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2015年02月27日22:37

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レトロプロブレムの世界(1-1)

レトロプロブレムの世界(1)
written by M. Caillaud


ユーゴスラヴィアのアルバム(1974-76)を読んで:もしFIDEのアルバムが特定の期間に発表された優れた作品の為にあるのなら、それはどうあるべきなのか。

 レトロについて語る前に、このアルバムの一般的な形式を提示するのは興味深いことのように思われる。それは#2, #3, #n, studies, h#2, h#n, s#, Retroを意味するr#、そしてそれ以外の9つのセクションに分かれている。いずれのセクションも、3名のジャッジが自作以外の作品を持ち込み、アルバムに入れる価値があるかどうかを判断する。採用数に制限はなく、唯一の基準は作品の量ではなく質である。このシステムは有能かつ厳格な判断に基づくものなので、選ばれる作品の数が増えすぎることはない。それに加え、別の4人のジャッジが3人のジャッジの作品選択に限定的な介入をする。これはジャッジが自作を選ぶことができる(その場合、公正さがあるかどうかは実に疑わしい!)FIDEのアルバムにはないシステムである。提出されたすべての作品に3人のジャッジが目を通す。最終的に採用されるために、その作品は2回引用されることになる。最後に、その道のスペシャリストによって(レトロの場合はJ.FURMANである)テーマの説明を含めた解答が書かれる。FIDEのアルバムを知る者にとって、すべてが夢のようだ…。
 ユーゴスラヴィアでは、レトロは良く作られている。アルバムに収められたのは全部で22作。(#nが10作、studyが4作というのと比較してみよ!)そのうちの3作はFIDEのアルバムにも入っている。残り19作の中から、数作紹介してみよう。

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 訳者注 明日から引用される作品のルールである“A Posteriori”について、殆どの読者は馴染みがないと思われる。そこで、予めここで簡単な説明をしておくことにする。

 例えば「KとRが初形から動いていないならば、直前の手がdouble stepしかない」という局面になっていたとしよう。通常ならこの前提はあくまで仮定であるから、en passant captureすることは認められない。ところがこのルールでは、この状況下でen passant captureすることを認めてしまう。ただし、手順中にcastlingすることで、その前提が真であることを「証明」する必要がある。(たとえcastlingを必要としない簡単な詰手順があったとしても、それは無効である)
 言葉だけでは分かり難いと思うので、実際の作例を見て頂こう。

N. Petrovic(Europe Echecs 1966-68, 4th Prize)
フォト
#2(13+14) A.P.

 この局面に至った手順を分析してみよう。黒の駒取りはa筋とb筋でのPc2によるもの、それにBf1。白の駒取りはe筋とg筋でのPによるもので、これで双方の駒取りは尽きている。黒の最終手は色々と考えられるが、どのような戻し方をしても、更にその前の着手では白のK又はRh1が動いていることになりそうだ。例えばSb5-a3と戻すと白もa3-a4と出来るが、b2-b3とはできないので(その前にBをc1に戻す必要がある)白Kが不動だと黒Kの侵入経路が存在しない。
 しかしここに一つだけ抜け道がある。直前の黒の手がf7-f5であり、更にその前の白の手がf6xe7だったとすれば、白K及びRh1が不動だったとしても矛盾は生じない。(何故そう言えるのか、考えてみて下さい)そこで作意はこうだ:1.Pg5xf6 e.p.! --- 2.0-0#
 つまり白は、KとRh1が初形から動いていなかったことをcastlingによって「証明」した訳。(従って2.Kf2??ではダメである)
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