奥多摩町さんぽ「奥多摩湖・日陰の村を歩く」
◎『石川達三著・日陰の村』
石川達三の作品に、『日陰の村』（昭和12年）という小説があります。小河内ダム(多摩川水系)建設をめぐる、小河内村内の動きを描いた小説です。日陰の村のタイトルの意味は、東京という大都市の発展につれ、大木の日陰にある草が枯れていくように犠牲となって枯れてゆく村という意味です。彼はこれを書く前に、入念な現地調査をしました。郷土史家でもある神主や、湖底に沈む小河内村の村長を訪ね、事件のあらましを調べました。
昭和6年、東京市は水道貯水池を造るため小河内村を水底に沈める計画を発表します。村長は反対する村議を諭します。しかし、工事認可がなかなかおりないため、保障をあてにする村民の生活は疲弊していき、彼等は蓆旗をたてて集団陳情に出かけます。漸く12年に起工式が行われますが、補償交渉は難航しました。そんなかで、小作・自作の零細農家は娘を売りとばさねばならないような窮地におちいり、足元を見すかされた村民にはきわめて低い補償金しか与えられず、遠くは満州開拓団、あるいは八が岳山麓の開拓団として、根を引き抜かれたように四散していく運命をたどります。都会文明に敗北していく一村落の哀史を、様々な人物像を織りなして力強く描きます。作品が書かれたのは、日中全面戦争前夜。養蚕モノカルチュアに単純化された山村の暮らしが、昭和恐慌とその後の不景気によって、破滅に瀕していた時代です。時代背景も、農林業切り捨て政策によって山村で暮らすのが困難になり、村をダムに売らざるを得なかった20世紀後半と重なるものがあります
http://nostalz.exblog.jp/13478747/
http://atta-an.seesaa.net/article/25591675.html
【小河内ダム(奥多摩湖)】
奥多摩湖は小河内ダムで流れを堰き止めたことで生まれた人造湖です。小河内ダムは、東京都民の水道水の安定供給を確保する目的で昭和32年に完成。現在も首都東京を支えています。小河内ダム建設に至るまでの経緯は意外に古く、すでに大正15年よりダム建設候補地の調査は開始されていました。候補地の中から水量や地質等の立地条件などを勘案し、条件が揃った東京都小河内村が最終的に選定されたのです。ダム建設計画が発表された昭和6年6月、小河内村は絶対反対を表明しますが、「幾百万市民の生命を守り、帝都の御用水のための光栄ある犠牲である」との再三に渡る説得に、昭和7年7月、小河内村はやむを得ず了承。ダム建設用地の買収が始まったのです。昭和13年に着工。途中、第二次世界大戦の勃発により工事は一時中断されますが、終戦後まもなく再開。昭和32年11月に竣工しました。一方、ダム建設にあたり、小河内村と山梨県丹波村及び小菅村の945世帯が移転を余儀なくされ、もとの町並みは湖底へと沈みました。なかでも、全村が水没した小河内村民は、工事期間が長引いたこともあり大変な心労と負担を強いられたということです。
http://fumu2.jp/damdam/Z-tokyo/ogouti/ogouti-1.htm
【湖底のふるさと】
小河内ダム建設のために移転を余儀なくされた世帯は、総数945世帯に及び、その大多数は旧小河内村の村民でした。昭和13年、ようやく小河内村との補償の合意がなされましたが、小河内村長小澤市平氏は、『湖底のふるさと小河内村報告書』（昭和13年）のなかで次のように思いを述べています。
《千數百年の歴史の地先祖累代の郷土、一朝にして湖底に影も見ざるに至る。實に斷腸の思ひがある。けれども此の斷腸の思ひも、既に、東京市發展のため其の犠牲となることに覺悟したのである。》
【湖底の故郷の碑(奥多摩湖左岸の公園)】
東海林太郎が歌った「湖底の故郷」は、600世帯、3000人が故郷を離れたときの思い出を歌った曲です。
《夕日は赤し、身は悲し、涙は熱くほおぬらす、さらば湖底のわが村よ・・》
昭和12年に発表され、全国的に愛唱されたといいます。湖底の故郷の碑が、昭和41年に奥多摩湖左岸の公園に歌碑が建てられました。
http://www13.big.or.jp/~sparrow/MIDI-koteinofurusato.html
【湖畔に１万本の桜】
奥多摩湖の湖畔には、１万本の桜が植えられ、桜の名所となっています。その他、四季折々に楽しめて多くの観光客を集めます。
http://www.tachikawaonline.jp/local/sakura/26_okutama.htm
○「小河内神社」(河内149)
青梅線奥多摩駅からバスに乗り、小河内(おごうち)神社前で下車します。多摩湖北岸の出島にあり、眺望は最高です。小河内ダムの底に沈んだ、旧小河内村に祀られていた9社11祭神を勧請して創建されました。合祀後は首都用水の護り神として祀られています。9社とは、温泉・金御岳・箭弓・貴船、愛宕・熊野・御霊・加茂・御岳の各神社です。この中の多くは、合祀後も移転して各集落に現存しています。
