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2016年01月10日12:53

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小腸粘膜とグルタミン

 ここ数日、難病と寄生虫の関連やその駆除の仕方について、瓜生先生からお聞きした情報などまとめてみましたが、現行医療の方からも、膵臓がんや大腸がんを虫下しによって治癒できる可能性が浮上してきたことはとても興味深いシンクロニシティでした……。

 この流れのなかで断食や少食をしばらく続けた後、通常食に戻る際に時々起こる身体ショック……甲田式から離脱するときにイワシ一匹で激しい自己免疫疾患を引き起こしてしまわれた瓜生先生の経験談や、コメントを寄せて下さった華ちゃんが、デトックス後に食べた鮎の塩焼きで苦しい思いをしたことなどを鑑み、また、バクテリアトランスロケーションの日記でも少し触れた内容を深めてみたいと思います。

 例えば足に怪我をしたとき、ムリに歩かずに、しばらく静養し、怪我が快復してきてから運動を再開するのがよいのですが、そろそろ歩いた方がよいという時期になってもまだゴロゴロしていたら、足の筋肉が萎えてしまい、足腰の強さが弱まってしまいます。それと同じように、腸粘膜もまた、日常的に多様な食べ物を消化することで鍛えられている側面がありますから、調子の悪い時は食べ物を控え休ませてあげることは必要なのだけれど、それがあまりに長期にわたると、足が萎えるように、腸粘膜そのものが萎縮退行してしまうということを覚えておく必要はあります。

 腸内がクリーンになってゆくということが、そのままイコール腸粘膜細胞の強化ではないことだけは、知っておいた方がよいと思います。クリーンになればなるほど腸粘膜は敏感になり、デリケートで傷つきやすくなりますから、消化吸収できる食べ物の内容がどんどん制限され、徐々に仙人食っぽくなってゆく傾向があります……一方、腸粘膜が強化されるにしたがって、消化吸収できる食べ物のレンジが広がりますから、世間のなかをたくましく生きるバイタリティ食へと繋がってゆく傾向があるようです。

 通常、腸の環境を考えるときには、まっさきに浮かぶのは乳酸菌などの腸内微生物のことだと思いますが、言ってみれば腸内微生物というのは、田んぼに棲んでいるカエルやタニシのようなものであって、田んぼそのもではありません。ここで田んぼそのものに該当するのが腸粘膜細胞ですから、腸環境を考える上では、この二層構造でとらえてゆく必要があるのですが、なかなか土台としての腸粘膜細胞そのものを視野に入れる習慣がないので忘れられがちです。

 では、少し長くなりますが、備忘録も兼ねて、栄養の消化吸収の窓口となる
小腸上皮粘膜(無数の絨毛が生えている)のエネルギー源であるグルタミンに関する最新情報をアップします。


       「グルタミン(準必須アミノ酸)と小腸粘膜細胞」


 アミノ酸の一種であるグルタミン(グルタミン酸とは違います)は、非必須アミノ酸なのですが、近年の研究によってその重要性が理解されるにつれ、今は準必須アミノ酸という位置づけになってきています。

 グルタミンは骨格筋のなかに遊離しているアミノ酸のなかで一番量が多いのですが、これまでは量が多いのだから足りているのだろうという理解だったのが、生理活性上不足しては不都合が発生するので常に予備力を確保している……つまりカルシウムが骨に備蓄されたり、鉄がフェリチンというかたちで備蓄されているように、グルタミンは骨格筋に非常時にそなえ備蓄されているのだという理解に変わってきたのです。

 また近年の研究によって解明されてきたグルタミンの多様な働きのなかで一番注目すべきなのは、「このグルタミンが、栄養の吸収窓口である小腸上皮粘膜の第一エネルギー源となっている」という新しい知見です。つまり、脳細胞がブドウ糖をエネルギー源とするように、小腸粘膜細胞はグルタミンを主たるエネルギー源としており、グルタミンが補給されないと、腸の粘膜細胞は働けなくなってしまうのです。

 胃腸の働きを活発化するものとしては、適切な運動、腸内微生物環境を整える乳酸菌や食物繊維の摂取、ストレスの解除(ストレス下では交感神経優位となり副交感神経の働きが鈍るので、胃腸の働きも低下する)、などは知られていますが、そもそも小腸が適切に活動するためになによりも第一にエネルギー源としてのグルタミンを必要としているという視点が1970〜1980年代以前の栄養学ではまったく欠如していたのです。

