土曜日に飲むコーヒーは旨い
仕事から解放され
読み残した宮沢賢治は素朴で
改めて真面目に…なぁ〜んて感傷に浸ってるのに
前の席に座る…50がらみの男
背を丸め
ガサゴソがさごそ
何かしてる
不倫前か何か知らないけど
男がしきりに
指環を外してる
…が
外れない
指に食い込んだ金属の輪ッこ
古女房との誓いの輪っこも
今この男にとっては
邪魔物以外の何物でもない
早く外さないとの焦りもむなしく
必死こいても外れない
食いたくもないバタートースト注文し
パンに塗られたバターを指に
擦り塗りたくるも
…外れない
そこへ…
今頃まだこんな女…
いてんのんって思うようなのが入店
まさる…待ったー
この男…まさると言うのか
まさると言うより…
オサルやで…この顔わ
女に待った〜
と言われたマサル
ううん〜僕も今来たとこ
ウソつけ…
それが証拠に
カップのコーヒーは無くなり
バターの塗りたくられたパンが
目の前に散らかってるやんけ
楽屋衣裳で来たのかと
思うくらいのド派手洋服姿の女
回りに人がいるのもお構い無し
イチャイチャも…
普通のカップルなら
羨ましくもあるが
この手は…どうも
男も古女房以外の女とは久しぶりなのか
餡ころ餅にきな粉まぶしたような女にメロメロ
なんか食べたいものある？…と
マサルが言えば
餡ころ餅にきな粉の女が
好きなものかぁ〜
私ねワサビが好きなの
…??
宮沢賢治より
この女の発想力に文学を感じる
好きなもので…ワサビ
コレはなかなか出てくる発想ではない
僕…一瞬…アワビ…と聞こえたんだけど
アワビ…なら
宮沢賢治を続読するのだか
ワサビ？僕の聞き違い
と…思ってるのに
マサルが追い打ち…辛くないの？
やっぱりワサビに決定
こんな…男なら
古女房も不倫でも何でも
したらエエがなと
焼き餅も焼かないだろう
何せ相手の女が餡ころ餅なんだから
僕も…こんな不倫なら…してみたい
どこかに
オモロイ女の人がいないかな
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