mixiユーザー(id:809109)

2007年05月06日13:53

6223 view

「クロネコ」 とはチンチン袋のことである。

  ▲黒猫。        ▲黒猫。         ▲脱いだ黒猫。



〓またも、ネタモトは、伊集院光 氏のラジオ番組です。3月に放送された 「日曜日の秘密基地」 をウッカリ忘れて聞かずにいたのが、出てきました。

〓ゲストは大杉蓮 (おおすぎ れん) さんで、見た目どおり、ものすごく冷静なカタでした。もともとは、

   無言劇の 「転形劇場」 (てんけいげきじょう)

に所属していて、劇団が解散したために、やむを得ず、他の場所に職を求めるうちに、今の位置に到達した、ということらしいです。
〓「無言劇」 というのは、文字通り、いっさいのセリフを発せずに演ずる舞台のこと。一度、NHKで2時間の中継を放送したときには、「音声が流れていない」 という電話が NHK に殺到したそうです。
〓北野武 監督の映画を見たとき、そのスタイルに、無言劇と共通するものを見出し、それでオーディションに参加したとのこと。以後、北野映画の常連です。

〓面白かったのは、終始、冷静沈着な大杉蓮さんも、

   「メガネ・コレクション」

のハナシになると、少々、コーフン気味になるのでした。大杉さんは近視で、個人的に 200本 ほどのメガネを持っているそうです。メガネ屋で珍しいフレームを見つけると、買わずにいられない、とのこと。
〓役に合わせて、自分のコレクションの中からメガネを選ぶんだそうです。今度、大杉蓮さんをスクリーンなどで見たら、「ああ、あのメガネはコレクションのひとつなんだな」 と思ってください。



  【 謎の “ちんちん袋” 】

〓「日曜日の秘密基地」 を、いつも聴いているヒトなら、オナジミのコーナー、

   「ヒミツキッチの穴」

に、こんな質問が出ていました。

──────────
子どものころ、オジサンとプールに行ったら、オジサンは、海水パンツの下に、「オチンチンを収納する袋」 を着けていて、その袋はヒモで腰に留めるようになっていました。後にも先にも、あのような 「オチンチン袋」 を見たことがありません。あの袋は、いったい、何だったんでしょうか?
──────────

〓あたしもキョーミシンシンですよ。そんな 「オチンチン袋」 聞いたことありません。オチンチンを入れる 「刀の鞘 (さや)」 みたいなものだったら TVでも、よく見ますよね。パプアニューギニアなどで男性が着用する

   「コテカ」 koteka

というものです。
〓日本人は、コテカのことを、

   ペニス・ケース

と呼ぶことが多いですが、penis case [ ' ピーナス , ケイス ] という言い方は、英語では稀にしか使われません。一般的には、

   penis sheath [ ' ピーナス , シーす ] ペニスの鞘 (さや)

と言います。penis cover でも通じるでしょう。しかし、penis case は理解してもらえない可能性大です。
〓あれは、意外なことに、乾燥させたヒョウタンの実から作るそうです。実のお尻に石のオモリを付けて、細長く育てるんだとのこと。
〓部族によって、コテカのタイプは違っていて、見分けることができます。また、短いコテカは、労働用で、長いコテカは祭りなどに着用する晴れ着であるらしい。
〓「コテカ」 というのは、インドネシア語による呼び名です。パプアニューギニアというのは、実に多様な言語の坩堝 (るつぼ) なので、各言語ごと、また、それぞれの言語でも用途ごとに、異なった呼び名があるようです。「コテカ」 の語源はわかりませんでした。

〓そういえば、中世ヨーロッパでも、成人男性たちが 「オチンチン・カバー」 を着用した時代があります。15〜16世紀のことで、そのころのヨーロッパのズボンというのは、肌にピッチリしていたうえに、股が割れていて、その穴から 「チンチン垂れっぱなし」 の状態でした。
〓この時代に、男性の上衣である 「ダブレット」 doublet (英語) が短くなったため、股間が丸見えになり、それを隠すために

   codpiece [ ' コッド , ピース ] コッドピース

というモノが生まれました。股間を覆うカバーです。

〓で、日本の 「ちんちん袋」 です。
〓ラジオに寄せられた情報によると、その 「ちんちん袋」 は、ナンと、

   昭和30年代の学校では、水泳の時間に、
   男子は、海水パンツの下に着用することが
   義務づけられていた


というんですね。忘れるとキツク叱られたらしい。「ちんちん袋」 なしではプールに入れさせてもらえなかった、というんです。その時代の海水パンツは、「ちんちん袋」 で、チンチンを押さえつけておかないと、ダランとしているのが、外見ですぐにわかったそうです。ふ〜〜〜〜む。

〓また、こんな情報も寄せられていました。

   昔の男の子は、泳ぐときに 「ちんちん袋」 を
   穿 (は) くのが普通で、のちになって、
   その上から、さらに海水パンツを
   穿く
ようになった


というんです。

〓そして、最終的に、その 「ちんちん袋」 の呼び名がわかったんです。

   黒猫 (くろねこ)
     ※ もしくは、「黒猫フンドシ」

と言うんです。えええええええ!
〓あたくし、コトバにナミナミならぬ関心を持っているうえからは、「そのコトバは知らない」 とは言いたくないのです。しかし、こればかりは、