 大病を患ったり、怪我をしたり、ストレスが重なったりして、グルタミンの体内需要が高まってくると――グルタミンは小腸上皮粘膜だけでなく、肝臓や腎臓を初めとする重要な臓器の活性、修復に関与しています――生体は骨格筋に貯蓄してあったグルタミンを放出します。そしてその放出されたグルタミンが小腸の活動源として使われ、また、小腸上皮周辺の免疫細胞の賦活化を行ってゆくような仕組みになっているのです。とりわけ胸腺免疫に対する腸管免疫というシステムが明になってくるにつれ、そのバリアー機能を維持するためにグルタミンはきわめて重要な栄養素ということになってきます。

 ですから病気や怪我などで体内のグルタミン需要が高まっているときに、グルタミンを充分に摂取することにより、骨格筋からのグルタミン放出を抑え、骨格筋の崩壊プロセスに歯止めをかけ、そうすることで激やせすることを防げるだけでなく、免疫低下による感染症の罹患率を下げることができることもわかってきました。

 またグルタミンは、ビタミンAなどと相まって粘膜細胞が分泌する抗体IgAをつくりだすことによっても免疫バリアー機能に役立っています。病気、怪我、精神的ストレスなどによって胃や腸などの活動性が下がり、食欲不振に陥ると、自然に小腸粘膜は萎縮を起こしてゆきます。

 断食をされた経験のある方はよくご存知だと思いますが、腸粘膜は使わないとたちまち萎縮、退行してゆきます……そして萎縮退行した腸粘膜は食べた栄養物を正しい仕方で処理できず、本来ならば体内に侵入するはずのない有害な成分(アミノ酸にまで分解されきっていないタンパク質の破片、あるいわバクテリアなど)が侵入し、免疫システムのかく乱が生じて、激しいアレルギー性ショックを起こし、場合によっては死に至ることさえあります。断食は始めるときよりも、終えるときの方がむずかしいと言われているのはこの小腸粘膜萎縮によるバリアー機能の退行破綻のためです。
 
 これは重い病態のために口から栄養物を吸収できない状態になっている方にとっても同様です、点滴のかたちで栄養補給を続ける場合にも、小腸上皮粘膜は断食状態に近い状態に置かれますから、腸の粘膜細胞の萎縮を起こし、免疫バリアー機能が低下してゆきます。なので本来ならば点滴のなかに、十分量のグルタミン補給をしておくことは患者の体力回復と免疫力の維持のためにとても重要なポイントになってくるのですが、まだ医療現場ではグルタミンの重要性が充分に理解されてはいないようです。

 今後、小腸のパワー不足=栄養吸収能の低下、小腸粘膜の萎縮・活動低下、腸管免疫低下時には、グルタミンを補給するという方法があるということを頭の隅に置いておいていただけると嬉しいです。 では、もう少し、詳しくグルタミンの働きをみてゆきましょう。


        『胃や腸の再生を促す消化管の栄養源グルタミン』

 以下、『アミノ酸の科学』(講談社)第四章:医療を変える力 “胃や腸の再生を促す消化管の栄養源グルタミン”の章からの抜粋です。

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 グルタミンは、骨格筋の遊離アミノ酸の約6割りを占め、人間の体内でもっとも量の多いアミノ酸です。しかし、その生体内で果たす機能はよくわかっていませんでした。 近年、多くの研究によって、病気になったときにはグルタミンの必要性が高まることが明らかになり、準必須アミノ酸として位置づけられるようになっています。

 たとえば外科手術を受けると、筋肉中の遊離グルタミンの量は大幅に減少します。これは第二章で述べたように肉体的なストレスがかかるとグルタミンの利用が亢進するためですが、このときグルタミンを摂ると、筋タンパク質の分解を抑制することができます。

 また、グルタミンは腸の栄養源となっていることもわかっています。腸管には栄養を効果的に吸収するために微細絨毛という突起がたくさんありますが、この絨毛の栄養源がグルタミンなのです。腸管の粘膜では細胞分裂が非常に激しく行われていて、古くなった微絨毛はどんどんはがれて、その下から新しい微絨毛が押し上がってきます。しかし抗がん剤などを投与した場合などに、上の絨毛がはがれたあと、新しい絨毛ができなくなるため栄養吸収ができず、下痢をしたり栄養状態が悪くなったりします。そこにグルタミンを投与すると、微絨毛が再構築されるのです。

 手術をしたり、抗がん薬を投与したり、さらに細菌に感染したりすると、腸管が萎縮し、腸の機能が大幅に低下します。このような状態のとき、筋肉から遊離したグルタミンが腸管の絨毛に吸収され、萎縮した腸管が再生しているのです。最近の研究で、外科手術などのあとには、骨格筋に蓄えられていたグルタミンが腸管に吸収され、腸管の修復やエネルギー源として利用され、腸管から生体内へのバクテリアの侵入を抑えるなど、きわめて重要な働きをしていることが明らかになっています。また、グルタミンを投与することにより、胃潰瘍の進行が抑えられることもわかりました。

