすと黒のKにチェックをかけてしまうことになり、まずい。つまり、図4からはにっちもさっちもいかなくなり、そこから脱出する手段は、Ra8で白のQg8を取るしかない。
 もちろん、白がKをf8に挟まずに、Qxg8+とチェックをかけ、その瞬間に黒がRxg8と取り返してもいい。
 いずれにせよ、以上の推論から、白のQはg8で取られた。
 なお、Qを取った黒のRは、白のgPによってg2-g4xPh5xRg6と、g6の地点で取られることになる。

 比較的に軽めの推論で解ける、楽しい問題。ポイントは、白のKをシールドに使う、Monochrome Chessならではの珍手だろうか。おそらく作者としては、d8とf8の両方でやりたかったのだろうが、ごらんになればわかるように、白は必ずしもKをf8に挟む必要はない。それが作品としては残念なところだろう。
 Monochrome Chessは、こうした奇妙な結果がいろいろと得られることで知られている(たとえば、普通のチェスだとキャスリングはすでにKとRが動いたと証明されないかぎり権利があるものとされるが、Monochrome Chessでは、KとRが一度も動いていないということが証明されるような局面もある)。これから先、まだまだMonochrome Chessには可能性が眠っていそうだ。

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