   シャッポを脱がずにおれない

〓ミゴトなまでに 「聞いたこと」 がない。

〓「黒猫」 という名前がわかればコッチのもんです。いくらでも調べようがある。どうやら、昭和30年代くらいまでの男の子にとって、「黒猫」 は、当たり前の存在だったようです。特に、田舎で、海や川などの自然が豊富な地域では、水の中で遊ぶのにも常用されたらしい。
〓表に見える形で 「黒猫」 を着用するのは、中学生以下の男子で、それより年が上のヒトは、着用するものが褌 (ふんどし) と変わるんだそうです。な〜るほど、なるほど! 「黒猫」 というのは、

   褌を締めるようになる前
   男の子たちがチンチンを
   覆うために穿く 「簡易フンドシ」


ということが言えるらしい。
〓ネットで年輩のヒトのハナシを読むと、(たとえば、コチラ↓)
http://homepage1.nifty.com/koshifumi/fdc-01c.html
どうやら、「黒猫」 が生まれたのは、それほど古いことではなく、昭和に入ってからのようです。そして、戦後しばらくして、昭和30年代ころには海水パンツのインナーとして穿かれるようになり、さらに、昭和40年代には、「サポーター」 に、その地位を奪われたんでしょう。
〓「黒猫」 というようなフンドシが生まれたのは、学校における水泳の授業の誕生と関係があるように思えます。日本において、西洋近代式の水泳競技大会が行われたのは、ナンと、

   1914年 (大正3年)

なんだそうです。それほど昔じゃないですね。
〓全国で初めて小学校にプールができたのが、

   1923年 (大正12年)
   東京市の礫川 (れきせん) 小学校
     ※ 現在の文京区にある

だそうです。文部省と日本水泳連盟とが協力して、「全国 水泳指導者 講習会」 を始めたのが昭和初期。
〓1938年 (昭和13年)、

   第1回 国民皆泳 全国学童 水泳大会

が開催され、中央会場の明治神宮プールと、日本各地の会場のようすを NHKラジオが中継しました。中央会場では、開会式で文部大臣が式辞を述べています。
〓なるほど、なるほど、ですよ〜。

〓つまり、昭和10年代に入って、日本は国をあげて、水泳教育に本腰を入れ始めたわけです。年輩のヒトの証言によれば、大正末期から昭和初期には、大人でも海水パンツの下に何も着けておらず、昭和10年ごろに、海水パンツの下に 「黒猫」 を着けていることが多くなった、と言います。
〓「黒猫」 というのは、おそらく、そのころに生まれたものではないでしょうか。



  【 元祖 「黒猫フンドシ」 】

〓日本の漁村では、もともと、男たちは、

   畚褌 (もっこ ふんどし)

というものを着用していたようです。越中褌 (えっちゅうふんどし) よりも生地が短くて、「前垂れ」 が無いんですね。形態から言うなら、両脇がヒモになったパンツですよ。
「畚」 (もっこ) というのは、ゴザの四隅に縄をつけ、土などを担いで運べるようにした 「土砂運搬具」 で、昭和初期までは土木工事に使われていたそうです。畚褌 (もっこふんどし) というのは、脱いでしまうと、形状が 「畚」 (もっこ) そっくりなんですよね。
〓「黒猫」 は、この 「畚褌」 を変形したものと言えます。つまり、「畚褌」 の

   尻を覆う部分の布をなくす

ことで、「Tバックふんどし」 ができあがるんです。それが、まさに 「黒猫」 です。

〓戦前の学校で使用された 「黒猫」 は、どうやら、色が 「黒」 と決められていたようです。そして、脱いで放りだした形を見ると、なるほど、お尻の割れ目を通る布がシッポに似ていて 「黒猫」 に見えるんですね。
〓もし、これが 「学校用」 でなかったとしたら、“色が黒と決められている” 必然性はないハズです。「黒と決められている」 というあたりに、「学校教育から生まれたもの」 というニオイが感じられます。また、それゆえに、「学校教育で、水泳が採り入れられて以降」 に誕生したもの、とも、推定できます。

〓面白いことに、goo 辞書で、「くろねこ」 を引いても出ていないんですね。黒猫フンドシは、一般名称を 「水褌」 (すいこん) とも言うらしいんですが、こちらも goo 辞書には載っていません。
〓 Wikipedia には、「褌」 (ふんどし) の項に、申し訳程度に 「黒猫褌」 の記述がありますが、あまり、参考になりません。

〓世の中の人が、どれくらい、「黒猫」 を知っているのか調べてみました。「黒猫」 という普通名詞があるので、「黒猫」 だけで検索することはできません。

   黒猫褌  3,630件
   黒猫ふんどし (フンドシ)  1,160件

   クロネコ褌  21件
   クロネコふんどし (フンドシ)  19件

   くろねこ褌  4件
   くろねこふんどし (フンドシ)  14件

〓「コテカ」 を検索すると 16,400件ですから、知名度は 「コテカ」 の約 1/3 です。ネットの検索数が、4,800件程度というのは、世の中にあまり知られていないもの、と言っていいと思います。

〓ネットでいろいろ調べると、「黒猫フンドシ」 は絶滅していないようです。製造販売している業者もありますし、また、意外なことに 「エロ下着」 として、「黒猫フェチ」 の人たちも存在する気配です。それに、現在でも、水泳時に黒猫を愛用する年輩の男性もいるようです。「黒猫」 は方言によっては、「キンツリ」 (金吊り) と言うこともあります。「近畿日本ツーリスト」 の略称と同じですね。
〓学校によっては、臨海学校などで、男子に、いわゆる 「赤褌」 (あかふん) を締めさせるところもあるようですが、この 「赤褌」 は、

   前垂れの短い、赤い越中褌

であって、“前垂れのない” 「黒猫」 とは違います。


〓“黒猫” は 「辞書に載っていないコトバ」 の立派な実例と言える単語ですね。
0 6

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2007年05月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031