「ブレードランナ2049」
この映画の感想を始める際、「前作のデッカードは人間かレプリカントか」という命題から入る映画評とかが多く、私はこの書き方が気に入らない。
だって、旧作のデッカードがレプリカントであるのは明白だからです。
それは、リドリー・スコットがそう語ってるからと言った外野の声だけでなく、映画の中だけでも一目瞭然。
「<a HREF="
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=628394143&owner_id=8020580" target="_blank">ブレードランナー／ファイナルカット</a>」の日記でも書きましたが、折り紙とかで象徴的に挿入されるユニコーンのイメージ、あれは「実在の馬よりも優秀で高度な生き物だが、所詮人間が生み出したもの」というレプリカントのメタファーと捉えなければ、全く映画の文法として意味を成さないからです。
（まぁ、最初の公開版は、意図的にこのあたりをぼやかした編集になっていたのではありますが）
今回の正式続編、世間の評判はすこぶる良かったんですが、個人的に私が一点だけすごく気になったのは、
デッカードは人間だとしたほうが、話がしっくりいくようなところが幾つかあった点です。
最大の点では、旧作ではレプリカントの寿命は4年とされていたのに、デッカードは何歳まで生きてるんだっていう。
勿論、生殖機能を有した特殊タイプだったのだから（それはレイチェルだけでなく、デッカードもそうじゃないと子供は生まれないでしょう）、寿命設定も特別だったと解することはできますが、どこか都合良すぎる設定の気がしますね。
生殖機能の点でもそうで、レイチェルとデッカード、どちらも特殊なレプリカントがたまたま出会っていたというのは、後付解釈にしては、旧作の世界観を全く覆すような…。
（謎を帯びたレイチェルはともかく、一捜査員（ブレードランナー）に過ぎないデッカードにそこまでの特殊性、必要？）
（そうなると、なんとなく「<a href="
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1221054207&owner_id=8020580" target="_blank">PLUTO</a>」のゲジヒトみたいなキャラクター像になりますね）
今作のデッカードは、どちらかというと「人間だった」というほうがしっくり来る部分もあったのが、デッカード＝レプリカント説を信奉してやまない私としてはすこぶる不満だったりするわけであります。
（今作のデッカードも、汚染著しいラスベガスで一人生き残ってたりとか、Kと殴り合って平気とかレプリカントっぽい部分もあったんですけどね）
（でもラストの、荒海で溺れそうになってる描写はどちらかと言うと人間っぽいなぁ）
そもそも今作のプロットを考えた場合、デッカードがレプリカントだとすれば、主要登場人物に生身の人間が殆どいないわけで（ウォレスも人間なんでしょうが、明らかに人間っぽさを押し出してるのはジョシだけ）、これはこれで凄い脚本だなぁと。
本作を「ピノキオ」になぞらえる向きもあるんですが、個人的に「ピノキオ」っぽく感じなかったのは、まさにそこなんですね。
「ピノキオ」は人間社会の中でロボットが人間性を獲得する物語ですが、
この映画は、主人公のロボットが人間性を獲得する部分は同じでも、周囲が人間世界ではなくもう殆どロボット社会としか言いようがないんです。
（余談ですが、個人的には、「ピノキオ」の二次創作映画としては、スピルバーグの「A.I.」が一番好き）
但し、この映画で凄いのは、Kが、最初からレプリカントだと明言されているにも関わらず、見てるうちにそのことを忘れて、人間だとしか思えなくなってくること。
それには、恋人であるジョイの存在も大きく、人物をハードではなくソフトとして描き切ったジョイのキャラクターは、この映画の生み出した革新的な表現であり、エポックメイキングに感じました。
「<a href="
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1332526112&owner_id=8020580" target="_blank">空気人形</a>」とか「<a href="
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1048860393&owner_id=8020580" target="_blank">ラースとその彼女</a>」とか、恋人が物質という映画は今までありましたが、遂に映画は恋人がマテリアルであることすら必要としなくなったのですから！
前作が、人間だと思っていた主人公がレプリカントだった話だとすれば、今作はレプリカントである主人公が人間になる話。
