自分がみた患者さんが亡くなった、と聞いた。
教えてくれた人もうちの患者さん。
おととしの夏、1回しかみてないけど。
さきおととしの9月、63歳だったその人。不正出血があった。
しばらく続いたので、近所の産婦人科へ行った。
がん検診異常なし。
しばらく様子をみたがやはり出血が止まらない。
あけて3月、同じ病院へ行った。
今度は超音波検査、異常なし。
少量の出血が続くので、その年(おととし)の7月にウチにきた。
子宮頚部体部のがん検診をしようとして、まず超音波をみた。
目を疑った。
子宮は大きく腫れ上がって内部に液体(血液)が充満、
卵巣も大きくふくれあがってぼこぼこ、周囲に腹水がたまっていた。
どう見てもかなり進んだ「がん」だった。
検査は中止、すぐにもとつとめ先に紹介状を書いた。
紹介状をファクシミリで送り、なるべく早くみてほしいと書き添えた。
その患者さんが、去年(紹介してから1年後)に亡くなった。
教えてくれた患者さんはおともだちで、お見舞いに行ったとき
「あそこの先生に、なんでもっと早く来なかった、って怒られた」と言ったそうだ。
おともだちがそう言ったのを覚えていたので、
不正出血があったとき、すぐにウチにきた、と言っていた。
がん細胞は出ていなかったが、
「繰り返して検査しているうちに細胞が出てくることもある」から
症状が続くならまた受診してほしい、と言った。
患者さんをときどき叱ってしまうのは、自分の無力感の裏返しだが、
役に立つこともあるんだな、と思った。
ログインしてコメントを確認・投稿する