ダム建設のため旧青梅街道は、12.3�劼�水没しました。下流から原・河内・川野・留浦の4村14集落と山梨県丹波山村鴨沢と小菅村金風呂の945所帯が移転させられました。14集落とは、熱海・出野・原・湯場・河内・青木・南・岫沢・本田・麦山・川野・小留浦・坂本・日指の各集落です。途中参道より、かつて集落があった水没地区がよく展望できます。
【鹿島踊り】
毎年9月に行われる鹿島踊りなどの郷土芸能は、東京都の無形文化財になっています。
http://www.portaltokyo.com/guide_tama/contents/c52012ogochi.htm
http://blog.goo.ne.jp/daimatsuno/e/29b8e75c31eaf486f7c477f6db15dcd6
○「浮橋」(原5)
バス停まで戻り、目の前の長さ200ｍの「浮橋」を渡ります。奥多摩湖には浮橋が2つ架けられています。通称ドラム缶橋と呼ばれるこの橋は、ドラム缶状の樹脂と金属の素材が用いられております。昔はドラム缶を利用していました。この橋は、歩行者専用で青梅街道と奥多摩周遊道路を結んでいます。対岸に「南」の集落がありました。浮橋は山仕事で対岸に渡るために架けられたものです。
http://iko-yo.net/facilities/3069
○「三頭の名水」(川野)
浮橋を渡り左手の遊歩道を行くと、奥多摩周遊道路の山側路傍に「三頭の名水」があります。つづら折れのカーブの山側に切れ込んだ奧で見通しが悪く、車道を横切ることになりますので注意が必要です。
http://outdoor.geocities.jp/kojyo_annai/20090319_yusui/10_tokyoto/santo_no_meisui.html
○「山のふるさと村」(川野1740)
さらに遊歩道を行くと、奥多摩湖南岸に面した「山のふるさと村」があります。自然の親しみ、関心を深めることを目的にした自然公園施設です。園内には、ビジターセンター（自然解説、展示、自然観察体験）、宿泊施設、キャンプ場、バーベキュー施設が完備され、また、クラフトセンターでは、陶芸・木工・石細工・自然食教室など、色々な体験を楽しむことができます。ここにはかつて、「岫沢(くきざわ)」と「日指(ひざし)」の集落がありましたが、奥多摩湖ができると孤立するという理由で移転させられました。
http://www.yamafuru.com/
○「鶴の湯温泉」(湯の内586)
小河内神社前まで戻り蜂谷橋を渡り青梅街道を東に行くと、女の湯トンネルと鶴の湯トンネルの間に「鶴の湯温泉」の源泉があります。源泉施設と配湯基地からなり、一般の入浴施設等は設けられていません。源泉一帯は「湯場」と呼ばれて、かつて「鶴の湯」がありました。鶴がこの温泉で傷を癒していたという故事により、鶴の湯と名付けられました。江戸時代からすでに武甲小河内温泉として知られ、多くの墨客が足跡を残しています。水没前には8軒の旅館がありました。かつて名湯と呼ばれた鶴の湯は、源泉の補償に関して裁判で争われ、長らく未利用となっていました。地域住民の強い要望によって、平成3年11月にようやく復活しました。小河内ダム建設によって水没した、シカの湯・ムシの湯・ツルの湯の3つの源泉を、湖底よりポンプで汲み上げ、それをタンクローリーで各旅館に配湯することで温泉を蘇らせました。現在、利用できる旅館は、清流荘（休館中）、馬頭館、丹下堂の3軒です。源泉は無色透明で、硫化水素臭と硫黄味を伴うツルツル感があります。
http://domestic.travel.yahoo.co.jp/tif/onsen/tifodetail/a3/noSP301840
http://tenkara1nen.naturum.ne.jp/e1175228.html
【丹下堂】(原180)
倉戸口バス停の近く、倉戸山の麓の熱海地区に「丹下堂」があります。食堂であるものの、男女別の浴室が併設されており公衆浴場としての機能も有しています。浴室は食堂の奥にあり、敷地の制約のため1階と2階に設けられ、通常1階が男性浴室、2階が女性浴室となっています。浴槽は平石造りの内湯のみで、ツルツル感を伴う｢鶴の湯温泉｣を加熱利用しています。1階の浴室に隣接して休憩室も併設されています。
http://blogs.yahoo.co.jp/furorisuto4126/16865997.html
http://www.geocities.jp/enpituonsen15/tangedo.html
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