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2015年02月28日22:32

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レトロプロブレムの世界(1-2)

(1) M. Klasinc (Schach-Echo 1974)
フォト
H#6* A.P. (15+9)

 まず、まさしくオリジナルといえる(1)から。1...Sxb3#は明らかだが、現在は黒の手番であり、そして黒が指せる手はないように見える。戻し方にしても同様で、直前の手がh3xSg2だったするとh筋のPが背中合わせになってしまい、Pc3-c2だったとすると今度は白Pがd2xc3,c3xd4と進む手を消してしまう。従って、いずれにしても黒は手詰まりになっている。これを解消するために、白は黒の駒を戻す(例えばBxh5などで)必要があるが、これはe筋の黒Pがe1で成っていることを意味する。しかし、これでも依然として黒の手詰まりは解消していない。
 これに対し、もし白Kが動いていないと仮定するなら、e筋の黒Pはその列で取られており、成ることは不可能。ということは、白はh2-h4と戻すしかない!そこで更にh3xSg2と戻すのが、黒の手詰まりを避ける唯一の方法だ。
 A Posterioriというルールによると、手順中においてキャスリングすることで、それ以前にKが動いていないことを「証明」することができる。正解手順はこうだ:1.g4xh3 e.p.! Bd1!! ( 1...Sxb3??ではないのか?しかし、白は詰める前にキャスリングする必要がある!)2.h2 Bxc2! 3.Kxc2 Qf1! 4.Kc3 Qxd3+!! 5.Bxd3 0-0-0! 6.Bxc4 Se4#.

 プロブレムの文脈において非常に優れており、かつユニークな作品である。こういった作品がFIDEのアルバムに収められるべきではないのか?しかし現実にはレトロは一段低い地位に置かれているだけでなく、フェアリーの専門家に作品の選別が委託されている。彼らもベストを尽くしているとは思うが、それにしても…。(ユーゴのアルバムでは編者は「ウエット」ではなく、1st Prizeを取った作品しか選ばないようなジャッジは信用していない)

(2) B.Koludrovic (Europe Echecs 1975, 1st HM)
フォト
H#3* A.P. (13+12)

(2)もまた、A Posterioriというルールを独創的に使用している。白のRとKが動いていないと仮定すると、白は手詰まり状態であり、トライにおいて黒の直前の手は黒Kを動かす手か(例えばKf7-e8 Sa7-b5と戻す)、またはd7-d5しかない。(訳者注 白の駒取りはすべてPによるものなので、Sxb5という着手は不可能。しかし、白のRとKが不動ならば、白の直前の着手は例えばSa7-b5のようなものしかなく、一手前にはe8にBa4の利きがある)従って、もし後の手順で双方がキャスリングによってKが動いていないことを正当化すれば、白はアンパサンで黒Pd5を取ることができる。すなわち、トライは1...cxd6 e.p.! 2.0-0-0! 0-0-0! 3.Kd7 Sa7#というものである。
 本作品の独創性は、2つのキャスリングの目的の純粋さにある(もし作意を成立させるだけならば、2.Rd8 Rd1で十分である)。本手順は1.Qe7 c6 2.Rh8 c7 3.Rf8 Sd6#というもので、こちらはレトロ解析を必要としない。
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