mixiユーザー(id:10857363)

2015年02月24日23:15

238 view

L.Cerianiレトロプロブレム傑作選(4)

(3) Luigi Ceriani(Europe Echecs 8 04/1959)
フォト
局面をほぐせ (12+14)

 まずは駒取りから調べてみることにしよう。白Bのうち一枚が成駒であることを考慮すると、白のなくなった駒はQBSPの4枚で、黒のなくなった駒はBSの2枚。黒の駒取りはすべてPによるもので、黒Pd4が直進していることを考えると白もまたPで2枚駒取りをしている。つまり、すべての駒取りはPによるものである。また、白の成Bはf筋の白Pが直進して生じたものなので、g筋の黒Pはこの白Bを戻さない限りuncaputureできない。
 さて、ここでa筋に着目してみることにしよう。a筋の白Pが直進途中で取られることはないから、このPは必ず成っている。しかもこの白Pが成った時には既に左上の形は決定しているので、この成駒を取った黒Pはいないことになる。従って、白Sa8がこの白Pであることは明らかである。しかし、性急に1.Kg8-f7+ Sb8-a6 2.Pa7-a8=S Pg3-g2 3.Pa6-a7と戻すと、この瞬間黒がretro-stalemateに陥る。これを回避する方法を見つけなければならない。

(失敗図)
フォト

 一寸考えてみれば、これが手番変更の問題であるということはすぐに理解できる。つまり、上の図で白の手番でなければならないのだ。或いは「白は黒にPg3-g2と指させることなく、成を戻さなくてはならない」と言い換えても良い。というのは、3.Pa6-a7と白が戻した瞬間に黒が3...Pg3-g2と戻すことができれば、局面をほぐすことができるからだ。その方法が実はtempoと関係している。即ち、白がどこかでtempoを失うことができれば、黒もそれに応じてSの位置を変えることができ、そのことによって前述の筋が成立することになるのだ。
 勿論、白Sが単独でtempoを失うのは不可能だ。しかし盤上を見渡すと、代わりにtempo moveが可能な駒が一つだけある。それは白Kだ!つまり、作者の描いたシナリオはこうだ。
(1)白Sにf8まで来て貰って白Kを交代で開放し、
(2)この白Kを自陣まで連れて行ってtempoを失わせ、
(3)それから再びKをg8に戻し、Sもa8に戻す

 こうすれば、黒Sの位置がずれているのでPa7-a8=S Sb8-a6 Pa6-a7 Pg3-g2 Pa5-a6...と戻すことができる。従って、作意は以下のようになる。
(黒の手はSがa6とb8を往復するだけなので省略する)

Retract: 1.Kg8-f7+

(0.5手目の局面)
フォト
*黒が戻す番

1...Sb8-a6
2-8.Sf8-g6-f4-d3-b2-a4-b6-a8! 9.Kf7-g8 Sb8-a6
10-18.Ke1-d2!-d1!-e1-f2-g3-h4-h5-g6-f7
19-25.Kg8-f7-g6-h5-h4-g3-f2-e1
26-32.Sa8-b6-a4-b2-d3-f4-g6-f8 Sb8-a6 32.Sa8-b6 Sa6-b8

(32.0手目の局面)
フォト
*白が戻す番

この局面を0.5手目の局面と比較して頂きたい。完全な同一局面だが、確かに白がtempoを失い、その効果で手番が入れ替わっていることがお分かり頂けるだろう。もうここから先は、最初に予定した通りである。

33.a7-a8=S Sb8-a6 34.a6-a7 g3-g2! 35.a5-a6 Sa6-b8 36.a4-a5 a5xb4...

この後、残りの配置を解放するのは容易だろう。

 構想の発見即解決という、明快で解後感の良い作である。31.5手(将棋流に数えると実に63手)もかけて同一局面を復元するという問題、如何だっただろうか?尚、彼はこの「奇数手で同一局面を復元する」というテーマをより純粋に表現する為に、Ortho-reconstructionというルールで作品をいくつも作っている。

 さて今回の作品は、見ての通りキャスリングがテーマ。果たして黒のキャスリングは可能なのか、それとも不可能なのか。それを導く明快なロジックを見つけて下さい。

(4) Luigi Ceriani(Europe Echecs 18 02/1960)
フォト
H#1.5(14+11)
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する