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2018年08月21日10:30

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ナナコとうさぎの物語

ナナコとうさぎの物語/フロウライト

その1
ナナコは、図書館で一人で本を読むのが、好きな女の子でした。
ナナコは、その日も、図書館に行きました。
そして「うさぎの図鑑」と言う本をみつけました。

色々なうさぎたちが、写真で載っていて、
その一羽一羽が、とってもかわいいのでした。

ナナコは、その本を借りることにしました。
そして、大事に抱えて、ウチへと帰りました。

ウチに帰ると、
お母さんが、押し入れの中を整理していました。
「あらっ、ナナコ、はやかったのね。おかえりなさい。 」
ナナコは、お母さんに、本を見せました。
「お母さん、ほらっ、かわいいよ。」
お母さんは、パラパラと本をめくりながら、言いました。
「あらっ、うさぎの本、借りてきたのね。
かわいいわねえ。」
それから、すぐに、本をななこに返しました。
  
「お母さん、うさぎ、飼いたい」
ナナコは、少し緊張しながら、しかし、はっきりと、そう言いました。
「そうねえ。考えておくわ」
お母さんの、この言葉はどちらの意味だかわかりません。
うさぎを、飼ってもいいのか、悪いのか?
ナナコは、少し気持ちが、しょんぼりしました。
  
ナナコは、自分の部屋に戻って、
一人で、本を隅から隅まで読みました。
「うさぎは、一人ぼっちで寂しいと死んでしまうと言いますが、
それは、迷信ですから、安心してください。
一羽で飼っても、大丈夫です。
飼い主が、しっかりとお世話してあげれば、
元気に育ちます。」

ナナコは、この言葉を読んで、
とても、かなしくなりました。
心臓が、ドキドキしました。
うさぎを飼うと、うさぎが死んじゃうこと。
そんなこと、はじめて考えてしまったのですから。
でもだいじょうぶだと、書いてあること。
でも、本当にだいじょうぶなの?
ナナコの心は、とっても不安になったのでした。

でも、うさぎの写真は、とってもかわいいのです。
それを見ていると、またすぐに、うさぎを飼いたくなるのでした。
  
そんなとき、
お母さんが、ナナコの部屋に入って来ました。
「ナナコ、プレゼント、あげる。」
お母さんは、手を背中に回して、からだの後ろで何かを持っているようです。
「お母さん、何、くれるの?」
「何だと思う?」
  
そう言われて、考えていたら、お母さんは、
「ほらっ、うさぎだよ。」
と言って、
背中に隠していたものを見せました。
それは、瀬戸物でできた、うさぎの置物でした。

「お母さんが、子供のころに、かわいがっていたんだ。
押し入れの置くに入っていたのを、思い出したのよ。」

ナナコは、そのうさぎの置物を受け取りながら、
「ありがとう」
と、小さな声で言いました。
本当は「いらない」と言って
泣いてしまいたいとも思いましたが、
そうすると、いけないような気がして、
うさぎの置物を受け取ったのでした。

お母さんは、
「それじゃ、夕飯の支度するね。
ナナコは、宿題、やっておきなさい。」
そう言って、部屋を出ていきました。

その2

うさぎの置物を、よく見てみると、
頭の後ろに、
お金を入れる口が開いていました。
それは、貯金箱なのですね。

ひっくり返して見ると、
底の部分に、ゴムの蓋がついていました。

そのゴムの蓋を見ていたら、
蓋が空いて、
ジャラジャラと金貨が出てくるイメージが浮かびました。

ひらめいた!

「そうだ、お金貯めて、うさぎさんを買うお金にしよう。」
ナナコのヒラメキは、ナナコをとっても元気にしました。

それから、ナナコは、おこづかいを貯め始めました。
お母さんのお手伝いもたくさんして、お金をもらいました。
お父さんの、肩もみもしました。
そうして、あっっと言う間に、3ヶ月が過ぎました。
うさぎの置物の貯金箱は、
お金でいっぱいになりました。

ナナコは貯金箱を、お母さんのところへ持っていき、
お母さんに言いました。
「お母さん、うさぎを飼いたいの。
これで、うさぎを買ってちょうだい。」
お母さんが、うさぎの貯金箱を開けると、
たくさんの小銭がジャラジャラと、出てきました。

