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2016年08月23日23:11

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知らなければ良かったよ!





世の中のことを森羅万象ことごとく知っていないと気が済まないという人は、いるものである。そういう人に言いたい!知らないほうが幸せってこともあるのだと。

私はフランス語を習ったことは一度もないし、今さらその気力もないが、若い女性が話すと確かに美しい言葉だと思う。まして愛をテーマにした歌などにおいておや!

マルティーニの「愛の喜び」(原題:Plaisir D'Amor)など聴くと、意味は全然わからなくても、この上もなく甘く切なくロマンチックで、引き込まれるような魅力を感ずるところがある。

ところが、歌詞の邦訳を読んでみたら、意味がわからなく「ても」ではなく、意味がわからない「からこそ」魅せられたのだと気付いてしまった。愛の喜びはいっときのもの、その苦しみはずっと続く、などという内容だったのである。さらには、自分につれなくなった恋人に対する恨み辛みを延々と歌っている。まあ気持ちはわかるけど、かけがえのないパートナー同士として、将来の夢を語り合うような歌詞だと思っていた私は、つくづく知らなければ良かったと思ったのだった。

期待を裏切るのはフランス人ばかりでなく、ドイツ人も同じである。

ドイツ民謡に「狩人が角笛を吹いて」(原題:Es blies ein Jäger wohl in sein Horn)というのがある。私はまだCDなどというものがない時分、ヴェルニゲローデ少年少女合唱団のLPレコードでこれを聴いて、若々しく健康的で、統制が取れた中にも過度に技巧的でない歌声がすっかり気に入ってしまった。とりわけハミングなどは、夏の高原を時折さあっと渡る一陣の風のような爽やかさだ。

ところがこれも歌詞の邦訳を読まなければ良かった口であった。鹿に姿を変えた美しい少女を、狩人の若者が狙う、なかなか捕まらない鹿こと少女を、狩人は犬をけしかけて追い詰め、ついに射止める、それで少女は狩人の妻になる、というストーリーだったのだ。まるでストーカーではないか!清純でキビキビとした少年少女合唱団が歌う内容にはそぐわないような気がする。私はいささかがっかりした。そもそも結婚相手を「射止める」などという発想が、日本国憲法の両性平等の精神にもとる!ああいや、これはドイツ民謡だから、日本国憲法は関係ないか…。

人生という航路の途上で、針路を定めるのに迷うことは誰にもある。すなわち進学、就職、結婚、転職等々に際して決断を迫られる時である。このような決断については、うまくできたもので、大方の場合それが重要であるほど、後日あの時別の選択をしていたらどうなっていたか?と考えたところで、本当のところはわからないのが普通である。これは実に幸いなことで、仮に別の選択をした場合のその後の成り行きが正確にシミュレートされたりしたら、堪ったものではないだろう。なぜか近年ことさらにそんな迷いが頭に浮かんできて往生するが、そのたびに、いやいや総合的にどっちが良かったかわからないよ、と自分に言い聞かせる私なのである。
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