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2017年10月13日02:40

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母親の嘘の結末

30代女性が胃がんになった。



がんは全身に転移しており余命は1年



彼女には中学生の息子がいて



シングルマザーだった。





治療を始める時に



彼女は、僕に


『先生、もし私に何かあっても息子には絶対病気の事を黙っていて下さい。』



そう懇願された。







でもね


僕は否定的だった。



10歳を越えた患者本人や家族には

経験上、絶対告知すべきだと常に思っている。





がんという

患者にとっての巨大な壁には





皆で立ち向かわなくては、


その人の色々な事があって


色々な人と出会った最高の人生が


がんの恐怖に蝕まれ



もがき、苦しみ
悲劇に変わってしまうのを知っているから……









そうは言っても
死ぬことを告げられた10代は






どうなると思います?







まず

泣き叫ぶよ。

病棟に響き渡るほど。



強い子は泣かなくても


全身の毛穴から汗を出して
震えてる子もいた。


相当な恐怖だったんだろう。





でも

どうしようもないんだ。





主治医としての無力感を痛感する。






逆に告知しなかったらどうなると思う?









子供達は必ず大人を信用しなくなるんだ。





徐々に悪くなる体調。


大人達は自分を、騙している



そこから始まる


治療拒否





家族を信用出来ず罵詈雑言。


家族は治療したいけど、本人は全力で拒否。







その溝はとてもとても大きくて





家族関係が崩壊してしまう。


仲良かった家族もバラッバラ




患者本人は家族に殺されると思ってる事もある。






なので、僕は患者本人が10歳を越えていたら


僕が悪者になってでも、ちゃんと説明をする。








たとえ父親と母親が

『あの子は絶対受け止められない。絶対に希望を失わせないで下さい。』

と頼んできても……




必ず本人には説明する。






その先の絶望を僕は知ってるし……



家族の大切さを理解してるから……







では今回の様に
もし患者本人が家族への説明を拒否されたら……





僕は何も出来ないんだ。





患者本人が言わないでと言った事を僕は出来ないから。






そして
息子は母親の実家に引き取られた。





母親はまず、病院で元夫を呼び出した。




そして

自分が死ぬこと。
息子の親権の事を話した。


僕は患者に頼まれ、元夫に病状を説明した。


母親は強かったが、やはり元夫の前では声を出して泣いてしまった。


誰かに頼りたかったのだろう。



人間は皆、弱いから。
彼女だけじゃない。






その後も

時は、誰にでも等しく無情に過ぎていく。





彼女の病状はとても進行していた。





そんな中




最愛の息子がグレてしまった。






息子『お母さんは、辛くても入院すればいいけど。僕は転校になって両親もいないし逃げられない。いいねお母さんは。』




そう吐き捨てた。






息子の辛さは分かるけど



死に際の母親には酷だった。






それから息子は来なくなった。




あと残り少ない時間を1番大切にしている息子に拒絶される日々




想像を絶する苦痛であったと思う。




彼女は僕に言った。




母親『全部先生の言う通りだった。本当に後悔してます。今なら正直に言えたのにな。』




彼女は痩せ細った体で大粒の涙と嗚咽をこぼした。






僕は悔しかった。




家族の最期がこんな姿であって欲しくない。





僕は、本人に告知の了承をとった。



そして
息子に告知




息子『は?え、嘘。そんないきなり言われても知らんですよ。ってか何で黙ってたん?自分の事ばっかり考えやがって……』




僕は悲しい気持ちになったが




それでも彼に説得した。
彼女に会ってほしかったから……






僕は腫瘍内科医




がんの患者さんと家族を
同じ方向に向かせるのも……


がんの治療と同等に大切な事だと思ってるので



何とか納めて説得して、明日来て貰える様に約束した。





しかし無情にも

その夜に彼女は急変してしまった。





僕は息子に急いで連絡した。
話が出来なくてもせめて最期の言葉を言って欲しかった。



世界で1番君を愛してくれた人への最期の言葉。





でなきゃ一生後悔する。










でもね




間に合わなかった。








心拍数がドンドン落ちて


ストン


モニターの数字はずっと0で


心電図波形はAsystole(ピーーの画面)






彼は、病室に着くと泣き叫んだ。





ただひたすら


お母さん、お母さん



そう叫んでいた。





彼はこの十字架を一生背負っていく。





僕の仕事は腫瘍内科医。





がんの患者が亡くなる瞬間を最高にプロデュースするのが僕の仕事




それは、家族を失った人に前を向かせるために……



最高にハッピーな人生の最期の瞬間のお手伝い。





分かってたんだけど


やっぱり


辛かった。
悔しかった。




でもね。
何とか




僕『君もお母さんも悪くないんだよ。』




その一言だけ伝えて、僕は病室を出た。



彼の人生が前を向けたらいいな。



やっぱり若い人のがんは感情移入すると辛い。

そう言い訳して、こっそり泣いた。





僕は涙腺が緩いから、まだ腫瘍内科医としてはまだまだ未熟だけど。




毎日の様に僕は出会い別れる。


僕の出会った患者の90%は死んでいく。




でもいいの




僕はこの仕事に誇りを持っている。



そして




僕は告知するよ。



相手が未成年でも、辛くても



家族が一つになれるなら、僕は悪者で構わない。








■今もトラウマ!?「あなたは橋の下から拾ってきた子どもなのよ」
(ママスタジアム - 10月12日 20:52)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=176&from=diary&id=4809966
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