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2015年05月20日22:47

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プロパラを振り返る(128)

 今日はレトロコーナーから、世界のHashimotoの作品を2題紹介します。

(249)橋本 哲(Problem Paradise no.52)
フォト
Proof Game in 18.5 moves(13+14)

1.a4 b5 2.xb5 Sc6 3.Ra6 Sd4 4.Rc6 dxc6 5.h3 Bg4 6.xg4 e6 7.Rh5 Ba3 8.Rc5 h5 9.b4 xg4 10.Bb2 Rh1 11.Qc1 Sf3+ 12.Kd1 Se1 13.Sh3 Rxf1 14.f3 Rf2 15.Sg5 Sd3 16.Se4 Se5 17.Ke1 Sd7 18.Qd1 Sb8 Bc1

 白KQBの複合switchback+黒Sのswitchback。作者自身による解説が載っているので、それを丸ごと引用しよう。

 どうやってRf2を入れるのか、という設問である。明らかにKe1、連動してQd1とBc1が動いている。その分だけで白の手数は一杯になってしまう。白KへのRf1の当たりをしのぐ手が別に必要だ。方法は一つしかない。黒のナイトをe1に連れてきてシールドにするのだ。これで全て解決する。
 白のスイッチバックの連動はよく見る筋。こうした動きに相手方も連動してスイッチバックかルントラウフをさせる手はないか、という抽象的なアイデアから出発して色々考えたのが10年前。そうして作った中の一つが気に入らずにいたのだが、作品集の話を機会に完全に作り直してみたものである。
 作者としての主張を一つ。この発想のポイントは白と黒の動きが一つの論理の中で成立していることにある。双方で別々にいくつかやりました、という単純な足し算とは別のものだと理解してほしい。


 本作の滑らかで美しい動きが何に由来するのか、それを作者自身が種明かししてくれている。この解説を読めば分かるように、西欧の「一つでも多い方がよい」という素朴な数量主義に対抗しうる確固とした美意識とそれを支える技術の確かさが、氏を世界のHashimotoたらしめているのだ。

(250)橋本 哲(Problem Paradise no.52)
フォト
Variables (0+16)
Add white King & Series=17

(solution)
add wKd7
1.Kxe7 2.Kxf8 3.Kxg8 4.Kxf7 5.Kxg6 6.Kxh7 7.Kxh6 8.Kxg7 9.Kxf6 10.Kxe5 11.Kxe6 12.Kxf5 13.Kxg5 14.Kxh5 15.Kxg4 16.Kg3 17.Kf2=

 こちらも作者による詳細な解説をどうぞ。

 自作。試行錯誤で大変そうに見えるかもしれないが、実は逆算で解けるように作ってある。その意図通り解いてくれた人が二人いて安心した。
 詰上がりはKf2/Kh1,Ph2の形しかない。上の14枚のブロックを全部取り、残り3手でf2まで近寄るのだ。
 まず、h2をPに特定するため(このPが成っている可能性まである)、収束3手は15.Kg4 16.Kg3 17.Kf2とするしかない。
 そこから逆算してf5/g5/h5のどこかに戻す。そこで取った駒は何かがポイント。強すぎる駒だとこの後の逆算で通過する位置に効いてしまっていけない。これが逆算する上で大きな制約になっている。結局Pを取ったことが分かる。
 14.KxPg5だったとしよう。そこから右方向に逆算してみると,g5/h5/h6の3か所までしか戻せないことが分かるはずだ。それ以上は取った駒が余計なところに効いてしまう。また、左に行こうとすると今度はg5/f5/e5/f6/e6/e7までしか行けない。以上から、14.KxPh5 13.KxPg5 12.KxPf5 11.KxPe5/e6とするしかないことが分かるはずだ。途中右に戻るのは先と同じ状況になってしまう。
 この辺である事実に気付いておく必要がある。黒の全体配置をよく見てみよう。Pa7,b7はPのままで残っているはずがない。成っていないといけないのだ。とすると使える生Pは6枚。ここまでで出てきたのはh2,h5,g5.f5,e5/e6の5枚で、この後の脱出口がf6でここもPしかないのだから、もうPは使えないことになる。
 さて、KxPf6からPを使わずに逆算するにはKxe6を済ませておいてg7でSを取ったことにするしかない。e5,e6の一方にしかPを使わずにこれらを処理する方法は一つ。11.KxPe6 10.KxRe5とするのだ。
 ここからはほとんど迷うところはない。9.KxPf6 8.KxSg7 7.KxBh6 6.KxRh7 5.KxRg6 4.KxSf7 3.KxBg8(このBを戻すチャンスはここだけ)2.KxR/Sf8 1.KxQe7と一気に進み、Kの位置を考える。d6/d7/d8/e8のいずれかのはずだがd7以外はf7,g7のナイトが利いていてillegal。従ってKはd7。逆算手順中、特定されていなかったf8の駒の正体がここで分かる。Sだとd7に効いてしまうからR。
 以上、局面は次のように特定される。


判明した図
フォト

 作品については上の解説で尽きているので、どうでもいい話を。数年前に詰工房に参加した時に、二次会だったか三次会だったかの席で、本作を作者から出題されたことがある。その時確か、最初は「今日来る途中に閃いたんだ」とか仰っていたのだが、小林さんが「ホントに?」と突っ込むと「いや、実は半年くらい前から手掛けていた素材なんだ」とあっさり白状されたことを妙に印象深く覚えている。何でそんなしょうもないウソをつくねん(笑)。ああいうヨッパライのオヤジがこういう緻密で論理的な作品を創っているという事実が、世界の背理を体現しているように私には思えてならない。
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