No.0244
特別編 『Feels Of Heaven』
Keep running after its form and arrives.
The soul which never dies is revived again by sympathy with you.
When the shadow is piled, can I meet you again?
〜対訳〜
その姿を追い続け、そして辿り着く。
決して朽ちない魂は、お前との共鳴で再び蘇る。
影が重なる時、またお前に逢えるのだろうか。
Diary Serial Special Side Vol.14
Presented By : MARL
(Vol.1 Falling Down)
午前4時前、イースト・パットニー着の地下鉄から降り、実に数時間振りの外の空気を吸う。
どうもこの辺りの空気には馴染めないが、駅から出てすぐのタクシー乗り場で、
私をカモにしようとしているのか、やたらと声をかけてきやがる運転手に、
「だから、乗らねぇっつってんだろ!!」
と、一喝してやると運転手はようやく諦めてくれた。
取り敢えず用を足しに行くも、トイレの個室にはいつまで経っても鍵が開く気配が無い。
仕方なく我慢しながら休憩の出来る場所を探してみる。
(こんな時間から酒かよ、酒乱には気を付けねぇと)
現地のパブにはどうしても足を踏み入れるのに抵抗がある。
私のような顔がそんなに珍しいのか、パブの中の客達は睨み付けてくる。
無事に用を足し、店主に礼を言いかけたその時、
後頭部に何やら刺激的な感覚が……。
◇
午後2時前、影一つ無い天気だがクソ暑い。
太陽が路面を照らし続けて、今にもこっちがケバブのように焼かれそうだ。
先程ぶっ叩いてきやがった輩共、私の何がそんなにイラついたのか知らんが、
次、ぜってぇに二度と立てねぇようにしてやる。
強い刺激を受け続けた後頭部から滴る血、
私の意識は朦朧としてきやがった。
周りの奴等は、そんな私を見て嘲笑ってやがる。
もうどうでもいい、殺せよ。
…
……
………
……随分と長い間気を失っていたような気がするが、
奇跡的に私は目を覚ました。
先程のパブの目の前という事には変わりない。
だが、後頭部を殴られたあの刺激的な感覚はいつの間にか消えていた。
確かに血が滴るほどの強烈な感覚に襲われたのだが、
私の身体には傷一つ付いていない。
陽は沈みかけ、辺り一帯が夕焼けの紅に染まる頃、
私の目の前を大きなバンが走り去っていく。
中の様子は、まるで護送車のように格子が掛かっており見えない。
別に特段気にする事も無かったのだが、
バンを運転していた奴が、先程殴ってきやがったあいつ等の内の一人だった。
私は少ない荷物を持ってバンを追いかけようとしたが、
幸運な事に、そのバンは近くのガソリンスタンドに停車した。
残り少ないガソリン補給の為に立ち寄ったのでは無く、どうやら用を足しに。
用を足すなら、さっきのパブで良かったんじゃねぇか、と思うも、
私が先にトイレに入っちまったもんだから、
いきなりキレて殴りにかかってきたのか? いや、でも随分と時間も経っているし、
それ以上は深くは考えずにしておくか。
バンの中には結構な人数が乗っていたらしく、あいつ等は交代でトイレに駆け込んだ。
で、そのまま発車するのかと思いきや、
後部座席の一人の下っ端っぽい奴が、何やら中の連中ともめている。
そして、もめていた最後の一人がバンから降りてくる。
まさかの女の子。
ああいった連中とは不釣り合いの10代にしか見えない女の子だ。
ただ、その子の身体には腰縄が付けられ、
まるで囚人のように、両手は手錠で繋がれているし、手錠は腰縄で固定されている。
更に逃げないように両足に足錠で繋がれ、
首には何かのセンサー付き(多分、逃亡防止)の首輪までしてある。
私は奴等に見つからないように事の成り行きを見守っていた。
すると、その子は奴等に何かを言ったのか、
奴等はその子をぶっ叩くわけでも無く、何かを耳元で囁いている。
耳元で囁かれたその子は、何かに怯えるような表情に変わり、
突然、繋がれた両手をわなわなと震わせたかと思うと、
次の瞬間には激しく痛がっているではないか。
別に何かをされたわけでも無いのに、
自由の効かない両手を優しく自分で擦って落ち着かせている。
遠目からではよく分からなかったが、
その子の上着の下に着ているパーカーから僅かに覗く両手、
白の長めの袖のように見えたが、よく拘束服のような感じのものでは無く、
手の出せない、袖口が完全密封してあるサイズの大きい服のように見えた。
バンはその子を乗せて走り去っていった。
私はとりあえず最寄りの駅まで向かい、そこから本当は乗りたくなかったタクシーを捕まえた。
行き先からすると、あいつ等は西へと向かった筈。
タクシーは、私の指定通り西へ向けて走り出した。
【本編後記】
何だか旅行コラムみたいな序幕になったが、
もう既にこの夢の伏線は張っておいた。
敢えてすぐに気付く仕掛けにしておいたが、
“この夢の本当の結末”に気付くまでには、過去の連載史上最も時間を要する。
to be continued……
(特別編 『Feels Of Heaven』(Vol.2 Sharp Knife)へ続く。)
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