昨日「急告!」でアナウンスした通り、日曜に発表した新作は当初の図では不詰でした。悩まれた方には深くお詫び申し上げます。twitterにもほぼ同時に発表し、そちらでは作意解を貰えたのでつい安心してしまったのがいけませんでした。やはり投稿間際の悪魔の囁きには乗ってはいけないと猛省しております。
では、気を取り直して自作解説を。
かしこ詰 9手(透明駒 0+1)
初手は18馬しかない。これを取れる透明駒はない(29にいたとすると既に先手玉に王手がかかっていたことになるが、これは「全ての着手は(それが不可能でない限り)合法とみなされる」という原則に反する)ので、これは同玉の一手。
(3手目の局面)
攻方はこの初手で「18にあった透明駒を取った」と主張したいのだが、かといって3手目すぐにXとすると29銀生!とされて逃れ。そこで3手目は27銀とする。これを玉方が同Xと取るのは28馬迄!(X=27桂生が証明される)。よって玉が逃げるしかない。19玉なら、今度は攻方がXとすれば、透明駒が飛または金ということになり、いずれにしても詰。従って玉は17に躱すしかない。
(5手目の局面)
ここで攻方はX!と指す。この透明駒が何であるかは、次の玉方の応手によって決まる。16歩なら同X(X=飛)、18歩でも同X(X=香、飛)とすればよい。玉方は19銀生として、19に香または飛の透明駒があったのだと主張する他ない。
(7手目の局面)
もう透明駒は盤上に存在しないので、まるっきり普通の詰将棋だ。後は用済みになった27銀を捨てて27馬まで。「透明駒がどちらの手にあるか」を巡る攻防は、一寸面白いのではないだろうか。
作意:18馬、同玉、27銀、17玉、X、19銀生、18銀、同玉、27馬迄9手詰。
(詰上がり)
「なんだ、これだけか」と思われたかもしれないが、そうではない。実はここからが本題である。もう一度5手目の局面を見て頂きたい。もしここで5手目Xに対し29銀生!?として「透明駒は桂だった」と玉方に主張されたらどうすればいいのだろうか?
(逃れ図?)
しかし、初手で取った透明駒が桂ではあり得ないことが、以下のように証明できる。(ここからは簡単なレトロ解析である)
(18成桂のある図)
18に成桂があったとして矛盾を導こう。出題図で攻方の手番ということは、この直前は玉方の着手だった筈である。すぐに分かる通り、その手は28銀しかない。すると先手は37馬を戻すしかない。
(2手戻した図)
ここでもはや玉方の着手は(illegalなものを除いて)存在しない。即ち、出題図において、透明駒が18成桂だとすると不可能局面である。(勿論、桂以外の駒なら18に打つことができるので逆算可能だ)よって6手目29銀生もまたあり得ないという結論が得られる。
作者の狙いは勿論、後半のレトロ解析にある。必ず手順中に証明を伴う透明駒とレトロ解析は比較的相性が良いのではないかと感じたのだが、読者のみなさんはどう思われただろうか。
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