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2016年12月23日13:05

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先日のプーチン来日が茶番だったと実感する、2つのBSドキュメンタリー。

2016年12月5日から、NHKが4夜連続で放送したBSドキュメンタリーは、直後に来日したプーチン大統領のイベントが“茶番”でありパフォーマンスだと実感させてくれました。シリーズの名前“ソ連崩壊から25年/プーチン大統領来日”というネーミングがまさにぴったり。録画したまま見ていなかった2つのドキュメンタリー(NHKはそれぞれ50分枠で放送)を見ました。

まずは「ソビエト連邦のコマーシャル王」(12月5日放送)です。これは原題を「The Gold Spinners」(2013)といい、フィンランドの会社が世界配給権を持っているようです。本来の上映時間は74分。ソ連時代、政府の依頼でニュースを作っていたオヤマー氏は、プロパガンダ映画を作ったことからCMの可能性に目をつけます。そしてテレビが普及したブレジネフ時代に、政府が流すCMを制作しはじめます。

自由主義社会におけるテレビCMは、会社が作った製品を視聴者に知らせ、購入意欲を高めるというのが目的です。しかしソ連の場合、CMして視聴者に知らせても、製品が行きわたらない。そもそも消費物の製造量が少なすぎて、物資が不足しているわけです。なのに政府は、架空のCMを流すことで、ソ連国内の暮らしはこんなにも高度である、と宣伝しようとした。

ソ連時代、いろんな生活用品が不足していることは耳にしていました。ソ連へ行った人の話だと、入国管理などで書類に記入するよう命じられても鉛筆などが置いていない。しかたなく手持ちのボールペンで記入したら、担当官がそのペンを貸せと取り上げ、書類をチェックしたあと返してくれないというのが日常茶飯事だったそうです。だからソ連によく行く人は、安いボールペンを大量に持って行ったとか。

なのに、オヤマー氏は電化製品のCMを作り、それをテレビ局がじゃんじゃん流したそうです。ソ連はGNPの7割を軍事費に割いていたから、国民の生活など2の次3の次だったらしい。テレビは国民向けにCMを流すのではなく、それを見る外国人に目標を定めていたわけですね。驚いたことに、そのCMでは女性のヌードなどもOKだったそうです。

そして12月8日に放送したのが「ユーラ ごみ捨て場の少女」です。これは今日(23日)の午後5時から再放送があるようなので、間に合う方はぜひご覧ください。原題は「Something Better to Come」(2014)といい、上映時間は1時間38分あります。だからNHKで放送したものは半分程度。←もしかしたら、ネット上にフルサイズの映像がアップされているかもしれませんので(「ソビエト連邦のコマーシャル王」も同様)、探して見てください。

こちらはモスクワ郊外にある巨大なごみ埋め立て場が舞台。アパートを立ち退かされて住む家がなくなったユーラ(10歳)と両親は、ゴミ捨て場で生活して生き延びます。しかしほどなく父親が亡くなり、ユーラは成長する。16歳の時、知り合った青年と恋仲になり妊娠、出産しますが赤ん坊を育てることができず病院を逃走。20歳を過ぎて、古い知り合いから“アパート手続きの書類が届いている”と連絡があり、やっとホームレス状態を免れる、という話です。

原題の“Something Better to Come”という言葉が痛切です。うまく日本語に翻訳できないけど、“もっと良くなってほしい”という気持ちが切実に伝わります。←Something Better to Comeをグーグル翻訳にかけると“是非是非是非”となりました。これはマジに“名訳”だと思います。

10歳のユーラは、自分でも言ってますが実に可愛い。美人です。16歳の彼女を、周囲の男どもがほっておくわけがない。そして妊娠、出産。母親はユーラを、“考えが足りない”と叱責します。終盤、アパートに入って人並みの生活を始めたユーラたちを見ていると、なんとか心が休まります。ユーラが母親そっくりに太ってくるあたりが不満ですけど。

とはいえ、冒頭にあったように、撮影しているハンナ・ポラック監督が、倒れて死にかけているホームレスの人を病院に運んでも、病院が受け付けないそうです。その事態に直面して泣き崩れるハンナに、ホームレスたちは“あんたに迷惑をかけるから、倒れても病院に運ぶな”と言ったらしい。そんなホームレスの人々が口にする“私たちも同じ人間なんだ”と言う言葉が、実に虚しい。

もしかしたらホームレスになった人々には、彼らの責任による失策もあったのでしょう。しかしそういう問題ではないことは、ちょっと考えたらわかる。今、生活保護の予算などがどんどん削られていますが、一方で政治家たちの年金を増額する動きがある。そして、無益なテレビCMを作っていたオヤマー氏は、一代で財を成しているわけです。

そんな状況にありながら、日本の首脳との約束時間をわざと破って、表面的な政治駆け引きを行う独裁者がいます。その独裁者におもねって、自分たちの利益を引きだそうとする日本の政治家たちがいる。そういう人に、ぜひこの2本のドキュメンタリーを見てもらいたいものだと感じました。もちろん、やつらは自分の利益以外のことには関心ないから、見るはずがありませんけど。
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