「ナナコが、こんなに、貯めたの?」

「うん。お菓子を食べるのは、がまんしたんだよ。
それに、お手伝いも、がんばった。」

お母さんは、言いました。
「わかったわ。
今度の休みに、お父さんと一緒に
うさぎを、買いにいきましょうね。
このお金で足りない分は、
お父さんが、何とかしてくれるように、お願いしてあげるわ。」
ナナコの顔は、パアッと明るくなったのですが、
なぜか、目から、涙が溢れました。
「お母さん、ありがとう!」
「ナナコ、泣くんじゃないわよ。
これから、おまえも、うさぎのお母さんになるんだよ。」
そう言われて、ナナコは、
「わかった」
と応えるのが、せいいっぱいでした。

自分がお母さんになるって、どういうことなんだろう?
少し不安になりましたが、
うさぎを飼える嬉しさで、
ナナコは、うさぎみたいに、飛び跳ねたくなるのでした。

日曜日に、ナナコは、 
お母さんとお父さんと一緒に、
ペットショップに出かけました。
そこで、かわいい白いうさぎをみつけました。
ナナコの頭の中に、
ナナコの好きなミルキーアイスクリームが、浮かびました。

ひらめいた!

「この子がいい。
名前は、ミルキーだよ。」
早くも、名前をひらめいたナナコでした。
それから、
その白いうさぎと、うさぎのゲージと、うさぎのエサを買って、
ナナコ一家は、ウチへと、一目散に帰りました。

ナナコは、うさぎに向かって言いました。
「私が、お母さんだよ。
今日から、よろしくね。ミルキー。」

その3

うさぎのミルキーが、ナナコのウチに来てから、
ななこは、しっかりと、ミルキーの世話をしました。
ミルキーのいる生活は、
とても楽しいものでした。
でも、ナナコには、一つ心配なことがありました。
「うさぎは、一羽だと寂しくて死んでしまう。」
そのことが、気になっていたのです
ナナコは、ミルキーのお母さんとして、
ちゃんと、やれているのかな?
そんなことを思うと、余計に心配になりました。

お母さんも、私のために、がんばってくれてるけど、
ときどき、私の気持ちが、わかってないこともあるんだよな。
私はミルキーの気持ちを、ちゃんと、わかってるのかな?
そう思うと、またまた、心配になりました。
頭の中が心配でいっぱいです。
今日は、ひらめきが、やって来ません。
  
ナナコは、ふと、
机の上に置いてあった、うさぎの貯金箱を見ました。
貯金箱のうさぎの目と、ナナコの目が合いました。
そのとき、貯金箱のうさぎの目が、うるんでいるように見えました。
「どうしたの?
泣いているの?
寂しかったの? 」
ななこは、自然に貯金箱のうさぎに話かけていました。
そのとき、
ナナコは、とても大切なことを思い出しました。

「あなたのおかげで、 みるきーに会えたのに、
ミルキーが来てからは、ほったらかしてたね。
ごめんね。
それから、もう一つ。
あなたには、名前もつけてなかったね。
ごめんね。」
そのとき、
貯金箱のうさぎの目がピンク色にキラキラと輝いたように見えました。

ひらめいた!

「あなたの名前は、ピンクだね。
これからは、私がお母さんだよ。
よろしくね。ピンク。」
 

それから、ナナコは、
ピンクを抱きあげて、ミルキーのゲージの前に座りました。
「ミルキー、
あなたのお友達を紹介するわ。
いえ、間違えたわ。
お友達じゃなくて、お姉さんだね。
ピンクって言うのよ。仲良くしてね。」
そして、ナナコは、
ピンクをミルキーのゲージの中へ入れたのです。
ミルキーはピンクの匂いを鼻を近づけて確かめながら、
やがてピンクの横にしっかりと寄り添いました。

「もう、だいじょうぶだよね
寂しくないよね。」
そうして、
二羽のうさぎをみつめていたら、
とっても優しい気持ちになりました。

ナナコは、
お母さんになると言うことの意味が、
ほんの少し、分かったような気がしました。

そうして、ナナコはピンクとミルキーを
いつまでも、いつまでも、ほほえみながら眺め続けました。

おしまい。

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