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2017年09月25日08:27

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9/22オランダ人@DOB

Musikalische LeitungDonald Runnicles
InszenierungChristian Spuck
BühneRufus Didwiszus
KostümeEmma Ryott
LichtUlrich Niepel
ChöreJeremy Bines
DalandAndreas Bauer
SentaMartina Welschenbach
ErikRobert Watson
MaryRonnita Miller
SteuermannGideon Poppe
HolländerJosef Wagner

結論から言えば、懸念していたよりかは結構よかった、というところか。

何だよこのキャスト、という懸念はほぼ的中。単に自分が欧州の歌手事情に疎いだけかと思ったが、会場でキャストのバイオを見て(事前に確認すべきなのだが、暇が無い。あと未だに家にネット接続が無い…)、あぁやはり、と思い、公演が始まってみて、やはり、と。
一番、というか唯一まともだったのが急遽代役で入ったフランクフルト座付きのバウアー、というのは劇場として恥ずかしいと思うべきでは。まかりなりにもワーグナー上演の伝統のある(と、少なくとも自負はしている)歌劇場が、レパートリー公演とはいえ、プレミエ(本年5月)の数ヶ月後の「第一再演」でマリー以外キャスト総とっかえで、しかも総じて欧州地方劇場レベルの歌手で、良いと思っているのか。主要3役ーオランダ人、ゼンタ、ダーラント(と、敢えてこの3つ)のうち、オランダ人は声はそれっぽいがパートを超えて出てくるデモーニッシュな存在感は無し。ゼンタは、舞台姿は一流(超一流?オペラグラス無しだが)だが、歌は第2幕で自らのバラードについて「私は子供、だから歌が何を意味しているか分からない」だったかと歌うところで「そのとーり!」とかけ声をかけたくなるくらいの無内容。ついでにエリックも、エリックとしてなら良いが、これでタンホイザー以降の主役級(+リエンツィ)は無理だな。
救いはその他。オケは、前回の10年黄昏でも感じたが、2000年代前半の破滅的な状態からはだいぶ回復。合唱も、もちろんつい数ヶ月前に聞いた世界一の歌劇場合唱団とは比べられないが、これはこれでしっかりしている。指揮も、大見得を切ったり外連味が無いのがこの人の弱点かもしれず、舞台上の面々が上記のとおり弱いこともあって第1幕とかは若干微温的だったが、解釈や対処は職人的で間違ったことはしないので、ドラマの展開に応じて自然に熱を帯びていく。
演出は、興味深かった、というべきか。序曲を通じて絶望するエリックを舞台に出させ、序曲後も彼の出番までずっと片隅でうじうじしている。大団円も、自刃するゼンタを群衆が取り囲み、群衆が去った後は体育座りするエリックと帆船の模型のみ。要は、真の愛情を抱いているのはエリックだけ(オランダ人もゼンタもダーラントも、愛ではなく、それぞれ解放欲求、使命遂行/自己実現欲求、小市民的金銭欲ゆえの行動だろう)、その感情が他の主要登場人物の欲求のため蹂躙されるということを示そうとしているのだろう。ドラマの解釈としては面白い。問題は、音楽がその方向を指し示していないこと。(台本の深読みで無く、音楽をフォローしていったら、エリックはオランダ人とゼンタのそれぞれの欲(というとミスリーディングかもだが)の触媒としか思えない。)自分が仮に演出するとしたら、こういう逃げ方はせずに、ゼンタのこの愛と自称する取り憑かれた執念とカタルシスに着目するだろう…が、難しい。この作品は難しい。

いずれにせよ、充分楽しめたし、ちょっと安心した。シュターツオパーが今どのような常態かは来年初頭になるまで分からないが、やはり3つの歌劇場が競ってのベルリンなので。

今週は結構詰まっていたが、来週はティッチアーティ/DSOBの20世紀もののみ。こことRSOB(あとRIAS合唱団)が今シーズンから新監督、BPh、コンツェルトハウス管とコーミシェオパーが今シーズン終了とともに監督退任。ピエール・ブーレーズ・ザールは今シーズンからいよいよ本格稼働。こういったベルリンの音楽風景の変化に立ち会えるのは、まあ良いことなのかも。

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