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2014年12月12日16:04

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今月のLC外伝ネタバレ

◆新章突入センターカラー!牡羊座のシオン編、開幕!
それはやがて教皇へと成長を遂げる男のもとへと届いた。それは偶然か、それとも。

シオン編第一話 牡羊がみる夢

『また貴方か。少しずつ声が鮮明になっていく。早く来いと』
夢の中でシオンは牡羊座の黄金聖衣の声を聴いていた。
『早く…、牡羊座を纏えと』
オブジェ形態の牡羊座の聖衣が分解し、シオンの体に装着される。
「うっ…?」
シオンの頭の中にイメージが流れ込む。
『これは、聖衣の記憶。今まで見たものとまるで違う…、牡羊座の…』
「シオン様!」
「シオン様ァ」
同じ部屋で眠るユズリハと弟のトクサがシオンを起こす。
「大丈夫でございますか?シオン様」
「ユズリハ…、トクサ…、また…私は…」
「はい。激しくうなされておりましたので」
「今何刻ほどだ?」
「さぁ…しかし夜明けにはもう少しかかるかと…」
「そうか…」
シオンは身を起こした。
「どちらへ?」
「…少し風に当たってくる。心配させてすまなかった。夜が明ければまた修行だ。二人はゆっくり休んでいてくれ」
シオンは部屋を出て行った。
「姉さん…シオン様は大丈夫だろうか…」
「…トクサ」
「ここのところ毎日うなされている。…もしかして」
「うむ…長が聖衣継承を認めぬのを随分気に病んでおられる…。何故だろう…実力は充分のはずなのに。そういえば以前長は言っていらした。あの方は聖衣に魅かれ易いと…」
聖戦開始より五年前、ジャミール。
『来い。早く来い。この流れの中に…』
シオンに聖衣の声が届く。
『あの山を超えた所に牡羊座の聖衣があるという。先代牡羊座の墓とともに前聖戦より眠り続けてる。日に日に強まる私を呼ぶ声。確かにそこから聞こえる気がする』
シオンは手を伸ばした。
『早く行かねば。早くいきたい、牡羊座の下に…!だけど』
周囲の岩をシオンはテレキネシスで浮き上がらせた。
『まだ行けない。何故。許されていないから。私の力がまだ、未熟だから…!』
岩同士をシオンはぶつけた。
気配に気づき、後ろを振り向く。
「誰だ!?」
「ったくよォ。夜明けまで一眠りしようと思ったら…、いきなり岩の弾丸はねェんじゃねェの?」
人魂が飛ぶ。
「何が溜まってんだか知らねェが、所構わず当り散らしてんじゃねェ!」
「盗人のようにそんな所に潜んでるのがいけないのだ。今日は一体どんな用だ。蟹座のマニゴルド!」
岩の上には聖衣をまとったマニゴルドがいた。
「ヘッ!言ってくれるねえ!、テメェ、最近ハクレイのジジィに似てきたんじゃねぇの!?」
「人の師をジジィ呼ばわりするな!お前こそ師であるセージ様の爪の垢でも飲めば良いのだ!」
「ハァ!?冗談抜かせ!あんな堅っ苦しいの性に合わねェぜ。まあとにかくその教皇セージ様の有難ェパシリで来たわけよ。後で館の方にも顔出させて貰うぜ。個人的にもジジィには報告することがあるしな」
そういってマニゴルドはシオンの頭をなでた。その瞬間、蟹座の聖衣の記憶がシオンの頭に流れ込んだ。暗黒祭壇星座のアヴィドとの戦いの記憶。
「黒い祭壇星座(アルター)…?誰だ?この男は…」
「…オイ…」
マニゴルドが青ざめる。
「それ報告しようと思ってた任務。お前…また聖衣から記憶読み取ったろ!?」
「ち…違う!気を抜いてたら流れ込んできたんだ…。普段は遮断できる…!」
「こりゃジジィ共も気をもむわけだぜ…」