 先に説明した「成分栄養剤」にはさまざまなアミノ酸が含まれていますが、腸管機能の改善を図るために、グルタミンの含有量がもっとも多くなっています。またグルタミンは、消化器粘膜の上皮をつくる糖タンパク質の生成を促すことが明らかになっていて、胃炎、胃・12指腸潰瘍の治療薬の主成分として用いられます。

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 上記コメント1に「これは第二章で述べたように肉体的なストレスがかかるとグルタミンの利用が亢進するためです」という記述がありますので、『『アミノ酸の科学』(講談社)第二章:スポーツの最前線がかわった、の該当箇所も引用しておきます。


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 グルタミンには先に紹介した分岐鎖アミノ酸同様、エネルギー源になるとともに、筋肉損傷の防止と筋力増強の効果があります。負荷の大きい運動をするなどして肉体的なストレスがかかると、体内でグルタミンの利用が亢進します。つまり筋タンパク質の分解が活発になり、筋肉中からグルタミンが放出されるのですが、このときグルタミンを補ってやると、筋タンパク質の分解は避けることができます。

 グルタミンは免疫系にも深く関与しています。免疫細胞の発育と増殖を促進させる作用があり、グルタミンを摂取していると、風邪などの感染症にかかりにくいというデータがあります。

 マラソン選手や、一流の長距離ランナーが大切な試合のあとに風邪を引くことがしばしばありますが、これは免疫能の低下と関連があります。軽い運動は免疫能を高めますが、過度のトレーニングや、マラソン、激しいスプリントは、血中グルタミン値を低下させ、疲労の原因となるのです。また、感染や怪我に対する免疫系の正常な反応を阻害することになります。

 マラソンなどの過酷なレースのあと、選手の約80パーセントはなんらかの不調を訴えますが、グルタミンを摂取していると、不調を訴える率が顕著に低下するというデータがあります。オックスフォード大学のL・M・キャステルらは、150人以上のマラソンランナーを対象に、二重盲検法で次のような研究をしました。

 レース完走後とその二時間後に五グラムのグルタミンを投与したグループと、ジャガイモなどのデンプンを加工した水溶性の食物繊維、デキストリンのプラセボ(偽薬)を投与したグループの、一週間後の風邪など感染症の発症率を調べたのです。その結果、プラセボ群では半数になんらかの感染症の発症が認められましたが、グルタミンを投与したグループでは感染症の発症率が二割以下にまで抑えられました。

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              グルタミン研究の歴史

 グルタミン研究の幕開けは、1950年代に遡ります。ヘンリー・イーゲルという研究者が小腸上皮粘膜の組織培養の実験を行っている際、細胞のエネルギー源としていくらブドウ糖を加えてもうまくゆかないことから、試行錯誤をくり返し、グルタミンが有効であることに気づきます……

 しかしこの重要な発見は当時の臨床医学や栄養学の注目を引かず、グルタミン研究には、それから20年のギャプが生じることになります。

 そしてようやく1970年代になって、アメリカ国立衛生研究所(INF)が、小腸の第1エネルギー源はブドウ糖ではなく、グルタミンであることを確認します。

 1980年代に入ると、生体がダメージを受けグルタミンを必要とすると、骨格筋は筋肉細胞を壊してまでグルタミンを産生し、必要とされる腸管、免疫細胞、肝臓、腎臓などに供給するという仕組みが解明されてゆきます。
 
 動物実験では、過剰なストレス下におかれた動物の骨格筋からは大量のアミノ酸が放出され、その1/3がグルタミンであること、しかも、そのグルタミンは筋肉中に遊離しているグルタミンばかりではなく、積極的に骨格筋を壊し、その成分であるアミノ酸を新たにグルタミンに組み替えてまで供給してくるということまでもがわかってきました。

 からだというのは必要な場合には、筋肉を溶かしてまでもグルタミンをつくりだして供給しようとする……それほどまでにグルタミンは重要な栄養素であるということをしっかり理解しておきましょう。

 こうした知見が医学の臨床現場に生かされているかどうかということになると、残念ながらまだまだだといえます。

 グルタミンは、医薬品として、胃や十二指腸潰瘍の治療薬、胃炎治療薬、健胃消化剤成分、総合アミノ酸製剤などにいかされている面もありますが、ドクターが、重体の患者さんのQOL確保のためにグルタミンがとても重要な働きをすることをしっかり理解してくださり、臨床応用してくださるケースはまだまだ少ないのが現状です。

