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2015年05月08日22:45

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レトロプロブレムの世界(6-1)

 1982年度の"A Posteriori" のジャッジを紹介しよう。彼のジャッジはRex Multiplexの9号で読むことができる。

ANDRE HAZEBROUCK
1918年6月3日に、SommeのVillers-Bretonneuxに生まれる。以前はS.N.C.F.でデザイナーをしていたが、現在は退職してArrasに住んでいる。プロブレミストとしては、レトロ解析の分野で、Europe-Echecs誌でG. LEON-MARTIN(のちL. LOEWENTON)が担当していた“Apprenez à analyser(Learn to analyze)”で、最も優れた解答者の一人として頭角を現す。1963年には、まずJ.OUDOTの補佐として、後に“L’Analyse Rétrograde(Retrograde Analysis)”となるこのコーナーの一部を執筆するようになる。彼の定期的で効果的な貢献は20年も続き、このハイレベルな年代記は「世界一とまではいかなくとも、少なくとも最高級のものの一つ」(C.C. LYTTON)である。

(1) A. Hazebrouck (Europe Echecs 1966, 2-3 Prize)
フォト
H#1とできるのはどちらか?(14+11)

 作家としては、古典的なレトロ解析の主要なテーマ(en passant, castling, retro-oppositionなど)が今迄にないような使われ方をする作品を好んでいる。(1)は4つの構成要素を持つ非常に稀なPRAである。どちらも、相互排他的な4つの解がどこに存在しているか確定せずとも、キャスリングすることは可能である。白からは1.0-0 Qxg2#又は1.0-0-0 Ra1#とできるし、黒からなら1.0-0 Qxg7#或いは1.0-0-0 Qxc7#とすればよい。では分析をしてみよう。
 白Bc1と黒Bf8はいずれも原型位置で取られている。e筋の白Pは、(A)2枚駒取りをしてからc6で取られたか、(B)d7又はf7を経由して成ったかのいずれかである。(A)だとすると、a筋及びh筋の黒Pはいずれも駒取りなしで成っている。従って、白の2枚のRはどちらも既に動いていて、これより白のキャスリングはillegalである。a1での成はSでもBでもない。従って、黒Qd8が動く前に黒Kは動いていないと仮定すると、e筋の白Pは黒Sと原型位置の黒Rを取ってからc6で取られたのだ。(或いは、同じことだが、白はe筋のPで黒Sか黒Rのどちらか一方を取ってからh2xg3とし、その後h1で成った黒駒をまた白Pで取ったのだ)この場合、黒のキャスリングのうち一方のみがlegalである。
 (B)だとすると、黒Kは既に動いており、黒のキャスリングはillegalである。白Pによる駒取りが3回あったことは明らか。そしてa筋またはh筋の黒Pの一方は直進途中で取られているが、もう一方はa1又はh1で成っていなければならない。従って、白のキャスリングのうち一方のみがlegalである。

(2) A. Hazebrouck (Themes 64 1977, 1-3 Prize)
フォト
H#2 2sols. A.P. (14+10)

 彼はいつも理論的な興味を抱いているという訳ではないが、常に解答者としての興味を保っていて、R15.のような魅力的なプロブレムを提示してくれる。(2)はA Posterioriを用いた独創的作品である。もし黒のキャスリングが可能ならば、白の最終手は何だったのだろうか?Kf1-e1 Sc2-a1と戻すと、白の0-0が不可能となってしまう。もし3つのキャスリングが全て可能ならば、直前の白の手はc2-c4しかない!更にその前の黒の手はc3xb2である。(白Bh3は白Ph2が5枚駒取りをしてc8で成ったものであることを付記しておこう)以上を正当化する為に、手順は以下のようになる。1)1.0-0 Be6+ 2.Kh8 Sg6# 2)1.bxc3 e.p. 0-0 2.0-0-0 Rc4#

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