前述のように、多少気になるところ、あまり好きじゃない解釈もありはするものの、あの続編なしで完結していた映画に対して、これだけのアンサーをきちっと編み出したのは素晴らしいの一言です。
「GODZILLA／怪獣惑星」
どうして、「ファイナル・ファンタジー」にしろ「<a href="
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1915710056&owner_id=8020580" target="_blank">キャプテン・ハーロック</a>」にしろ、日本のフルCGのSF映画は、こうも閉塞的で暗い物語しか紡がないのか。
それが、この映画がダメな邦画の典型に見えてくるその� �
あと気になったのは、とにかく全ての状況説明とかを登場人物がセリフでやっちゃうっていうアレで、これがダメな邦画の典型その�◆�
（この病はアニメに限らず、実写でもダメな邦画の殆ど全てが罹患している）
この映画、もうびっくりするくらい状況説明のセリフが多くて、ほんとラジオドラマかっていうくらい。全く画面を見ずにセリフだけ聞いていたとしても、比較的正しく状況理解できそうだぞ。それくらいセリフ偏重。
そんな映画でも、物語の中盤を越えて漸くゴジラが出てくると、必然見ててテンションが上がってくるもので、ゴジラの偉大さを改めて感じました。
まさか続編あるとは思わず、ゴジラ映画は好きで極力観るようにしてるんですが、一作目でこのクオリティだったら（画ではなく脚本が）、もう続編は観ないかもしれないなぁ…
「KUBO／二本の弦の秘密」
「<a href="
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1442639810&owner_id=8020580" target="_blank">コララインとボタンの魔女</a>」のスタジオライカが、またやった！
しかも、前作の日記の際は「ストップモーションアニメの最後の煌めき」なんて失礼なことを書きましたが、スタジオライカの皆さん、全然、最後にする気配なんて見えないじゃないですか。
前作よりも更に技術を上げて、もう、どう見てもCGにしか見えない映像を作り上げてる。
同じ「CGにしか見えないクオリティ」でも、前作の「コラライン」は、人形のデータを取り込んでCGで動かすレベルでしたが、今作は本当に、イチから作るフルCG。
それは、立体物を以前よりもリアルに表現できるようになった、CG側の技術進歩による印象の変化の意味合いが大きいのですが、
やはり、そうなると、なんでこんなにCG全盛の世の中で、敢えてストップモーションに挑むんだ…という疑問にぶち当たります。
「コラライン」の日記では、「CGに出せない温かみのため」と書きましたが、それから7年、もはやCGで温かみも充分表現できるし、CGでできない表現はほぼ皆無。
それなのに、ストップモーションアニメに挑む心意気に痺れる憧れる！
幾らCGで代用できるといっても、一度失われた技術そのものは二度と戻りません。
伝統工芸などで、後継者がなく失われた技術のような話は幾つも聞きますし、
もっと大きな人類史のスパンで言えば、太古の巨石文明をどうやって人類は作ったのか、皆目分かっていません。今の技術であっても難しい精密工事を、どうやって当時の人々が成し遂げたのか解明できてません。
ストップモーションアニメも同じ、CGで代用できるからとそうしてしまったが最後、人類にとって二度と手の届かないものになりかねません。
宮崎駿が手書きアニメにこだわる理由も、同じでしょう。便利さと引き換えにして失ってしまうのを潔しと思わない意志を、そこに感じます。
また、日本を舞台にした物語が素晴らしい。
「桃太郎」風の、家来を従えての鬼退治モノなんですが、家来二人の隠された秘密とか、もう間違いなく泣けます。
思い出が力になるというテーマも、いいなぁ、ストップモーションという旧来の手法にこだわるのと同じ匂いを感じます。
もうほんとに、この作品といい「<a href="
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1910448597&owner_id=8020580" target="_blank">パシフィック・リム</a>」といい、なんでこれを日本人の手で作れなかったんだっていう。
エンドロールで、ジャッキー映画のNGシーンならぬ、ストップモーションの制作風景が出てきてこれまた驚愕の撮影風景（ってか、大きさがハンパない）。
そういや、折り紙が日本風のものとしてメインに扱われているんですが、紙を折って立体を造形するなんて、だいたいどの文化圏の人でも考えそうな気がするんですが、西洋人から見て日本っぽさを感じるということは、西洋や日本以外の東洋では、そんなに行われなかったのかしら。不思議。
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