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2018年08月04日21:49

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 【追記】 第1次大戦前,なぜ百万人近いユダヤ人がハンガリーにいたのか?

 【質問】 第1次大戦前,なぜ百万人近いユダヤ人がハンガリーにいたのか?
http://mltr.ganriki.net/faq08h09h.html#20276
に以下を追記予定.

▼ ユダヤ系ハンガリー人であるジョージ・ソロスの伝記には,そうした時代の状況が具体的に述べられている箇所があるので,以下にそれを引用して紹介したい.

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 オーストリア=ハンガリー二重帝国の成立と共に,マジャル人が統治するハンガリーは事実上,ヨーロッパのいかなる国よりもユダヤ人が暮らしやすい地となっていた.
 資本主義と工業化の時代に入り,既に黄昏を迎えた農本主義や封建的価値が衰退の一途を辿る中,ジョージ・ソロスの祖父に当たるシュワルツも,他のユダヤ人商人と同様,その恩恵を存分に受けた.
 ユダヤ人差別もないとは言えなかったが,[ジョージ・ソロスの父親である]ティヴァダールは,自由主義と他民族寛容の姿勢が高まる好景気の時代に,すくすくと育った.
 とはいえ,少年時代,小さな子供が
「ヘップ! ヘップ!」
とからかわれていた姿も思い出すとティヴァダールは書いている.
 ヘップとは,ラテン語の「ヒエルソリマ・エ・ペルディタ Hierusolyma est perdita」の頭文字をとったもので,
「エルサレムは失われた」
の意味だった.
 また,近くのティサ=エスラーの町で起こった「血の侮辱事件」のことも,少年時代に聞かされていた.
 これはユダヤ人がクリスチャンの少女を集団で殺し,その血を使って儀式を行ったという虚偽の告発事件で,ティヴァダールは,この裁判に絡んだ反ユダヤの歌の歌詞を,まだ覚えていると述べている.

大勢のユダヤ人がぞろぞろと
地獄に向かって大行進
先頭に立つのはネイサンだ
肩に担いだずた袋
大勢のユダヤ人がぞろぞろと

 確かにまだ悲惨な差別事件は起こっていたものの,それでもユダヤ人はハンガリー社会のほぼ全ての階層に溶け込み,1880年代末には,あらゆる職業で重要な地位を占めるようになっていた.
 有力者と呼ばれる産業経営者の多くはユダヤ系で,こうした経営者の内,キリスト教に改宗した者達も,かなりの割合に上った.
 中東欧諸国の中でも,ユダヤ人でも貴族の身分になれるのはハンガリーだけで,既に何人かの有力者,さらにはラビさえも一名ながら男爵に列せられ,彼らには議会上院の席も用意されていた.

 この時代,際立った才能を持つハンガリーのユダヤ人が激増しているが,これを最もよく映しているのは科学分野だろう.
 ティヴァダールと同世代のユダヤ人科学者で,やがて国際的な名声を得ることになったものは多く,中でも最も有名なのは,コンピューター時代を到来させる原動力となった数学者のジョン・フォン・ノイマン,さらには原爆・水爆の双方の開発に寄与した核物理学者のレオ・シラードとエドワード・テラーだ.
 この他人文科学,社会科学,各種の知的専門職,商業,産業の分野でも,ユダヤ系ハンガリー人は高い業績を挙げており,それが一種の学術研究の対象ともなっている.

------------マイケル・T・カウフマン『ソロス』(ダイヤモンド社,2004),p.9-10


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