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2018年03月17日09:43

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優れたテレビドラマの見本、そうでないドラマとの違い。

「アンナチュラル」最終回に「クソ素晴らしい」と猛反響
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=14&from=diary&id=5030806
映画は監督のもの、テレビドラマは脚本家のもの、という言い方がある。半分当たっているが、半分外れている。予算の関係で、どうしてもセットの撮影が多くなり、クローズアップが多くなるから、ストーリーの展開が見せ所で、演出家の腕の見せ所が少ない、という意味だろうが、そのなかでも演出が光っているのは、今期だと、このアンナチュラル、例外としての(予算が桁違い)、大河ドラマの西郷どん、だろう。

特にこのアンナチュラル、脚本家がめざそうとするレベルが高い。そしてプロデューサーとの緊密な信頼関係のうえに、脚本家・野木亜紀子さんが描こうとするいまの日本がある。残酷で、ドライで、絶望の呻きばかりが聞こえる、そのなかで私たちはどう生きるのか?死が無慈悲に消費されていく日常のなかで、それでも希望はあるのか?というテーマに、重くなりすぎず、情緒にも溺れず、冷静に、果敢に、挑みきった。

キャスティングがみごとなのは、プロデューサーのお手柄だろう。石原さとみは、やっと本当の代表作に出会えたのだという気がするし、彼女の美しさと表情の豊かさと感情の揺れを見逃さないカット、カメラアングルには、演出家の他のドラマにはない繊細さとセンスの良さが際立っていた。

そしてヒロインの周囲のキャスト、みなだれひとり、適当な人物造形はなく、しっかりとその個性が描き込まれている。なかでも絶賛すべきは、井浦新。Eテレ日曜美術館のMCとしての経験が、近年演技にも大きな影響を与えている、と日美ファンの私は思う。とにかくこのクセの強い、乱暴だが、優しい役柄を楽しんで演じているのがわかる、かれにとっても、あるいはすべての出演者にとってもそういう現場だったのだろう。

最終回、アメリカまで舞台を広げたアイディアは、最初からあったのか、おお?そう来たか!土葬か!と思ったのだが、こういうアイディアはどこかの小説にでもありそうだな、と思ったりもする(笑、私はミステリーに強くないので)。そして最後の裁判のシーン、被告人に自白させるヒロインの言葉は、まさしくトラウマ自慢の最近のテレビドラマへの批判も含まれているだろうし、トラウマ自慢ごっこする最近の風潮への批判もあっただろう。

伏線のみごとな回収、なんて薄っぺらな言葉で誉めてもそれは批評ではない。脚本家とプロデューサーの思い、いまこういうドラマを作りたい、という真摯な思いが、ストレートに伝わってくる作品だった。今期のベストドラマだろう。


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