昨年6月に亡くなった元沖縄県知事の大田昌秀さん(享年92歳)が晩年に綴(つづ)った数百枚の直筆原稿が、那覇市の県立博物館・美術館で展示されている。著書の前書きや寄稿文などで、病に伏せる直前まで書き続けたものだ。手書きの文字には、渾身(こんしん)の力で「沖縄」を伝えようとした思いが込められている。24日まで。
「全国で沖縄ほど憲法と縁のない所は、どこにもないけど、沖縄ほど憲法を大事にする所もありません」
黒ペンで綴られた原稿は、投票権を得たばかりの若者に向けて2016年に出版された書籍に寄せたものだ。政府による名護市辺野古への米軍普天間飛行場移設の強行などを挙げ、将来への懸念を伝えている。
自身が体験し、生涯研究を続けた沖縄戦に関する原稿も残されている。14年に出版された著書の前書きの草稿とみられる。
「自らと同じ過ち、同じ苦難を味わわせてはならない、と機会ある毎(ごと)に戦争体験を語り続けてきた」
続く一文を、原稿用紙の余白ぎりぎりまで使って、こう挿入している。
「そのことこそが、戦争から生き延びた余生を生きる意味だからである」
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