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2016年08月27日10:01

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コラボ小説「犬玉」第六章その8

BN
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 DDD団部長、サトウタカシの試作型戦闘機「DONDONアント」に乗っていた仁真刃は、職務を全うし、ピンクガールによって破壊された機体から脱出していた。

「あとは、壱貫はんが何とかしてくれるダス」

 未来の時代より幾分若い姿だが、その男が桜壱貫であることは、サトウの指示がなくても分かっていた。
 御堂から託された神器「ブロウ」を彼に渡す、そのための時間を自分は充分に稼ぐことが出来た。

 真刃は脱出ポッドから早々に逃れ、空を飛び交い殺戮を続ける無人機「イースター」の集団に目を向けた。
 無差別に生物の寿命を終わらせる姿は、未来で見た光景と変わらない…しかし、ここは自分達がいる時代、自分が生まれ育った街、頃賀市なのだ。
 かつて魔王が復活した際も、街は不良の手によって蹂躙されていたが、今はそれとは比較にならない規模で多くの命が奪われている。

 真刃は、移動用かんじき「ギアバーン」を足に装着し、150キロを超える体重のハンデを無にする移動速度を駆使しながら、自身の属するオカルト研究部の仲間、佐島胡桃の姿を捜し求めていた。

 衝突音と爆発が入り混じる耳障りな音が鼓膜を刺激した。

「あっちダスか」

 無人機の攻撃をやり過ごしながら、戦争の音源を辿ると、そこに見知った姿…そして、自身が捜し求めていた人物が横たわっていた。

「クミン様!!それに会長はんダスか!!」

 血を流し倒れる胡桃を介抱している、会夢中の生徒会長、再胡の姿を発見した。
 一瞬、未来の嫌な思い出が頭をよぎった。
 凶弾に倒れ、血を流し天に昇って行った聖母の姿。
 青い顔で仰向けに倒れる胡桃の姿は、正に未来で見た聖母の最後の姿と同じだった。

「クミン様!!」

 真刃の存在に気付いた再胡が、胡桃を見て狼狽し、たるんだ顎を震わせる彼に冷静な声を送った。

「……心配いらん。急所は外れている。処置と止血は済ませた。あとは医者の仕事だが、とりあえず命に別状はない」

 真刃は安堵の息を漏らしたが、直後に響いた破壊音が彼の微かな平和を現実に戻した。

「だ、誰か戦ってるんダスか!?」

 再胡は前を見るよう顎を向けた。

「一国君だ」

「何ダスって!?」

 蒼き弓を構えた少年が、栗色の髪を揺らし、紫の鎧を纏った黒髪の女と死闘を繰り広げている。
 群雄割拠…ほぼ互角の戦力は、周囲の無機物を塵と化しながら、激突の手を緩めない。
 真刃は何が起きているのか理解できなかった。
 剛造が鎧を纏い戦う姿…そして、一方で戦っている相手が、彼の知っている人間だったからだ。

「クミン様の友達の睦月はんダス!な、なんで彼女とゴウはんが戦ってるんダス!!」

 真刃の知る将棋部副部長、睦月桂子でなく、ホームホルダーの高官、パープルマムだという説明を受け、真刃は二度驚くが、彼は剛造の鎧を改めて見て3度目の驚きを発した。

 戦う少年…一国剛造が纏っている鎧は彼がよく知るものと同じだったからだ。

「あ、あれは…アテナ様のファジーダス!!ま…まさか、あの時ファジーが向かった新たな主というのは」

 真刃は未来でなゆちゃん王国を発つ時のことを思い出した。
 光と共に消え、時代を越え、新たな主を求め旅立っていった跳躍能力を有した神の器「ファジー」
 飛び立ったファジーが向かった先が、まさか現代の…それも剛造の元だったとは意外だった。

 事情を聞いた再胡は、微かに口元を緩めた。

「なるほど…アテナの聖闘士(セイント)か」    
 
 剛造は近接戦に特化したパープルマムの一撃を避け、中距離で勝負を仕掛けていた。
 剣は有しているが、剣の能力は向こうの方が上だということを、猫の耳を介し脳にささやく神器の声が教えてくれていた。
 
【ゴウ!あれは私の力と同じ、私の力を元に作られたものよ!けど、あの女の鎧、武器は、中・遠距離を無視して、近接戦のみを重視した仕様になってる!!】

「チャンバラじゃ勝ち目はないと言いたいんじゃろう!!そんなもん百も承知じゃい!!」

 傍らで見ていた真刃、そして再胡は互いの戦力差を分析していた。
 パープルマムの攻撃方法は剣に集中した至って単調なものだが、攻撃力は剛造のファジーより幾分上手だ。
 光速遠距離射撃や多数戦闘、それに空中戦に特化したファジーはそれらの攻撃を回避しているが、一撃でも受ければ危うい。

 蝶の舞いに対し、蜂の一撃…決め手に欠けたファジーの力と、一撃でも受ければ致命打となるマムの四神器『クオン』の激突。
 蝶の羽がもがれれば終わる…フライ級とヘビー級の戦いの行く末は火を見るより明らかだった。

「真刃くん、だったな。彼女を頼む、あのままでは援護せねば危うい」  

 再胡は傍らに落ちていたライフルを拾い、剛造の援護に向かおうとした。
 街の一角、破壊された建物の中に混じった一つの青いポリバケツから光が放たれたのは同じタイミングだった。

「何だ!?」

 再胡と真刃が目を向けると、蓋が外れたポリバケツから、緑の光と共に一人の人間が射出された。
 戦乱の世界に解き放たれた一人の人間は、その手に結晶体を握りしめると、解放と同時に一つの言葉を叫び、光の粒子に包まれ戦士へと変貌を遂げた。

『ガイアァァァァァ!!!』

  

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