日曜日、昼過ぎに出掛けようとしてバスを待っていました。
あっついわー…と思いながら立っていると。
道を渡ってこちらへやってくるじっちゃんが。
どうやら同じバスに乗るらしい。
「暑いねえ」
と話しかけてくるじっちゃん。
「暑いですねー」
じっちゃんは少し離れた倉庫の陰を指して、
「暑いときは、いつもあそこで待つんさねー」
とおっしゃる。
確かに涼しそう。
でも、バス停にいないと、バスが停まってくれないんじゃないの?
と思っていると、
「あのミラーで見とくんさー」
と得意気に教えてくれるじっちゃん。
…なるほど、おあつらえ向きのところにカーブミラーがあって、バスの来る道がよく見える。
これならバスが見えたら停留所に出ていけば良いわけです。
暑い時間帯にバスに乗ることなんて滅多にないから知らなかったけど、さすが亀の甲より年の功。
先達はあらまほしきことかな、とありがたく一緒に日陰で待たせてもらいました。
じっちゃんは相当に話好きらしく、持っていた買い物袋の中身を見せてくれながら、
「ヒゲソリの刃は高いねえ」
と言い出しました。
なんでも電気シェーバーの替え刃を買ってきたらしく、7000円もしたとか。
しかも前回買いに来たら店に置いてなくて、取り寄せてもらって、やっと買えたのだそうです。
お年寄りが何度もバスで買いに来るなんて、大変だなあ…と、若干かわいそうに思いながら聞いてました。
その時は。
そこから、じっちゃんは、ヒゲソリも歯ブラシもブラウンしか使わない!と熱く語り始めたのです。
国産は駄目だ!と。
最初は、ああ年寄り特有の思い込み?舶来信仰?と思っていたのですが、聞いていると、シェーバーの洗浄のしかたからモーターや刃の材質違いまで 、かなり詳しい。
外国製でもオランダのフィリップスは国産とあんまり変わらない、とか。
こ、これはかなりのこだわりだな…!と思っていると、
おもむろに靴を見せてくれて、
「この靴もこの間の大雨で濡れたから買い替えようと思ったんだけど、市内には売ってねえんさー」
と靴のこだわりについても話し始めたのです。
見れば、かなり高級そうな革靴。
「それはどこの靴なんですかー?」
と聞くと、
「イヴ・サンローラン」
との答えが。
こ、これは…。
このじっちゃんは…。
洒落者だ!!!
聞けば、若い頃は帽子から靴まで、全部イヴ・サンローランで固めていたそうな(^^;
タバコもイヴ・サンローランだったとか。
イヴ・サンローランのタバコなんて見たことないけど、あるのだそうです。
ちゃんと黒いタバコに金文字でロゴが入ってるんだって。
若い頃は商社マンとして、いろんな会社からヘッドハンティングされて、最後は経営者にもなって、月収150万だったそうな。
で、高級クラブに行くのに、ブランドで固めていくのとそうでないのとでは、ホステスの態度が全然違うと。
「アフターが違うんだいねー。店終わって寿司食いに連れてくけど、ママも若い子もみんなついてくるし。で、ママは帰るけど、女の子だけ残してくんさ、朝までごゆっくり、ってなるんさねー」
とのこと。
すげえなあ。
バブリーだなぁ…。
と、ひたすらホウホウうなすきながら聞いてました(^^;
まさか、こんな田舎のじっちゃんに、こんな羽振りのいい過去があったとは…。
お年寄りに対する思い込みがあったなー。
改めよう。
などと思っていたら、
バスが来ました(^^;
そうだった、バス待ってたんでした(笑)
思いがけず、充実のバス待ちでした(^^)
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