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2015年05月24日22:51

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レトロプロブレムの世界(番外編)

 これは、昨日のR7 A.Frolkin作への個人的な覚書である。はっきり言って、あの解説を読んだだけでは、この作品がどういう構造をしているのか全然分からないのではないだろうか(少なくとも私はそうだった)。そこで、自分の手で再度詳細な分析をしてみようと思う。

R7 A.Frolkin(Rex Multiplex 1983)
フォト
Ra6は最低何回動いたか?(16+16)
Circe Rex inclusive

 Circeのレトロというのはかなり考えにくい。そこで以下では全ての手を逆算手順ではなく通常の着手で考えていくことにする。

 局面をほぐすにはPa3xPb4と戻すしかなく、この黒Pは駒取りを繰り返すことで一列ずつ右にずれ、最終的にg7にまで到達している。この黒Pが取る駒は白Kしかなく、Circe Rex inclusiveというルールの特性から黒Pに取られたKはe1に再生するから、白Kは何度取られても良い。このことにより、詰将棋の超長手数作によく似た非常にスケールの大きな反復手順が成立しているのだ。

 まずは基本構造を確認しておこう。

(基本図)
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ここから、1.--- Ph5 2.Rh6 Ph4 3.Rxh4(Ph7) Ph6 4.--- Ph5 5.Rxh5(Ph7) Ph6 6.Rxh6(Ph7) Pg6 7.Rxg6(Pg7) Ph6...(これを*とする)
(R5/K2)

 この7.0手一組の*手順により、白は2手の猶予を得る。これはいくらでも反復可能なので、Rが5手動く度に白は2手分駒を動かすことができる訳だ。
 しかし、白Kがある程度黒Pに近付くと、このKを使うことでRを5手動かすうちに3手ないし4手の着手が可能になる。具体的には以下の2パターンがある。

(A) 黒Pがf筋にいるとき(d筋も同様)
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1.Kd6 Ph5 2.Rh6 Ph4 3.Rxh4(Ph7) Pf6 4.Ke6 Pf5 5.Kxf5(Pf7) 6.Ph6 Kg6 7.Ph5 Rxh5(Ph7) 8.Ph6 Rxh6(Ph7) 9.Pf7xKg6(Ke1) Rxg6(Pg7)
(R5/K4)

 この筋は、白Kが3手で黒Pの筋に入れるような位置に来た時に成立する。

(B) 黒Pがe筋にいるとき(c筋も同様)
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1.Kd6 Ph5 2.Rh6 Ph4 3.Rxh4(Ph7) Pe6 4.Kxe6(Pe7) Ph6 5.Kf6 Ph5 6.Rxh5(Ph7) Ph6 7.Rxh6(Ph7) 8.Pxf6(Ke1) Rxf6(Pf7)
(R5/K3)

 この筋は、白Kが2手で黒Pの筋に入れるような位置に来た時に成立する。

 更に、e1に飛ばされた白Kがa筋から外へ出る度に、左下ではRBSが計6回動かなくてはならない。(但し、最初だけは最初からSa2/Bb1/Rc2の形にしておけば3手で済む)

 これで分析はほぼ終了だ。少しヤヤコシイが、上の(A)(B)とそうでないものを分けて、それぞれR以外の着手が何手あるか数えてみよう。すると、このようになる筈だ。

Ke1→a4 6手+RBS 3手+(B)(cP→dP)
Ke1→a4 6手+RBS 6手+(A)(dP→eP)
Ke1→c6 8手+RBS 6手+(B)(eP→fP)
Ke1→c6 8手+RBS 6手+(A)(fP→gP)
Ke1→g8 12手+RBS 6手+RBS 7手

 ここ迄でKの着手が40手+RBSの着手が34手、計74手となる。ここは*手順に対応するので、Rの着手は全部で5×37=185手となる。また、(A)(B)ではそれぞれRが5手動くので、ここでも5×4=20手動いている。
 最後にKg8-h8のところは、Kh8 Ph5 Rh6 Ph4 Rxh4(Ph7) Ph6 Rxh6(Ph7) Pg6 Rxg6(Pg7) Ph6 Ra6となるので、やはりRは5手動いている。ここ迄で185+20+5=210手だ。

 しかし、まだ加えるべきRの着手がある。Pa3xPb4の直前の局面は次のようなものに違いない。
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ここから1.Pa3xPb4(Pb7) PxKc6(Ke1) 2.Rxc6(Pc7) Ph6...として、以下*手順に繋がるので、ここでもRは1手動いている。最後に、初形局面からRa1-a6の1手を加えると、計212手(!)もRが動いていることになる。
 以上で、出題図に至る迄の全てのRの着手を数え終えた。実戦初形からの総手数では「寿」超えという超大作であった。

 尚、初形配置からのRa1-a6は可能であることを最後に付記しておこう。まずPa2がa7まで進み、Ra1-a6とする。その後黒がPa7を取ってa2に戻し、Ba1を入れ、それからb4あたりにいる白Pを取ってもらえばよい。

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