mixiユーザー(id:5376428)

2018年05月16日17:26

82 view

「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」

「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」 '15 (米) 監督・脚本:ダニエル・レイム


50年代から活躍するストーリーボード・アーティスト(絵コンテ作家)
ハロルド・マイケルソンと
遅れて60年代からリサーチャーとして活躍することになる
その妻リリアン・マイケルソンに取材したドキュメンタリー。

映画の絵コンテはもちろん知っているし
広く資料を集め作品を考証面で支えるリサーチャーの仕事も知っていたけれど、
彼らの仕事が披露される毎に
え!これも?
うそ!あれも? と
有名監督の有名作品のあのシーンこのシーンが
ハロルドが脚本を読んで描いた絵コンテそのままであることに驚嘆するのだった。

ハロルドは
マンガ家が監督・脚本・撮影・美術・編集を一手にやってしまうのと同じことを
脚本部分を除いてやっているわけで、
彼の画面構成や進行を
監督がそのまま採用しているのだ!
「十戒」も「鳥」も「ウェストサイド物語」も「ローズマリーの赤ちゃん」も
「スタートレック」も「屋根の上のバイオリン弾き」も…!!

絵心のない監督から画像のイメージを聴いて
絵コンテに起こしていくわけじゃないのか!
ということにまず驚き、
モーゼが海を割るシーン…
逃げる小学生たちを鳥が襲うシーン…
Mrs.ロビンソンの脚の間からベンの立ち姿が覗くシーン…
屋根の上のバイオリン弾きのタイトルが出るシーン…
あれもこれも
ハロルドの描いた絵コンテそのままであることに驚く!

リサーチャーの仕事については
スコセッシの「沈黙」のドキュメンタリーでその膨大な資料集めに腰を抜かしたが
リリアンは自分名義のライブラリーを設立し
集められた資料を管理、活用できるよう整えた。
何か調べたければ
彼女に尋ねれば完璧に調べてくれる―
そういう仕事で映画製作を支えた。

孤児院育ちの少女が親友の兄に見初められ
第二次大戦で絵の才能を見出された男は帰還後ハリウッドに出て
絵で身を立てようとし
結婚を反対され駆け落ちして結ばれて
食うや食わずの貧乏生活の中で自閉症の長男を授かり
映画の仕事で順調に生活ができるようになり…
という夫婦の物語が
アメリカンなイラスト(マンガ)で語られ

離婚のメッカハリウッドで60年になんなんとする時間を
おしどり夫婦として生きた珍しいカップルとして
夫婦の物語も語られていて
二人の仕事の顕彰と
ある夫婦の物語と
二本立て構造のドキュメンタリーなのだ。

「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」で
オランダ人銀行マンフランズ・アフマンの存在と仕事を知り
プロデューサーの仕事に目からうろこだったけれども、
映画の仕事というのは
ほんとうにすそ野が広く
思惟太なんかの知らない仕事をしている人たちが山のようにいる
そういうところなんだなぁ…と
あらためて思ったのだった。

彼らの映画への貢献はハリウッドでは知らぬものがないのだが
上記の有名作品のほとんどに
二人の名前はクレジットされていないそうだ。

映画好き必見のドキュメンタリーである。
良作。
4 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する