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2015年08月12日15:22

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今月のLC外伝ネタバレ

その身に刻まれた二度の聖戦の記憶。
強く逞しき聖域の礎石、教皇と祭壇星座の物語開幕!

老双子編第1話 揺れる聖域

聖戦から20年前。聖域。
ジャミールにいるハクレイと聖域にいるセージはテレパシーで会話をしていた。
「裏切った?」
「…いえ。まだそうと決まった訳ではありませぬ。ですがザフィリが何の意味もなく聖域を抜けるとは思えませぬ」
「…つまりセージよ…。お前が危惧しておるのは、まさか…」
「ええ。我々の時代の聖戦の悲劇。決して繰り返してはなりませぬ」
「アテナがまだ降臨しておらぬとはいえ、今、天上の魔星たちは輝きを強め始めておる。今内部からの崩壊は決して起こしてはならん」
「既に真相を探るべく黄金を向かわせております。ブルーグラードへ」
雪原に衝撃が走る。黒薔薇が閃光で散った。
蠍座のザフィリと魚座のルゴニスは互いに聖衣をつけて戦っていた。
「止まれ、ザフィリ!聖域に戻れ!そうでなければ私はお前を脱走罪で始末せねばならん!」
「もはや遅い。セージ様は私をお許しにはならんだろう。魚座ルゴニス。毒の血を持つ男よ。お前を、刺客として送ってきているということはな!」
真紅の閃光が煌めく。
『スカーレットニードル…!これを受ければ発狂するほどの激痛が全身を襲う…。ならば…』
「舞えよ、黒薔薇…。我が身を守れ!ピラニアンローズ!」
黒薔薇の陣が閃光を防ぐ。
「!俺のスカーレットニードル全てを弾くとは…。さすが触れる物全て砕く黒薔薇…。だがもはや俺にはお前と遊んでいるヒマはない。これ以上追うならば俺は全力をもってお前を倒す…!」
「…何故だ…!?」
「!?」
「何故、聖戦の迫る今、我々黄金聖闘士同士が争わねばならん?お前は聖闘士の中でも強さと思慮深さを兼ね備えた信頼できる男だ。それがどうして…!?セージ様は私にお前に真意を問えとおっしゃられた。お前を信じているのだ…!私もそうだ…!共に戦い続けた仲間として…!」
「フ…、フフ…、フハハハハ!孤高を常とするお前までもがそのザマとはな…!」
「!?」
「俺が耐えられんのはそのセージ様の…、聖域そのものの甘さよ!次の聖戦は刻一刻と迫っている…。もはや信じる信じないで二の足を踏んでいる場合ではないのだ!」
「大いなる聖戦を前に仲間を信じず何とする…!?」
「ではアテナ様はいつ降臨なさるというのか!?」
「!?」
「アテナ様は赤子の姿で降誕されるという…。ならば成長して我らを率いるまであとどれほどだ?10年待つのか?20年か!?魔星の覚醒をこれほど感じるというのに…!?信じ続けて…待ち続けて全てが手遅れになったらどうするのだ!?それでこの地上は本当に守れるのか!?ならば俺は裏切り者で良い…。この地上を守る為ならば…、アテナ様以外にもハーデスに対抗する神はいるのだからな…!」
「…!ザフィリ…お前、まさか…!」
ザフィリが雪に覆われた石碑の雪をはらう。そこにはポセイドンの三又戟の印が刻まれていた。
「それは…海底神殿への扉…。お前…まさかあの神を…」
「そうだ、海皇ポセイドンよ。彼ならばアテナ様に代わりハーデスに対抗できる…!幸い彼はまだアテナ様の封印によって眠ったまま。ならばその神の力、切り札として我らの手に納めれば良いのだ。この命と引き換えにな…!」
「!だめだ…!それは聖闘士として決して犯してはならん行いよ…!たとえお前が地上の事を思っての事だとしても…、私はお前を全力で止めるしかないか…!聖域の裏切者として…!」
「既に覚悟の上よー!」
ザフィリとルゴニスが激突する。その時、風が渦巻き、黄金の獅子が咆哮した。
「これは…獅子の姿をした闘気。我らの間に割って入るほどの闘気とは…。…まさか」
「くっ…」
獅子座のイリアスが現れた。
「イリアス…!」
「最強・獅子座の英雄…!来たか…!」
「血の匂いがする。争いはここまでだ。ザフィリよ、天地はその血を望んではおらん」
「!…ッ。フ…フ…。フフ…英雄が…、気付いていたとはな…」
ザフィリが膝をつく。その体から血があふれはじめた。
「バカな…ザフィリ…。なんだその傷は…まさか…。お前は…、既に己の身に致死となるスカーレットニードル15発を打ち込んでいたというのか…?」
「当然の覚悟よ…!俺は自分が聖闘士としての禁忌を犯している事を知っている…。アテナ様に背き、聖域を抜け、神をたぶらかす。この命、投げ出さねば贖い切れぬこともな!」
「それを…覚悟というのならば…、ザフィリよ…。その覚悟…何故アテナ様を…、我々を信じる事に向けてくれなかったのだ…!」