 少なくとも口からものを食べられなくなってしまった重症の患者の方の腸管環境と腸管免疫バリアーをグルタミン投与によって少しでも保護維持し、筋肉から過剰なグルタミンが放出されることをふせぐことで、患者さんがガリガリにやせてしまわれるといったような事態をなんとか回避していただけるとうれしいのですが……。


            グルタミンに関する付加情報 その1

 ここでは栄養素別コメント:グルタミンというテーマでの書き込みですので、腸粘膜バリアー機構とアレルギー症状の関連について、また、衰弱した腸管の隙間から体内に有害なバクテリアが流入する「バクテリア・トランスローケーション」などについて詳しくは書き込みませんが、小腸という臓器は、栄養吸収の窓口として働いているだけでなく、免疫の第一線でもとても重要な働きをしているということをしっかり押さえておきましょう。

 断食や手術などによる絶食といった極端な場合だけでなく、長期にわたる小食傾向というのは、食べ物による刺激を受けなくなった小腸上皮粘膜の萎縮退行をもたらし、粘膜を乾燥させ、栄養吸収の力を鈍らせるだけでなく、腸管免疫の機能までも退行させてゆく傾向があるのだということ……ひいてはそれがアレルギー体質や、原因不明の感染症的不調などを引き起こしている可能性があることを理解しておいてください。

 そして小腸粘膜を強化してゆくためには、グルタミンはもちろんなのですが、ビタミンAによる働きが重要であることも心に留めておいてください。ビタミンAに関しての詳しい解説は、栄養素別コメント:ビタミンAという項目を設けてそちらでおこなってゆきますが、ビタミンAは、粘膜の萎縮や角化防止にもっとも重要な栄養素です。角化というのは、たとえば皮膚表面にタコや魚の目ができるような良質の細胞異常のことです。粘膜においても、ビタミンAの不足は粘膜の硬化、萎縮の原因となります。

 グルタミンとビタミンAをしっかり摂取してゆくことが、小腸粘膜細胞の修復や改善に大きな力を発揮し、それが免疫力の向上にもつながり、ひいてはなかなか治らなかったアトピーなどのアレルギー体質を軽減し、治癒にもつながる可能性があることをこの仕組みから理解していただけるとありがたいです。

          
           グルタミンに関する付加情報 その2

 下痢の場合、多くの電解質が失われます……。グルタミンを補給すると、腸管粘膜におけるNaCl(塩分)の処理が高まり、その結果、腸管よりの水分吸収が促進して、症状が軽減されることがあります。

 頭痛、生理痛などでアスピリンなどの非ステロイド系消炎剤を連用すると、上部消化管に出血、潰瘍などの異常が起こる場合があります。アスピリンなどを摂取する1時間半ほど前にグルタミン1gを服用することで、こうした副作用が抑えられることが知られています。

 炎症性腸疾患(IBM)とは腸管粘膜の潰瘍や炎症、感染を伴う病態です。イギリスやカナダでこれらの患者にグルタミンを含む液体栄養を投与したところ、2週間以内に多くの患者の下痢が止まり、腹痛が改善し、最終的にはふつうの食事が採れるころこにまで回復したと伝えられています。

 グルタミンには、自己免疫疾患の過剰免疫を抑制する効果があることも知られています。こうした疾患においては、炎症を引き寄せるサイトカインの過剰分泌が背景にあることが確認されています。インターフェロンとかインターロイキンなどといったサイトカインが炎症部位から分泌され、免疫細胞を引き寄せるのですが、これが適正範囲を超えて過剰になると、いわば泥沼状態に陥ったゲリラ戦のように、免疫細胞が終結のめどがたたない戦いに巻き込まれてゆきます。過剰なサイトカインがあると、必要とされる基礎エネルギーが高まりながら食欲が落ちてゆき、そこに運動不足などまでもが重なり合って、悪循環に入ってしまいます。グルタミンには、過剰なサイトカインを抑制する働きが確認されている他、自己免疫疾患時に投与されるプレドニンによる副作用=筋肉量の低下とそれに伴う疲労感に効果的に作用します……。


            グルタミンに関する付加情報 その3

 精神・神経疾患とグルタミン:グルタミンは、血液中にも筋肉中にも最も多く存在している遊離アミノ酸ですが、これは脳脊髄液中においても同様です。グルタミンは、大脳皮質の神経伝達物質(グルタミン酸とγ-アミノ酪酸(GABA)の前駆物質です。

