レトロプロブレムの世界（11-1）

1、先駆者たち

　John RICEとAnthony DICKINSによる"The Series helpmate"の中に書かれていることを思い出すと、「通常の」シリーズヘルプのルールは次のようになっている。
a) 白が1手で詰ますことができる局面に到達する為に黒が連続してn手指し、その間白はずっと駒を動かせない。
b) 黒は最終手で白Kにチェックをかけることができる
c) 黒は着手の途中で白Kにチェックをかけてはいけない
d) 黒の着手は厳密に限定されていなければならない。もしそうでないと、そのプロブレムは不完全である。

(1) J.Rice (B.C.M. 1971)

SH#5 (3+4)

　通常のシリーズヘルプにおいて、その合法性―例えば、出題図におけるキャスリングなど―を考えてみることにしよう。(1)では、この局面は黒番なのだから、白のKまたはRはそれ以前に動いている。（白Sがc3から来た筈がない。それだと、既に黒Kにチェックをかけてしまっていることになる）従って、try:1.b2? 4.Kc1 5.Rc2 0-0#はillegalである。詰上がりで黒の配置はこれと似たものだと推測できるが、それに至る黒の手順は、一種の「マルセイユ・スーパームーブ」である。作意順は、1.Ra2! 2.b2 5.Kxb1 Kd2#となる。

(2) J.G.Mauldon, C.C.L.Sells(The Problemist 1974, HM)

白のみ連続して8手戻し、白がretro-stalemateの局面を作れ(7+6)

　(2)(3)(4)そして(6)を私に教示してくれたCedric LYTTONによると、(2)は他の作品と違い、手を進めて到達すべき局面が過去にある最初の作品である。白は黒が最終手を指したに違いない局面に達する為に、8手合法な逆算をしなくてはならない。解は1.Sd7xPf6 2.Sb8xPd7 3.b7-b8=S 4.c6xPb7 5.b5xBc6 6.c4xBb5 7.d3xBc4 8.e2xBd3というもので、黒Bを成る為に、9.a2-a3?やg2xh3?という逆算はいずれもillegalになる。（訳者注　この局面における4枚の黒Bはいずれも成駒であり、成った場所はb1,f1,h1のいずれか。a2-a3と戻すとb1が、g2xh3と戻すとf1とh1が成り場所として使えなくなる）

＊8手前の局面