「…ッ。その成否はいずれ時が教えてくれよう…。だが俺は皆が一つのものを信じ動かぬ事が恐ろしかった。ならば俺一人が罪を被って地上を救う術ができるならば、この命でいくらでも償おうと思ったのだ…!そうだ…俺は…、俺なりに地上を守りたかったのだ…!」
そうしてザフィリは息絶えた。ルゴニスは彼に触れようとし、躊躇した。
「触れてやらんのか?」
イリアスが言う。
「聖闘士としてザフィリは誤った。…だが、この地上へ懸けた想いは何も変わらずにいたように見えた。それにルゴニス、毒の血を持つお前は、こんな時でもなければ同胞(とも)に触れられまい」
「……ッ」
そしてルゴニスはザフィリの頭を抱きしめた。
「馬鹿者が!何故我々はこんな事で同胞を失わねばならん!?」
その時、声が響いた。
「儚いな…」
天にオーロラが出現する。
「な…何だ、この強大な小宇宙…!まるでこの氷の大地を覆うような…」
「あの双子は何をしていたのやら。聖闘士同士が争い散るなど決して繰り返してはならん。これでは前聖戦の再現ではないか。この水瓶座のクレスト…!500年聖域を見続けた者として見過ごすわけにはいかぬぞ…」
クレストが若い姿で水瓶座の聖衣をまとい、出現した。
「かつての戦友(とも)との誓いの為にもな」
『彼が水瓶座のクレスト…!前々聖戦の生き残り…最古の聖闘士!前聖戦においてもあのセージ様ハクレイ様を影ながら支え続けたという…。あの若い姿…思念波を飛ばして現れたということか…』
「イリアスよ」
イリアスがクレストにひざまずく。
「急な呼びかけに応じてくれて感謝している。もし本当にザフィリが海皇(ポセイドン)を目覚めさせてしまっていれば、私と魚座でもとうてい手には負えぬはずだからな。ザフィリもまた救えれば良かったのだかな…」
クレストが手から氷の結晶を飛ばす。
『これは…何という強烈な凍気。ザフィリの体が今』
ザフィリの体から蠍座の聖衣が離れ、その遺体は氷の棺に覆われた。
『氷の棺に…』
「ザフィリを聖域へ連れて帰り、セージへ教訓を改めよと伝えよ。辛い思いをさせたな。ルゴニス」
「…ッ。お待ちください、クレスト様…!恐れながら先程おっしゃっていた前聖戦の再現とは…、それは一体どういうものか教えていただきたいのです」
「何故だ」
「過去にそのような事があったのなら繰り返さぬためにも。…いや…、それがザフィリの死を無駄にさせぬ事に…、彼の愛した地上を守る事につながりましょうぞ…!」
「あれは一時の悪い夢よ。同じ未来を夢見た仲間がそれが故に巨大な悪の道を歩む。お前達まで見るべきものではない」
「…ですが…」
「だとしたらザフィリはなんとも面白い道を見つけたものですな。これならわしも始めから付き合ってやればよかったですわい」
途中から割り込む思念波があった。
「!」
「お前が関われば、きっとこれ以上にろくな事にならなかったろうな…。祭壇星座のハクレイよ」
出現したハクレイの幻影が笑う。
「その代りザフィリは決して死なせはしませんぞ」
ハクレイがクレストに両手をつき、頭を下げる。
「ですが、此度の事はわしら聖域を預かった双子の責任。あの時の誓い、わしらは決して一時の悪夢とは思っておりませぬ。貴方と、貴方の友である前教皇に立てた誓いも、それらは語り継いでこそ意味のあるものとわしは思うのです。いかがか?」
「それほどいうのなら、おいぼれの私は口をはさむまい。今の聖域はお前たちが作るものよ…」
「ルゴニス、イリアスよ」
ハクレイが言う。
「は!」
「わしはおぬしらを信頼しておる。だからこそ聞いて貰いたい。おぬしらが同じ思いをせぬよう…また次代へそうと伝えるよう。いわばこの話は聖域の影の部分!本来歴史に隠されるべき話だからよ!」
240年前、聖域。
祭壇星座ハクレイ、17歳。
「あの頃はまだ冥王軍との小競り合いはあれど、聖戦本格化前の…少しザワついた時期じゃった。そんな時に一つの不穏な噂が聖域に流れていた。聖域内に冥王軍とつながる裏切り者がいると」
ハクレイは聖域を駆けた。
『噂は噂だと思いたいところだが…。不安の芽は早めに摘むに限る。教皇様の心労もいくらか軽くなろう。! 嗅ぎ慣れたにおいがする。これは…死界の匂い…』
真っ黒なマントに身を包んだ男が人魂をまとわりつかせ立っていた。
「なるほど、お前が冥界とつながっているとかいう逆賊かい?」
「!」
「まずはその正体見せて貰うぞーッ!」
ハクレイの拳がマントを剥ぎとる。
「そうじゃ。思ってもいない者が道を踏み外す。あれはそんな聖戦じゃった」
マントの下から現れたのは、蟹座の聖衣をまとった弟のセージだった。
「セージ!?」
◆聖域の裏切者は自分の弟・セージ!?


作者コメント:帰ってまいりました。気合入れて駆け抜けようと思います。


老双子外伝です。LC外伝はこれで終わりかな?
「ザフィリ」という名はギリシャ語でサファイアのことらしい。しかし聖域の内ゲバは毎度好例だなw

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