ども
しがない腫瘍内科医です。
がん患者の仕事に関しての実際はどの様なものかを書きたいと思います。
一般的には、ガン患者は
1,手術で治癒切除出来る人
2,治癒切除できない人
に別れます。
なので,僕の日記を以前から読んでる方はご存知と思いますが、治療の考え方が根本的に違います。
治癒切除出来る方。
または抗がん剤などで縮小して治癒切除が目指せる方。
の治療目的は根治です。
つまり、いかに治療がきつくても、患者が副作用で苦しんでも治療の手は余程の事がない限り緩めません。
治ってしまえば良い思い出になるからです。
では各論です。
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肺癌は手術となった場合は範囲にもよりますが肺が無くなった分、呼吸リハビリが必要となります。
大体、呼吸器外科医はその人の肺予備能を計算して手術を行います。
根本的には、術前検査で1ヶ月、周術期は1ヶ月程度を考えます。
デスクワークならまだしもガテン系は厳しくなります。
ステージにより術後抗がん剤の内服が始まります。
なので1年近くはガン治療で拘束されます。
術後抗がん剤の目的はなんでしたか？
そうですね。
治癒が目的なので
不要な減量はしません。
もちろん仕事がー
と言えば、治す確率を上げる事と仕事を天秤にかけて
患者さんに選んでもらいます。
次に切除不能進行肺癌の場合
組織型により治療が大きく左右されます。
肺小細胞癌
教科書的には限局型はーとか書いてますが
進行が早いので
ほとんどは進展型です。
プラチナベースのケモを行います。
日本人のエビデンスはIPなので、シスプラチンが入りますから大量補液(ハイドレーション)により腎臓に毒素が貯まらない様にしないといけません。
なので、入院必至です。
3週間に1回5日間以上の入院があります。
CPT-11は約半数の方が禿げます。
個人によりますが
ほぼ仕事出来ない人が多いです。
次に
非小細胞肺癌
中村獅童の肺腺癌
や
肺扁平上皮癌
などが入ります。
肺腺癌は、遺伝子変異で特効薬があるので検査の結果を待ちます。
陽性であれば特効薬の間は下痢とか気を付ければ全然働けると思います。
僕はexon19delはアファチニブを使います。
その他exon20変異があれば耐性型なのでAZD9291を使います。
ALK転座に関してはアレクチニブ一択です。
遺伝子検査ひっかからなければ
PD-L1を測定し高ければ噂のペンブロリズマブを使います。
何もなければ、普通の抗がん剤です。
肺腺癌でEGFR遺伝子変異陽性の人、ALK転座陽性の人位しかまともに働ける人はいないと思います。
それでもおよそ10ヶ月程度です。
その後ガンが進行してくれば原則働けるとは思わない方が良いです。
これ以上の詳細書くと他のガン書けなくなるのでまた今度
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切除可能食道がん
術前化学療法があります。DCFです。めちゃくちゃキツイけどガンがかなり小さくなります。
3コースなので9週間抗がん剤して手術になります。
手術終わっても色々大変なので2ｰ3ヶ月はまともに働けないと思います。
術後化学療法は
食道がんの手術はかなり大手術なので、体力を相当持ってかれます。
PSがかなり低下するので上手く出来ないとのエビデンスから現在はされません。
切除不能進行食道がん
そもそも飯が食えません。
ガンで喉がつかえます。
なので局所治療目的に放射線を当てる事があります。
日本では根治量で当ててくれる放射線科の先生が多いのでエビデンスでは50.4Gyですが60Gy以上当ててくれます。(根治出来ない人に)
体調が良ければ抗がん剤も併用するので2ヶ月以上は入院です。
一応、biDCFとかCOSMOS試験とかやってますけどそこら辺は論文になるまでは何とも言えません。
まぁガン全般に言えることですが、ほとんどの医者がガン治療をちゃんと理解できてないので困りものです。
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切除可能胃癌
胃癌はまず手術で術後に抗がん剤をします。
術後抗がん剤は副作用にもよりますが半年ｰ1年で
ACTS-GC試験とCLASSIC試験からS-1単剤かXELOX療法が選択されます。
まあ、S-1は内服なのでやり易いですがXELOXの方が効果が良い場合もあります。
進行胃癌
手術出来なければ、出血との戦いです。
胃癌は胃潰瘍がベースにあるようなもんなので出血性貧血とかご飯食べれるかとか色々考えます。
病理検査でハーセプチンが使えるかまず検査します。
使えても使えなくてもファーストラインは経口フッ化ピリミジン(S-1かゼローダ)＋プラチナ製剤(シスプラチンかオキザリプラチン)なので抗がん剤の副作用は変わりません。
ハーセプチン併用の場合は3週間サイクル、併用出来ない場合は5週間サイクルです。
ぶっちゃけ進行胃癌は化学療法始まると何が起こるか分からないので仕事は難しいと思います。(病気の進行もかなり早いため)
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切除可能大腸がん
切除して下さい。術後FOLFOXします。2週サイクルです。
お仕事出来ます。
切除不能進行大腸がん
治療の目的を検討します。根本的には大腸がんは手術出来る人は根治が目指せなくても手術で切る。
が原則なので、手術出来ない理由があります。
そのため、強い治療でガンを叩く
サイトリダクションという治療方針が取られます。
原則は遺伝子変異で治療が変わりますが
最近では右側の大腸がんと左側の大腸がんで治療が変わるという恐ろしい時代になってきてます。
RASの遺伝子変異だけでなくRAFの遺伝子変異も見るようですがRAFの検査は保険適応ではないので国立がんセンターといった限られた施設でのみ測定され治療に活かされる事があります。
RAFがあれば進行が早いのでFOLFOXIRI＋Bevavizumabですね。(エビデンスは70歳未満でPSがよく、UGT1A1という抗がん剤を解毒する肝臓の酵素が弱い遺伝子の多型が無いこと)
大腸がんは、腫瘍内科医の腕の見せ所で治らないガンの人でも平均3年、長い人で10年生きる人もいます。
抗がん剤の使い方や医者の知識だけで寿命が大分異なります。
ここまで考えて抗がん剤してるのは大学病院とか本物の学会とかバリバリ発表してる様な医者だけです。
地域の町医者じゃ、ぶっちゃけ無理だと思います。
次は乳癌とか書こうと思いましたが疲れたのでまた今度。
乳癌とかは前書いた日記とか読んで下さい。
その他の癌腫も暇かったら書きます。
※医療相談は無視します。病院行って下さい。
ただ、行ってる先の医者のレベルは保証しかねますが…
その他
そこら辺の頭悪そうな、医者でもない一般人のいかがわしいサプリメントとかに騙されないで下さいね。
すぐ医者がーとか言い出す患者嫌いです。
そんな人はビジネスドライに対応されて損するだけですよ。
僕らも人間なので遜択します。(´・c_・`)
でわでわ
■がん患者「働かなければいいんだ」 大西議員が発言謝罪
(朝日新聞デジタル - 05月22日 15:12)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=4583858
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