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2015年02月01日16:10

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リトラクター入門(1-2)

(2) J. Sunyer (Fairy Chess Review 1930)
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双方3手ずつ戻し、1手詰にせよ (14+12)

(2)には1.Rd5#という詰があるが、手を戻した後で黒Kを詰めるのはこの駒ではない。1.Kd6-c5 d5xe6 e.p.+と戻すと、その直前の2.e7-e5が白のBf4により不可能なので失敗。従って、伏線的な逆算が必要となる。
1.Kc6xRc5! Rb5-c5+ 2.Kd6xSc6! d5xe6 e.p.+ 3.e7-e5 Se5-c6+としてから1.Sc4#として詰めればよい。

(3) H.A. Adamson (Fairy Chess Review 1937)
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黒が1手戻し、それからH#1にせよ (14+12)

(3)はhelped Retractorに分類されるべきではないかと思われるかもしれない。しかしながら、1.Kd7-c8と戻した後で 1.Ke8 Qxe7#という解自体には何の面白みもなく、更にいうと1.Rc8 Qxe7#というキズ(余詰?)さえある。本作の面白さは、1.0-0-0という戻し方が可能かどうか、その分析にあるのだ。

 この場合、直前の手はh2xg3ではない。もしそうなら白Rh1はe6で取られる筈がないので、a筋の白Pは2枚駒取りをしてc8で成ったことになる。(訳者注 これで白の駒取りは尽きているが、この中にはh筋の黒Pも含まれている。しかしこのPは成れないので、矛盾)右側の塊をほぐすには、白のSh3をc8でunpromotionし、更にg1またはh1で成った黒Pをunpromotionしなくてはならない。つまり、黒がh3-h2と戻す前に白Pがh2xg3と戻すことはできない。

では、実際にこのような戻し方をしてみよう:1.0-0-0 Sg1-h3 2.Rf3-f2 c2-c3 (白Sと黒RによるRetro-Oppositionを避けるために必要なthematic tempo) 3.Rf2-f3 Sf3-g1 4.a7-a6 Sd2-f3 5.Rf3-f2 Sc4-d2 6.Rf2-f3 Sb6-c4 7.Rf3-f2 Sc8-b6 8.Rf2-f3 c7-c8=S 9.Rf3-f2 b6xSc7 10.Sb5-c7 a4xb5 11.Sd4-b5 a4-a5 12.Rf2-f3 a3-a4 13.Sf3-d4 a2-a3 14.Sg1-f3 ?? 15.h2xRg1=S Rh1-g1.
結論として、1.0-0-0という戻し方はillegalであるということになる。
(訳者注 もし1.Kd7-d8と戻してから同様の逆算を試みたとすると、Rf2の往復ではなく黒Kまたは黒Rによる手待ちが可能になるので、上記手順中の2…c2-c3という一手が必要なくなる。それにより14…c2-c3とできるので、legalな局面となる)

 本作は、Ra8とKe8を配して「黒はキャスリング可能か?」と尋ねた方が適切だったかもしれない。しかしこれは作者のミスなのだろうか、それとも「〜手で詰めよ」という条件でないと素通りしてしまう解答者と「商品を売りたい」作者との思惑が低いレベルで合致してしまった結果なのだろうか?
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