マニゴルドはそう言って頭を抱えた。
ジャミールの館でシオンを共にマニゴルドはハクレイに会った。祭壇星座の聖衣をわきに置いてハクレイが座る。
「なるほど。早々にシオンに黄金聖衣継承の試験を行えと。教皇(セージ)はそう申しているのだな?」
「……」
「ああ、そうだ。あんたならすでに感じているはずだろう?各地で魔星は目覚めつつある。聖戦はもうすぐそこだ。聖域もまた戦力を終結させなきゃいけない。特にこのシオン(ガキ)の実力はうちのお師匠も買ってる。聖闘士としての経験は早めに積んどいたほうが良い。これが正式な召集令状だ」
マニゴルドは一枚の書類を差し出した。シオンの胸が動悸を打つ。
「……。真にセージはそう考えておるのか?シオンに牡羊座の聖衣を与えよと」
だが召集令状を読み、ハクレイは答えた。
「断る!」
「はあ!?おいおい、ジジィ!話聞いてたかよ!?聖戦!非常事態!ついでの教皇命令だぜ!?」
「教皇といえど昔を知ったる我が弟よ。この命、今は受けられん。セージにはそう伝えてくれ」
ハクレイはそう言って席を立った。
「報告する俺の身にもなってくれよな…!」
「何故ですか、師よ…」
ハクレイの背にシオンは問うた。
「シオン…」
「セージ様の…教皇からの命をはじく程に、今の私には聖闘士の資格はないということですか…?」
膝の上に置いたシオンの手が震える。
「……。…あるいはな」
「はっきり言ってください…師よ!」
ハクレイの背にシオンが取りすがる。その時、ハクレイの背が光った。シオンはがくりとその場に崩れた。
「お…おい…!おい!」
マニゴルドがシオンに呼びかける。
「わしが危惧しておるのはその能力じゃ。聖衣との強い同調能力!」
祭壇星座の聖衣がシオンの前に浮き上がる。
「今、お前の脳には膨大な記憶の渦が流れ込んだはずじゃ。代々教皇補佐を務めた祭壇星座(アルター)の歴史がな!」
『砂嵐のように映像が脳を駆け抜ける…!頭が割れる…!』
「お前のその能力は聖闘士として力をつけるとともに強まっておる。少し触れただけでこの有り様よ。大抵の聖衣ならばいずれ制御し纏えもするじゃろう。だがあれだけはダメだ。牡羊座の聖衣はお前の精神を破壊しかねん!お前はあの男が視たものに耐えられん!師として聖衣継承を許すことは断じて出来ん!聖闘士の資格がないのではない。…恐らくは、有り過ぎるのだ。話はこれまで」
「「師として」…と言いましたか。…ならば、私は今日限りでこの館を出ます!」
『来い。早く』
牡羊座の聖衣の声がする。
「そうすれば私たちはもう師弟じゃない…。私はこれより令状に従い聖衣を取り聖域に向かいます。その結果、私が牡羊座に殺されたとしても、それは私にそれだけの器がなかっただけの事。貴方には何の関係もない!」
『来い!』
「行きます!牡羊座の下に。ずっと私を呼んでいるのです!」
「…それが危険だと言うておるのに…」
ハクレイの手が光る。
「!」
マニゴルドとシオンの二人は館の外に吹き飛ばされた。
「うわあぁあ!」
遠くで修業するユズリハとトクサも異変に気付く。
「!?」
「くっ」
「牡羊座はわしとセージの親友じゃった…。わしらは奴の苦悩を間近で見続けた。あの聖戦は奴の恐れと苦悩を消す戦いでもあった。「奴を救う」事、それがわしらを一丸にした理由の一つだったのじゃ。だがその苦悩をお前までが知る必要はどこにもない!」
「覚悟の上です…!」
「その覚悟がどれ程重いか、お前は知らん。小僧のお前にはな!」
ハクレイがシオンを頭上に吹き飛ばす。
「おいおい!ちょっと熱くなりすぎだぜ!ジジィも大人気なさすぎだぜ!」
「良いんだ、マニゴルド…」
『俺が良くねェ…』
