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2018年10月16日02:41

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カニサレス フラメンコ・クインテット

先月見たカニサレス フラメンコ・クインテット、
心地よく洗練されたフラメンコ空間、あの美音が耳に残っています。
愛と孤独を知る巨匠。
 
 
自らの半生を振り返るような、静かなソロからリサイタルは始まった。
世界最高峰のフラメンコ・ギタリストとなった今も、否、今だからこそ人は誰しもが孤独であるという原点に立ち返り、その静寂を噛み締めているようなマエストロの姿。そこからの対比で、フラメンコはコミュニケーションのアートであることがいっそう浮き彫りとなっていく。

馴染のカルテットにカンテを加えたクインテット。カニサレスの音楽に、カルモナはカンテで情感の厚みをもたらし得意のマンドラで繊細に寄り添う。安定のセカンドギター、ゴメスは骨太に支える。チャロはしなやかなバイレとチャーミングな笑顔で色彩を与える。ムニョスの心沸き立つカホン、そして妖艶なバイレと気迫のサパテアードは素晴らしかった! 彼らは、ソロから5人編成まで自在にアンサンブルを変化させていく。

朗らかに行き交う姿は自然でさりげなく、信頼の呼吸で結ばれていて、自己主張せずとも彼らの個性はすっきりと際立ち、その佇まいは実にエレガント。

知性溢れるコミュニケーションに奥行きを与えるのは、カニサレスのクラシックにおける造詣の深さ。今や『アランフェス協奏曲』ソリストの第一人者となった彼は、ファリャやアルベニス等、作曲家の魂にじっくりと向き合うことで、人の“想い”へ共感度を深めた。“今”の想いに反応する鮮やかなフラメンコ的直感とともに、その両輪でカニサレスのフラメンコの対話は磨かれて来た。

ラスト近く、ソロで演奏された『感受』は愛妻、真理子さんに捧げられた曲。瞑想するように爪弾く音色に愛情が滲む。真理子さんは客席のどこかで聴いていただろうか? 私なら嬉しさのあまり泣いてしまうだろう。

音楽は想いから生まれる。そんなシンプルな、けれど一番大切なことに改めて気付かされた極めて幸福な時間だった。

9/29(土)めぐろパーシモンホール

フアン・マヌエル・カニサレス Juan Manuel Cañizares
(ギター)
フアン・カルロス・ゴメス Juan Carlos Gómez
(セカンド・ギター)
ホセ・アンヘル・カルモナ José Angel Carmona
(カンテ、マンドラ、パルマ)
チャロ・エスピーノ Charo Espino
(バイレ、カスタネット、パルマ)
アンヘル・ムニョス Angel Muñoz
(バイレ、カホン、パルマ)

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