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2015年03月23日02:24

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「STORY(SXSW-MIX)」に見る<Perfume量子論>

アートは説明するものではない。
しかし作品に対して詮索し、語りたくなるのがアートの楽しみ方でもある。
「アートとは何なのか」という定義に関して、自分の中で明確な答えがあるのだが、その説明はまた別の機会にするとして、今回はつぶやきでも一度言及したが、改めて先週発表されたPerfumeによるライブパフォーマンス<strong>「STORY」</strong>について整理・検証してみる。

アメリカテキサス州で開催された<a HREF="http://sxsw.com/" target="_blank">SXSW</a>(サウスバイサウスウェスト)は、音楽のみならず、映像、インタラクティブを統合したフェスである。
我等がPerfumeは、18日にライブステージを行い、その際にOPの1曲限定でネット配信の形態で<strong>生中継</strong>されたわけだが、それは只のライブ中継ではなかった。
これはヤバい。ヤバ過ぎて意味不明。


初見時、眼前で展開されている事象の状況が一瞬全く分からなくなり、軽くパニックを起こした。
かつてSF作家、故アーサー・C・クラークが提唱した
<strong>「高度に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。」</strong>
という名言がまさにここで展開。

合計6枚の透過スクリーンを使用したプロジェクションマッピングは、別々の各映像がスクリーンごとに自動追尾され、メンバーがスクリーンの衝立を移動させても全くズレない。
もちろんこれらマッピング映像単体でも相当のクオリティなわけだが、ここまでならギリギリ想定内の技術。
今回の「STORY」のキモは
<strong>“生では有り得ないカメラワーク”</strong>と
<strong>“生では有り得ないCG空間合成”</strong>の2点であろう。

パフォーマンス開始直後からライブ会場を後方から俯瞰したカメラが、コンピュータ制御されたような正確な移動を行い、しかも酔ってしまうのではないかという猛スピード。そもそもあれだけの激しい速度でカメラ移動なんて、スカイカムシステムやドローンでも難しいだろうし、カメラ停止時に制動によるブレが全く発生しないのは物理的におかしい。
結論から述べれば、恐らくこれらのカメラは移動していない。固定。
移動中の中間映像は、各カメラをフェードでつなげつつ、中割り部分をリアルタイムでモーフォングさせているか、あらかじめ用意した、スクリーン映像仕込み済みの会場内CG(バーチャルセット)を合成しているのだろうと予想。

もうひとつのビックリ演出“生では有り得ないCG空間合成”
ステージからカメラが引いていくと、ライブ会場がそのままシームレスに3DCGによる仮想空間に飛び込んで回り込み、再びライブ会場に戻ってくる。

フォト

“生中継なのに”現実と電脳の境界線が全然分からない。
目の前でライブ観ている最中に、否がおうにもサイバー空間に飛ばされてしまう無理矢理感。
これがライブ終了後に編集された映像クリップならば「CGを後から合成したんですね。」で済む話だが、リアルタイムでやってのけるから視聴者の多くが先入観の裏をかかれ撹乱させられる。
このリアルタイム故の驚きこそが、映像制作集団Rhizomatiks・眞鍋大渡さんの狙いだったのだろうと思う。
こちらのカラクリも、前述のカメラワークと基本的に同じ原理である。
飛ばされた3DCG空間はあらかじめレンダリングされたCGで、その時ステージ上で踊っているPerfumeは実写ではなくて、モーションキャプチャされた本人達のCGモデルと考えられる。
何が凄いって、CG上で再現されたダンスと、ライブでのPerfume当人達のダンスの見分けが付かないこと。この人達の身体制御能力、どんだけ精度高いの?!って話。

この演出で自分が面白いと思ったのは、その概念が量子論的であること。
量子論というと「シュレーディンガーの猫」の話が有名だが、雑な説明をするなら、粒子レベルでの物質の状態は観測者の状況や測定行為そのものによってその対象自体が影響を受けて測定結果が変わってしまうため、観測前の状態は確率でしか表現できない。つまり、常に複数の状態が同時並行して偏在し、観測者の状態によって初めて事実が規定される。というもの。
今回のストリーミング中継では、同時刻に進行する同一会場のライブでありながら、ライブ会場とネット視聴という“観測者”の状態によって、全く異なる世界が並行して存在している。
もちろんこれは自分の勝手なコジツケなのだが、このような「エヴェレットの多世界解釈」という概念が可視化されているんじゃないかという深読みが、より一層自分に大きな興奮をもたらした事は確かである。

今回のパフォーマンスは、単なるアイドルのライブ中継を大きく逸脱した、壮大なアート実験である。
そこに不満を感じるファンは皆無ではないが、少なくとも云える事は、Perufmeはデビュー当初から自らが操り人形であることに自覚的だった。
例)「Perfumeの掟(2007)」 https://www.youtube.com/watch?v=wr-Ddl3S10o

キュートで無邪気で明るく楽しい表のペルソナと同居するように、
感情を封印して観客の想像力を喚起させる“アート表現の媒介者”としてのペルソナを併せ持ち
正確無比な生体自己制御により、クリエイターやコレオグラファーのプランを的確に実現するダンシングマシーン。
このアートスキルこそが、Perfumeが他のアイドルグループと一線を画するアドバンテージであると云える。

ちなみに、今回のステージだが、
現地入りしてから会場であるライブハウスで<strong>リハーサルが出来たのはたった1回だけ</strong>だったそうだ。
勿論事前に日本で入念なリハを繰り返してきたのだろうが、こんな複雑なパフォーマンスをゲネ1回で決めるプロフェッショナルチームに対して「Perfumeである必要があるのか?」などという疑問の投げかけに何の意味があるのか?と思う。

Perfumeとは、日本の科学力が生み出したテクノロジー装置であり、概念である。
それがPerfumeらしいかどうかを決めるのは、チームPerfumeであり、
最終出力された姿がPerfumeの答えなのである。
Perfumeは常に、変異し、偏在し続ける。

ちなみに1ヶ月限定公開であるYoutubeの当該ムービーは公開5日で約70万HITに達している。
昨今のPerfume動画の中では異例の勢い。

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■以下、歌詞に登場する数列の正体(ネタバレなので反転表示:携帯での閲覧注意)

「43546414 4413754 16549154」

この数字はズバリ音階。曲中で使用されている低い音から順番に番号が割り振られている。
ファの音(F)が半音上がってF#が使われているから、キーはGメジャー(ト長調?)。
と思ったら調性はEm(ホ短調)らしい。
それを元にナンバリングしていくと以下のようになる。

B(シ):1
C(ド):2
D(レ):3
E(ミ):4
F#(ファ#):5
G(ソ):6
A(ラ):7
B(シ):8
D(レ):9

上記の音階を当てはめると、
→EDF#EGEBE EEBDAF#E BGF#EDBF#E

なんのことはない、曲中に登場するメロディになる。

※未使用である上のCを番号から除外しないと上のDが10になってしまう謎。もしかしてDじゃなくてC#かも。
※16549154の16と91は同時に和音で成立?

つーか、この長文日記ここまで読んでる人いるのか・・・?

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