「師との話し合いならこれが一番通じやすい…。覚悟と言いましたな、師よ。貴方こそ私の覚悟を理解(わか)ってはおりませぬ…」
シオンが構え、小宇宙を高める。
「ほう!技を出すか!しかもその構え、わしの教えたものではないな?」
「そうです。これは聖衣達が見せてくれたある方の姿。先代牡羊座の技の構え!」
「……」
「わかってください、師(ハクレイ)…。私は幼い頃この能力で多くの聖闘士の生涯を盗み見、そしてその聖衣達と貴方に命を救われた時強く思ったのです。私もこの大いなる流れの中にいたい。私にとって貴方と前聖戦の貴方の仲間たちは憧れです!その貴方たちを一丸にした苦悩ならば望むところ!私は絶対に心折れはしない!」
「よかろう!ならば餞別にわしもこの技を贈ってやろう。しかと耐えろよ!この先の困難を生き残れるよう!」
ハクレイの指先に小宇宙が集まる。
「ハアァア!スターダストレボリューション!」
回転する星屑が周囲の岩を破壊する。
「末恐ろしいガキだぜ、相変わらず…。これを聖衣から見よう見まねで編み出したってか…!?」
『だがこれじゃあまだジジィには通じねェ!マトモに喰らっちまうぞ、あの大技…』
「積尸気冥界波!」
『しまった…、肉体から魂が引きずり出される…。体に戻れない…死界の穴に…引き込まれる!』
それをマニゴルドが途中で防いだ。
「俺がお師匠にド突かれる事はやめろっつってんだよ!」
倒れたシオンを前にハクレイとマニゴルドが話し合う。
「ったく…まさか本気で冥界波放つとは思わなかったぜ!マジで殺す気だったのかよ!?」
「手を抜けば餞別にはならん!それに積尸気使い(おぬし)がいたから助けると思っとった」
「見越されてたって事かよ…!ケッ…、やっぱあんたら双子ジジィは質が悪いぜ」
「フン…。…後のことは頼んだぞ、マニゴルド。セージはお前を寄越したのは牡羊座の墓でのサポートもあろう」
「わかっててゴネたのかよ」
「セージが牡羊座の聖衣の事もシオンの能力の事も見過ごすはずはないからの」
「そんなんだからまた弟子に逃げられるんだぜ。ひねくれジジィ」
「……。だがこれで最後の師弟ゲンカが出来た。道中気をつけよ!」
『何故。何故よりによってシオンが牡羊座かと恨みもした』
マニゴルドはシオンを抱えて立ち去った。
『だが何か意味がある。お前の記憶も、シオンの能力も。そうじゃな、我が同胞(とも)アヴニール。愛弟子(シオン)を頼む』
マニゴルドの背でシオンは目を覚ました。
「やっと起きたかよ」
「…師は…!?」
「とっとと連れてけってよ。素直じゃねェな…ホント!」
「…そうか」
シオンは振り返った。館の最上階から見送るハクレイの姿があった。
『永い旅になろう』
◆晴れやかなる決別!不器用ながら師弟の絆はこの場所に確かにあった。


作者コメント:先月はお休みさせて頂いて申し訳ありません!2015年も頑張っていきたいと思います!


シオン外伝です。いよいよ黄金外伝もトリかぁ…。パンドラ外伝とか三巨頭外伝とか、まだまだ見たいけど。
シオン、ユズリハ、トクサ、同じ部屋で枕を並べて寝てます。年頃の男女がそれでいいのかw
先代牡羊座は髪がもわもわ、羊みたいです。アヴニールという名前は「未来」という意味みたい。
来年1月8日はアスプロス外伝が単行本発売。「その男が求めたのは光でも闇でもなく、ただひとつ運命に抗うための「我」。双子座の黄金聖闘士アスプロスは「魔星」を巡る戦いに巻き込まれた少女・クリス保護の任を受ける。誰よりも運命の重さを知るアスプロスの信念と覚悟は、彼女を救う標となるのか!?」です。

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