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2018年04月16日14:27

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難民支援カフェの夜


 今年2月19日の夜、ミュンヘンの劇場「カマーシュピーレ」の舞台に、テーブルとベンチが置かれ、シリアなどからの難民とドイツ人が交流する「ウエルカム・カフェ」が開かれた。これはミュンヘンの難民支援団体が、毎月開いているもの。難民、ミュンヘン市民など誰でも参加することができ、ボランティアたちがコーヒーやスープを提供する。ミュンヘンには、アフガニスタン、シリア、ナイジェリアなどからやってきた約8000人の難民が住んでいる。彼らはドイツ軍や米軍の兵営だった建物などに寝泊まりしている。難民たちはここに来れば、同胞たちと情報交換をしたり、市役所が提供している様々な難民支援事業について情報を仕入れたりすることができる。
 この日は、カマーシュピーレのドイツ人俳優と、シリアから逃げてきた俳優たちが、共同で計画している前衛演劇プロジェクトについて、アラビア語とドイツ語で紹介。キャンピングカーのような移動式の舞台を作り、難民滞在施設など市内のあちこちで上演する。シリア人俳優たちが、亡命の途中で体験した出来事も、劇中に織り込まれる予定。また、ミュンヘンの米国人やドイツ人、日本人が参加する国際合唱団が、英語、ドイツ語、アラビア語のコーラスを披露。アラビア語の合唱の後には、シリア人の聴衆たちの間からひときわ大きな拍手が上がった。
 会場には、難民が自分の体験や将来への不安を赤裸々に語る、ドイツ語の新聞も置かれていた。ドイツ人の編集者たちは巻頭言で、「難民たちが自分たちの考えを表現できる場を与えたい」と語っている。
 ドイツでは2015年9月にメルケル首相がシリアなどからの難民約90万人を例外的に受け入れて以来、市民の間で難民の増加についての不安や、政府の対応に対する不満が強まっている。去年9月の連邦議会選挙では、難民受け入れに批判的な極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が一挙に第三党の地位にのし上がり、初の連邦議会入りを果たした。AfDは、人種差別的な発言を堂々と行う、排外主義者たちの集まりだ。
 だが難民支援カフェのような催しに参加すると、ドイツ人の中には難民たちのために一肌脱ごうと考えている人々もいることがわかる。劇場の外では冷たい雪が降っていたが、劇場の中には、戦後ドイツの特徴だった人道主義が残っていた。
(熊谷 徹 ミュンヘン在住)ホームページ http://www.tkumagai.de
 


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