「四畳半神話体系」「有頂天家族」、そして映画『夜は短し歩けよ乙女』など、相次いで映像化・映画化が進む森見登美彦。その同名著作を映画化した『ペンギン・ハイウェイ』を見て来ました。
【物語】
研究熱心な小学４年生・アオヤマ君（声：北香那）の暮らす街に、突然ペンギンの群れが現れては消えるという珍事が起こる。さっそくこの事件を調べ始めたアオヤマ君は、知り合いの歯科医院のお姉さん（声：蒼井優）がほうり投げたコーラの缶が、目の前でペンギンに変身するのを目撃。お姉さんから、「この謎をといてごらん」と言われ、クラスメートとともに調査を進めるが…。
…驚くべきことに、この映画はシネマスコープ・サイズで作られています。
ディズニー・ピクサーの作品を除くと、長編アニメーションでシネマスコープ・サイズで撮られたのは『新劇場版ヱヴァ：Ｑ』以来。作画に手間がかかるし、構図にも工夫がいる長編アニメでシネマスコープというのは異例中の異例で、ただし得られるパノラマ的効果は映画館の巨大スクリーンに何よりも映えるものです。
それを、長編映画初挑戦の新人監督（石田裕康）がやってのけた。しかもその効果は、クライマックスのスペクタクル・シーンで存分に発揮されています。
面白いのは効果だけではありません。
最近の映画で見かけなかった、年上のお姉さん（しかも巨乳）への憧れあり、ボーイ・ミーツ・ガールの甘酸っぱさあり、ＳＦ的スケールの冒険譚あり、それらがうまく溶け込んで一本に収束され、クライマックスを迎えるのです。
物語の面白さは原作小説によるところも大きいと推測されますが（未読です）、この題材を１本の映画にまとめ上げるには腕が要ります。それをこの監督とまだ新しいスタジオで仕上げた、その勇気に感服し、映画の面白さに敬意を表するものです。
ＳＦ的設定のいくつかには不満もあります。でも、そんなことは問題ではありません。
★★★★。おそらく『未来のミライ』に不満を持った理由の答えが、この映画にあります。
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