今日は、すっかり世界大会の恒例となったJapanese Sake Tourneyの入賞作を紹介したい。ちなみに、今回のお題はhalf-check。
・Half-check Chess
通常我々がチェックと呼ぶ着手を、ここではhalf-checkと呼び、(+)で表す。half-checkをかけた瞬間、その駒はKを取る能力を一時的に失い、それは1手後に復活する。従って、half-checkをかけられても必ずしも直ちにそれを受ける必要はないが、その後双方が0.5手ずつ着手するとそれは通常のチェックと同様の効力を持つ手になる。(これをfull-checkと呼び、+で表す)
尚、half-checkをかけられていても、キャスリングは合法とする。
言葉だけでは分かり難いので、作例を見て頂こう。
山田康平(example)
H#2 Half-check Chess(2+2)
1.0-0 f7(+) 2.Re8! xe8=Q#
現在白Kはhalf-checkの状態にあると考えてよい。白はf7-e8と同じ駒で連続してチェックをかけているので、2手目のQによるチェックはfull-checkである。
若島 正(example)
H#2 Half-check Chess(3+2)
2sols.
1.Qc5 Re6(++) 2.Kd5! Qe4#
1.Kd5+ Re5(++) 2.Ke4!! Qe3#
2解目の詰上がりには" double-check mate à la Loyd"との註がつけられているが、Loyd作にこのような詰上がりを使ったjoke problemでもあるのだろうか。昔近将に載っていた、北原さんが53龍、56金/55玉という詰上がりの都煙ができないかと真剣に悩んでいたという逸話を思い出した。(勿論、不可能局面であることが分からなかったなどという低レベルな話ではない)
ここからは入賞作。まずは1st Prize受賞作から。
(255)Diyan Kostadinov(Crete 2010 Sake Tourney , 1st Prize),version
H#2 b)Bb4→c5(7+8)
Half-check Chess
a)1.Qe3(+)+ Se5(+)+ 2.Qd4(+) Qc8#
b)1.Qe5(+)+ Se3(+)+ 2.Qe4(+) Bf1#
解説によると、最終的にKを詰めるのに必要なもの以外にも4度のcheck/half-checkがあり、これは最大値だというのが授賞理由。そういう定量的な評価をせずとも、この作のcheck/half-checkの応酬は十分面白い。
(256)Mark Erenburg(Crete 2010 Sake Tourney, 2nd Prize)
H#2 b)Kf6→a5(3+7)
Half-check Chess
a)1.Qd3(+) Qh6(+)+ 2.Qf5(+)+ Kxd6#
b)1.Qe4(+) Ra3(+)+ 2.Qb4(+) Kc6#
黒Qのself-pinが美しく表現されている。また、仕掛けが何もないa5にKを連れていくというツインの設定も意外性がある。ただ、黒の2手目のチェック数が揃っていないことだけが対照性を僅かに乱し、2nd Prizeという結果になった。
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