mixiユーザー(id:525191)

2017年11月24日08:54

1089 view

ユダヤ130〜今日の米国ユダヤ人の経済力(続き)

●今日の米国ユダヤ人の経済力(続き)

 20世紀は、映画の時代の始まりであった。アメリカの映画産業の多くは、ユダヤ人に組織された。20世紀初頭、多数の映画製作会社が設立されたが、やがて8大会社に統合された。そのうち、ユニバーサル、20世紀フォックス、パラマウント、ワーナー・ブラザーズ、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー、コロンビアの6社は、事実上ユダヤ人が設立したものだった。
 映画のプロデューサー、ディレクターにもユダヤ人が多い。ジョージ・ワシントン大学の政治学助教授ロバート・リクターの調査結果によると、1965年から82年の間に大手映画会社の中で働いていたプロデューサー、ディレクターの62%が、ユダヤ教を宗教とする家庭で、ユダヤ人として育てられた人物だった。
 映画は娯楽の手段であるとともに、情報を広める手段でもある。映画の内容には、映画会社の所有者や製作者のメッセージと価値観が込められている。ハリウッドは、大衆に手軽な娯楽を提供しつつ、娯楽を通じて見る者に、彼らの思想を吹き込んでもいる。映画は、アメリカ=ユダヤ文化の世界的な宣伝・普及に一役買ってきたと言えるだろう。
 次に、生活用品に話を移そう。アメリカの大規模製造業は、伝統的にWASPが支配してきた。また、アメリカでは、国際石油資本はアラブ産油国との友好を重んじ、ユダヤ人を雇用から排除し続けてきた。そうした中で、小規模な製造業や流通業は、ユダヤ人が進出できる分野だった。
 化粧品業界は、小資本のユダヤ移民の企業家が成功し得る産業だった。レブロン社、ヘレナ・ルビンシュタイン社、マックス・ファクター社、エスティ・ローダー社等は、ユダヤ人が創業者主である。世界最大の蒸留酒メーカーのシーグラム社は、ユダヤ人が創業したカナダの酒造メーカーである。アメリカの禁酒法時代に、カナダで酒造することで莫大な富を形成した。バービー人形で有名な世界的玩具会社のマテル社は、ユダヤ人が設立した。ユダヤ人は、百貨店や通信販売などで流通にも才能を発揮してきたが、大量小売業でも、ホームデポ、トイザラス等を生み出している。
 20世紀後半は、情報革命の時代となった。情報革命は、18世紀の産業革命以上に、人間の生活・文化・社会を大きく変えた。コンピュータの動作原理を考案した「コンピュータの父」ジョン・フォン・ノイマン博士は、ユダヤ人だった。ノイマンは第2次世界大戦のさなか、新しい計算システムをプログラムした近代コンピュータのひな形を開発した。また、サイバネティクスの創始者ノーバート・ウィーナーも、ユダヤ人だった。ウィーナーは通信工学と制御工学の総合の他、ロボティクスやオートメーションなどでも画期的な研究を行った。
 1990年代から、アメリカにおけるユダヤ人の最新事業は、情報通信産業に集中している。ビル・クリントン政権では、シリコンバレーを中心とした情報通信産業によって、世界を巻き込む情報革命構想が作られた。副大統領アル・ゴアの情報スーパーハイウェイ構想は、それに乗っかったものといわれる。
 情報テクノロジーの分野では、基幹OSで世界を席巻するのが、マイクロソフト社である。ビル・ゲイツはユダヤ人ではないが、彼の右腕として同社のCEO(最高経営責任者)を務めたスティーブン・バルマーは、ユダヤ人である。またパソコン・ハードの雄、デル社の創業会長マイケル・デル、ソフトウェア・データベースをリードするオラクル社の創業会長ラリー・エリソンも、ユダヤ人である。情報化社会でもユダヤ系企業は、その中枢を抑えている。
 21世紀は、飢餓の時代になるという予測がある。人口の爆発的な増大、農地を含む自然環境の悪化、肉を中心とした食生活への変化、世界的な経済格差の拡大等が、その原因である。こうした中で、食糧を制する者が世界を制するとさえ、見られている。世界の穀物市場を事実上支配しているのは、五大穀物メジャーである。かつてはカーギル社、ブンゲ社、ルイ・ドレフェス社、コンチネンタル・グレイン社、アンドレ・ガーナック社が五大穀物商社に数えられた。カーギルを除き、すべてユダヤ系資本だった。またすべて同族企業であり、株式も非公開だった。五大穀物メジャーは現在、コンチネンタル・グレイン社、アンドレ・ガーナック社が抜け、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド社(ADM)、グレンコア社が加えられる。そのうち、ADMとカーギルが双璧であり、ともにアメリカに本拠を持つ。現在も、アメリカのユダヤ人が食糧ビジネスの相当部分を握っていると見られる。
 佐藤唯行は、著書『アメリカ・ユダヤ人の経済力』で、ユダヤ人企業家がアメリカで成功した理由を6つ挙げている。
 (1)教育を重視する宗教的・歴史的伝統、(2)中世以来、都市生活で蓄積された商工業の技術、(3)出稼ぎ的意識が少なく永住志向、(4)歴史的に育まれた倹約精神、(5)マージナルマン(周辺人)の視点、(6)祖国なき民が生み出した国際的な同族ネットワークーー――である。
 佐藤は、他の著書でもこの点について書いている。彼の見方の概要を書く。
 古来、ユダヤ教徒にとって無学は最も恥とされた。無学のためにユダヤ教の聖典を読めないことは罪であり、来世では永遠の罰が定められていると信じられてきた。そのため前近代のヨーロッパで、ユダヤ人の識字率は例外的に高かった。識字率の高さは、英語の習得を容易にした。
中世以来、多くのユダヤ人は商工業の中心である都市に暮し、商工業の技術を蓄積してきた。そのことが、20世紀のアメリカで急速に進展した都市化・産業化の流れに、うまく適応することを可能にした。
 ユダヤ人は他の移民と異なり、アメリカで是非とも成功する、という不退転の覚悟を秘めた永住志向の移民だった。そのことがユダヤ移民の企業家を成功に導いた。
 歴史的に贅沢な暮らしから排斥されてきたユダヤ人家庭では、倹約精神が育まれた。倹約精神は、初期の不動産投資や零細な事業を起こす際に大きな助けとなった。
 ユダヤ人は、歴史的に、社会の周辺部から中心部を批判的に観察する姿勢を身に着け、多くの人々が疑わない常識の裏側を見抜く能力を育んだ。このマージナルマンの視点が、ユダヤ人の創造力の源となった。
 祖国を失ったユダヤ人は、国家をあてにすることができなかった。国家の枠組みを超えた同族間の結びつき、世界中に張り巡らされた人的ネットワークを拠り所とするしかなかった。そうした体験から、近代国民国家の枠組みを越え、国際的な視野でビジネス・チャンスをとらえる視点が育まれた。
 こうしたことによって、ユダヤ人企業家はアメリカで成功し得たと、佐藤は説いている。具体的かつ網羅的な優れた分析だと思う。

 次回に続く。

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する