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2016年06月21日11:57

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お題37『夜』 タイトル『千の夜を越えて』

 花は妖艶な香りを残し、鳥を惑わす。
 色をつけ惑わされた鳥は感じたままに飛び、思いを風に乗せて私の元へ届けるだろう。
 花鳥風月、四季の移り変わりをあるがまま美しく表現する言葉だ。今の私には存在しないものばかりで、自由に表現できる姉が羨ましく、あなたの存在に思わず嫉妬してしまう。
 あなたと出会わなければ、叶わぬ夢を見ることもなかった。
あなたの存在を知らなければ、眠れぬ夜を過ごすこともなかった。
 姉とあなたがいるだけで、私は一人取り残されたような孤独感を覚えてしまう。それがたまらなく怖い。あなたを一人占めできるのは月に一度しかないからだ。
 私の願いはたった一つ。
 あなたといる時間をただ彼女より長く共有したい、それだけなのに――。
 でも、成就しないことはわかっている。感情が追いついていないだけで、あなたが愛しているのは姉だともわかっている。
 それでも私は千の夜を越えて、あなたに伝えたい思いができた。決してこの先、望んだ未来がこなくても、あなたを思い続けるだろう。
 あなたがいるという証は私の瞳に刻まれているのだから――。

 一の夜を越えて、あなたの存在を知り、十の夜を越えてあなたの暖かさと姉の呪縛を知った。
 百の夜を越えて、この思いが恋だと知り、千の夜を越えてあなたに伝えたい思いが生まれた。
 だけど万の夜を越えて、あなたに伝える方法がないことを知り、億の夜を越えて、この恋は叶わないことを知ってしまった。
 思いを伝えることもできず、私は今、兆の夜を迎えあなたと姉の関係に嫉妬している。私には何も与えてくれないのに、彼女には鮮やかな花も、素晴らしい鳥も、柔らかい大気も、生き物を育む水も、美しい季節、全て与えているのだから。
 それでも私はこの思いを忘れない。成就するために次の夜を迎える覚悟だってある。
 京(けい)の夜を越えれば、きっと、あなたと一つになれることを願って――。






mumeiさんの企画に貼らせて頂きました。
他の夜の作品(一文から原稿用紙5枚までのショートショートです)もよろしくお願いします。

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タイトルへ→http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1952136676&owner_id=64521149
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