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2015年01月31日22:58

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リトラクター入門(1-1)

リトラクター入門(1)
written by M. Caillaud


 この論考は「n手戻してから、白がm手で詰める」というような設定のレトロプロブレムについてのものである。黒Kを詰めることは白の主要な目標であるが、黒Kを詰めること以外にも、逆に白Kを詰めること、あるいはキャスリングなど、より奇妙なものもそれになり得ることを、後に目にすることになるだろう。
 リトラクターは、以下の3種類に大別することができる。

(A) 過去の手順が厳密な解析によって決定でき、従って手順を遡る上で戦略を必要としないタイプ (analytical Retractors)
(B) 目的を達成しようとする白に対し黒が協力するタイプ (helped Retractors)
(C) 目的を達成しようとする白に対し黒が妨害するタイプ (defensive-type Retractors)

(A)分析的リトラクター

 作品(1)と(2)においては、条件を満足するために局面を分析することが必要であり、またそれで十分である。

(1) H.A. Adamson (Fairy Chess Review 1949)
フォト
白が1手戻し、それから1手詰にせよ (15+9)

 最終手は明らかである。つまり、1.Qd1#とすればよい。本質的なことは、どのようにして下段の駒の塊が生じたかを調査し、最終手を演繹的に導き出すことだ。

 a筋からe筋までの黒Pは駒取りなしで直進しており、a4,b4,b5,c4,そしてd3の白Pは5枚駒取りをしている。白に取られた残り2枚の黒駒はg筋とh筋の黒Pであり、これらは黒に待ち手を与えるためにuncaptureする必要がある。
 実際に逆算するのは、更に難しい。T.R.Dawsonは「Fairy Chess Reviewの解答者の中でL.Cerianiだけが解に辿り着き、それを完璧に解いた」と書いている。

1.Be5-h8 2.e4-e3 Bg3-e5 3.e5-e4 Bf4xPg3! 4.e6-e5 Qb1-c1 5.e7-e6 Rc1-f1 6.h4xSg3! Sf1xPg3! 7.Ke1-e2 Bd1-c2 8.g4-g3 Rc2-c1 9.g5-g4 Sc1-a2 10.g6-g5 Bf3-d1 11.Kd1-e1 Ba8-f3 12.Ke1-d1 Qa2-b1 13.Kd1-e1 Se2-c1 14.Ke1-d1 Sd4-e2 15.Kd1-e1 Sf3-d4 16.Ke2-d1 Se1-f3 17.Kd1-e2 B--- 18.Ke2-d1 Se3-f1 19.Kd1-e2 Sd5-e3 20.Ke2-d1 Sf3-e1 21.h5-h4 Rc1-c2 22.h6-h5 Rf1-c1 23.Kd1-e2 Se1-f3 24.Kc1-d1 Se3-d5 25.h7-h6 Sd1-e3 26.Kc2-c1 Sf3-e1 とすれば、とうとう局面をほぐすことができた!
つまり、Bh8をe5に戻し、1.Qd1#とすればよい。

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