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2016年09月30日21:59

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【全バレ】「千の刃濤 桃花染の皇姫」レビュー〜最終回「千桃が『短い』理由(わけ)」

システム編、キャラ編ときて、ついにまとめます。シナリオには言及しないのかって?シナリオがどう見えるかはプレイヤーごとに違うので、わたしはしゃべる気がありません。

気になるのは、「千桃」で検索しようとすると、予測で「短い」って出るところ(笑)。みんな短いと思っているのでしょうね。それが今回まとめで書く話題です。
千桃はなぜ、短いのか?それは
「短く見えるように作ってある」
からです。

(ゲームを進行するうえで重大なバレが後続します。見たくないひとは「戻る」ボタンで画面を戻してください)。






























実は千桃、短くないのです。先の日記で「既読スキップでは止めるの大変なほど『速い』」と書きましたが、その高速スキップですらなかなかシーンを追えないほど、大量のテキストとスクリプトが埋まっています。
そのままだとレビューを書くのに大変なので、まじめにセーブを切り直したら、メインルートだけで60スロット使用、つまりシーンが少なくとも60以上あるわけで、これも書きましたが、やはり過去作の共通→Trueくらいのボリュームがあるように思います。

では、なぜ、千桃は短いと感じてしまうのか?。それは「プレイヤーが短く感じるように作ってある」からです。「感じる」ってところがポイントです。



ヒントは背景です。このゲームはすさまじい数の背景を持っています。今回も学園っぽいものが出てきましたが、いわゆる「学園もの」の舞台としては機能していませんでした。エルザや奏海と合法的に出会うため、または来嶌とからむための背景としてしか使われていません。

そして短いテンポで場転してしまう。街中や学園といった重いシナリオから遠そうな場面から、奉刀会本部や神殿といった「記号として決まった意味を持つ」背景、そして戦闘背景や重い話をするための背景へと、バンバン飛び回る。このスピード感こそが千桃最大の特徴であり、魅力なのではないかと思います。



宮廷にある壊れた呪壁、反則です。デカい(爆)。街のどこからでも見えてしまうデカさ、戦闘シーンで至近距離で裂け目見えてるのおかしいけど、まぁそれはいいとして。
なんの話がはじまったのかといえば、あの壊れた呪壁が見えていると、どうしても過去の戦争を想起させてられてしまうのです、プレイヤーは。そしてシリアスなシーンになる。

歴代皇帝の墓前で、壊れた呪壁が遠くにみえていると、「皇国の過去」「どうにもならない現在」「どうにかしたい未来」って記号になります。ところが、壊れた呪壁が近くにあるはずの皇宮で、壊れた呪壁が見えていないと「現在」の話をしていることになります。皇宮内であっても壊れた呪壁が見えている場合は、やはり過去話ですよね。そしてデカいから、どこからでも背景に差し込める(笑)。

というふうに、本作では、背景がものすごく「しゃべる」んです。この場所にいるときはこうだろう、とプレイヤーが連想しやすい、むしろプレイヤーを誘導するための記号としても、大量の背景が使われているのです。

夜のシーンも多かった。夜はたいがい、主人公が花屋のクルマで悪いことをするときですね(笑)。などと書き出すとキリがない。



「背景に意味をもたせる」
「背景をバンバン切り替えて、スピード感を出す」


これってアニメでやる手法ですよね。アニメっぽいと一番感じたのは、竜胆作戦失敗後の宮廷からの脱出行です。背景がバンバン切り替わり、次々と現れる敵。翡翠帝との別れのシーンでは、叫ぶ古杜音の立ち絵を出さず顔グラのみという演出が細かい。すべてがスピード感重視です。

いままでのエ□ゲであれば、キャラ絵を出して、キャラがしゃべって、と2歩かかっていたところを、お約束な表現はバンバンすっとばして0.5歩くらいでいく。千桃では、プレイヤーが短く感じる要素がふんだんに詰め込まれているのです。



「短く感じるように作ってあるのはわかった。でも何のために?」「アニメか?アニメ化前提か?」いえいえ、それはもう少し待っていてください。ユースティアばりの1本道を見てしまうと、わたしもそういうの感じはしますが、もう少し別の意図があるような気がするのです。

スピード感とか関係なしに、ほんとうに短いキャラ個別ルート(笑)。エンディングを見るとおまけが増えます。そしてキャラ別の回想ページ。
フォト
なんと、本編ではエロイッカイズツ、おまけのために3スロット用意されています。おまけでは攻略キャラごとにネタ1エロ3の4本あって、あきらかに従前より増えています。なんのために?

「個別でやるべきHシーンを、バラしておまけにしてしまった」がわたしの解釈です。「おまけを個別とつないだらちょうどよかったのに」という書き込みをネットでみました。でも誤解です。むしろ逆です。これは意図して、個別から外したと思うんです。一体なんのために?