 神経系にグルタミンが大量に遊離しているのは、グルタミン酸とGABAの予備貯蔵プールだと考えてもいいでしょう。

 これまでの実験では、脳血管障害の後遺症としての抑うつ、注意力・知力・記憶力の低下といった軽度の症状を訴える患者さんたちにグルタミンを投与して、その脳波パターンを測定したところ、グルタミンを摂取した人たちの電気的エネルギー分布は正常に近く改善されていたという報告があります。

 少量のグルタミン投与の研究成果をふまえ、最近では、病気をもたない健全な人への20g~60gの高濃度単位のグルタミン補給が試みられているようですが、それにより神経伝達物質のアンバランスが引き起こされ、昏睡や発作などの急性症状が発生することはなく、この程度のレベルの量での毒性はまったく報告されていません。 ちなみに、ぼくたちが用いているグルタミンは、3g/1袋のものです。


           グルタミンを安易に使ってはいけないケース

 グルタミンには、他のアミノ酸と違い、ひとつの分子のなかに二つの窒素をもっているところから窒素シャトルと呼ばれています。アミノ酸には窒素を含むアミノ基とカルボキシル基を両腕のようにもっていますが、アミノ基は通常ひとつですから、窒素もひとつです。

 アミノ基はNH2ですが、それが少し変化するとアンモニアNH3になります。体内でアミノ酸が使用され、役目を果たすと、このアンモニアが発生してきますが、アンモニアは猛毒なために、肝臓のオルニチン回路と呼ばれるプロセスを通して無害な尿素窒素に変換され、体外に排出されます。このアンモニアの解毒プロセスにはグルタミンも深く関与するのですが、煩瑣になるのでここでは説明を省略します。

 ただひとつ注意しないといけないのは、肝臓のこのアンモニア分解回路が肝臓障害のために極度に低下しているひとは、グルタミンの使用を控えなければならないケースがあるということです。同じ理由で、尿素を排出する臓器のひとつである腎臓に障害がある方の場合もグルタミンは控える必要があります。

 とはいえ、肝臓や腎臓に深刻な問題を抱えてらっしゃらない方の場合は、グルタミンが小腸粘膜や免疫維持にとってとても大切な働きをすることをまず第一に記憶しておいていただければと思います。食欲不振や下痢などで口から食べる食べ物の量が減ってくるとき、そういうときでもグルタミンを補給することが体力の維持にとってとても大切であるということです。梅雨から夏場に向かい、暑さで食欲不振に陥るときなどもちょっとグルタミンを補うことで消化能力を高めることができます。

 食欲不振時には無理に食べ物を詰め込まず、胃腸を休めるというのは基本的には間違いでないのですが、それが長期に及んだりすると、腸粘膜の萎縮や劣化を招来して、ますます栄養が末端に届かなくなる、そしてからだは筋肉を溶かしてまで、必要なグルタミンを腸に届け粘膜を再生させようとする、、、そのために筋肉がそげてますます体力が低下してゆくというメカニズムを知れば、断食や絶食、静脈からの栄養点滴、長期にわたる小食などにひそむ盲点についてしっかり学習したことになります。

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 併せて、下記の関連日記も参照ください……

  免疫増強栄養法(イムノ・ニュートリション)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1090529943&owner_id=64170

  小腸上皮細胞の第一エネルギー源がグルタミんであること、もし腸管などでのグルタミンが不足する場合には、骨格筋にプールしてあるグルタミンを大量放出してまで不足分を補おうとするシステムがからだにあることが発見されたのは、まだここ20年ばかりのことですから、お医者さんでもご存知ないかたが多いようです。

 タニシ(腸内善玉細菌)のサポートばかりではなく、これからは畑である腸管粘膜そものものの再生にも目を向けてゆく必要があるようです。

 下痢にも様々な理由があると思いますが、感染症や膵臓機能低下による消化液不足、胆嚢機能低下による胆汁不足などでない場合、経験上、約20g/dayのグルタミン補給で、下痢が収まるケースが多いようです。 (高齢者の場合は、膵アミラーゼや膵リパーゼの血中濃度を計り、膵臓の消化力が落ちていないかどうかチェックするといいです)

 ビタミンAについては、また日を改めて書きたいことが山ほどあるのですが、皮膚や粘膜の異常角化防止・改善には必須の栄養素となってきます。

 またアスピリン系の鎮痛剤やプレドニンなどの消炎剤を連用する場合に起こる消化器粘膜の炎症や潰瘍などの副作用と押さえる為には、通常の粘膜保護剤を摂取するよりも、グルタミンとビタミンAを食前に摂取し、食後に薬を摂るようにする方が安全であり、効果的だと言われています。

 
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