mixiユーザー(id:6400308)

2018年08月06日22:15

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九月、東京の路上で

 ザ・スズナリで燐光群「九月、東京の路上で」を観劇。関東大震災での朝鮮人虐殺を追ったノンフィクションの舞台化。燐光群は直近に起きた出来事を演劇に組み込むジャーナリズム的視点のある劇団なので、これはぴったり。
 演劇なのでストーリーが必要で、千歳烏山のオリンピック対策委員会が、烏山神社の13本の椎の木を再建しようとする話から始まる。これは烏山で殺された13人の朝鮮人を悼んで植えられたものと伝えられ、オリンピックに向けて国際親善のためのもの。
 ところが調べてみると、ここで殺された朝鮮人は1人。椎の木は朝鮮人を殺して逮捕された日本人の労をねぎらうために植えられたものらしい。ここから委員会メンバーは、虐殺を調べ始める。
 当時の警察ナンバー2の正力松太郎も、朝鮮人暴動を信じてしまい、鎮圧の号令を出してしまう。すぐに誤報と分かるが、曖昧な軌道修正しかやらず、虐殺を止められない。知らなかったことは、軍や警察がこの機に乗じて安い賃金で働く中国人や、労働運動をしている人たちを計画的に殺害したこと。私の以前の職場付近で、軍による虐殺があったことに驚く。
 恐ろしかったのは、震災の被害が少なかった北関東や千葉での虐殺。これは普段から抑圧されている人々が、より弱い人々に鬱屈をぶつけたとしている。
 映画好きとしては、千駄ヶ谷の若き演劇青年が、朝鮮人集団を迎え撃つべく出かけるが、自分が朝鮮人と間違われて殺されそうになる。青年は自戒をこめて千駄ヶ谷のコリアン、千田是也と名乗る挿話や、少年時代の黒澤明が、自分の落書きを大人たちが朝鮮人が毒をまいた印と取るのに唖然とするエピソードなど興味深い。
 現役自衛官が野党政治家に暴言を浴びせた事件が、少しアレンジして描かれる。これが当時と現代を繋ぐ。最後に委員会メンバーと野党政治家を襲う恐怖。1923年のジェノサイド都市東京と、ヘイトスピーチやレイシスト政治家が堂々発言する今の東京が、地続きであることを見せたことに意義がある。

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