「ゲームに使う時間を短くする」ためです。
総プレイ時間も、一度に使える連続プレイ時間も短くするため、こうなっているんです。



かつてRPGやアドベンチャーは、プレイ時間が長いほどコスパがよくなる、とされてきました。メーカーは「クリアまで長い時間プレイしてもらうことで、中古に出回るまでの時間を稼ぐことができる」と、大作新作ほど想定プレイ時間が長くなる傾向があったのです。
時は流れて、PCゲーはもちろんゲーム機にすら受難の時代が訪れます。プレイヤーはゲームに時間をかけたくなくなったのです。世の中にはすぐ終わるゲーム、課金で時間を節約できるゲームが溢れています。

そんな時代に発売される、「クリックしてるだけの紙芝居」と言われた、エ□ゲ系アドベンチャー、どうあるべきかと問うているのが、オーガスト最新作「千の波濤、桃花姫の皇姫」というコンテンツだと思うのです。

ほんとうは、オーガストやホビはべつのことを考えていて、この考察はわたしの妄想に過ぎないのかもしれません。でもアニメ的な手法で大量の情報を投げ込んでくる演出、短い個別とおまけ、それを支えるシステムを見るにつけ、そしてこのゲームに深入りしてリピートするほど、「プレイ時間を短くする」という、従来とは真逆の方向へ向かっていると感じてしまうのです。

なんと千桃、今回はWindows版とAndroid版が同発です。デバッグどうするんだろう?と心配になりますが、一方で春の体験版配布の時点でWindows版もうできてたんだろうなぁ、なんて連想も働きます^^;。
他社もやってる「Androidでも動きます」で終わりなのかなぁ?と思ったら、タブレット横置きしたときの専用モードが。タブレットで、ちょっと起動したときにプレイできるように設計、というかそういう想定なのですね。

個別を短くして、おまけを増やして、短い時間でちょっと読めるようにする。DMMならマルチデバイスでセーブ使えるのかなぁ?中華Padほしくなってきましたね!(爆)。



個別が短くなったために、メインルートも高速で飛ばせるようになりました。ユースティアでは「あれ?分岐してたっけ?」と思うほどお当番のキャラ描写に肩入れしてしまい、あちこちへ各駅停車していました。背景も牢獄、下層、上層と分かれていて限られた範囲でしか主人公が動けませんでした。
千桃では上層とか下層とかないので自由に動けます。やばくなったら夜にしたり壊れた呪壁(デカい)を投げ込んできて、くるくる背景が動く→話も動きます。

重いメインストーリーを引きずりながら、個別で強引にHシーンにいくよりは、おまけで別の話にしたほうが軽くなります。今回はそれが良い方向へ作用していると思います。

難点は個別ルートへのリソースを割り当てが減ったことで、メインでのAnother viewのカットインが増えたことでしょうか。今度の課題ですが、それをしてもなおプレイヤーが「短い」といってくれてるなので、今回はセーフ、でしょうか(笑)。Another viewのおかげで、個別ルートが短いのに、「俺の嫁押しキャラが雑に扱われている」って声は、聞こえてこないようですから。



最後にアニメ化の話をば。ユースティアはオーガストでははじめての一本道で「アニメありきだろう」と言われましたが(でもしなかった)、千桃もきっとアニメ化するのでしょう。個別をおまけを切り落とせば、そのままアニメになりそうですね。ちゃんと2クール使ってほしい(悲願)。

でも各キャラが、Another view含めメインルートでも躍動しているので、朱璃エンドありきでも納得できるのかも。そもそも複数ヒロインまったく同じ格を与えているエ□ゲというジャンルが異質なのであって(ハーレムもの除く)、そこからヒロインひとりのストーリーでアニメ化したらどうしても歪んでしまいます。ここでも個別を短くしたことが(あるいはそのために用意した舞台装置が)よい方向へ作用してくれることを期待したいです。



さて、長くなったので、「まとめのまとめ」

千桃の構成、ほんとうに驚きました。ただタブレットの横置きで動くだけでなく、「スマホですぐ終わるゲーム」をするように細切れにしてきました。タブレット両手持ちが便利なシステムを追加しただけではなく、「短い時間で読み終えることができるように」個別もおまけも短くしてきました。

朱璃ルートともいうべき本線は、「いつものオーガスト」。ここにリソースを集中/大量投入していますが、それも長いはずのストーリー/テキストを、高速で読ませるためのしかけでした。ゲームとは、「新品で売ったソフトが中古ででてこないように」なるべく長い間ユーザーに滞留するように作られていたはずなのに、真逆の発想で作られています。

これがオーガストの新しい提案なのでしょう。クリック紙芝居と揶揄されたエ□ゲというアドベンチャーが、スマホとソシャゲ全盛となってしまった今、どうやったら読んで貰えるか、という挑戦。
あっぱれです。短すぎると嘆いているひとたちは、きっと全員、最後まで読んだのです。その時点で大成功しています。

エ□ゲ古参組や八月厨にはものたらない?それでちょうどいいのです。そういう風に作ってある、設計されているのです。
「最後まで読んで欲しい」とつぶやいてるライター/メーカーや、「○話から楽しくなる」なんてしゃべるアニメ制作者は爪の垢を煎じて飲んで欲しいですね:-P。




総合評価☆4つで。歴史の転換点をみているのだとしたら殿堂入りしなくちゃいけないのでしょうけど、それは未来の人が決めること。
わたしには「個別では二千年ロボの設定、放置だったなぁ」というのと、子柚を便利よく使ってしまった(唯一のチビキャラとして、もう少し拾ってあげてほしかった)のが気に障ったので、☆1つ減らしました。

エ□ゲって、どうせ円盤は初動の売上が99%なのでしょう?だとしたら、これからやるひとたちは、あるいはこのレビューで関心をもったひとたちは、DMMのダウンロード版をお薦めします。もしくは、将来出るであろう、vita版を。
わたしは両手持ちでやりたくて、安い中華Padでも動くのかなぁ?(買ってしまいそう)と好奇心ありありですが、vita持ちのひとはvitaでイヤフォン挿してプレイするのにちょうどよく、既に出来上がっていると思うのです。

オーガストの新しい提案/挑戦にふれてみたい、既にvita持っているひとたちには、vita版を待つことをお薦めして、この長文を閉じたいと思います。
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コメント

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