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2016年09月29日05:42

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【全バレ】「千の刃濤 桃花染の皇姫」レビュー〜キャラクター編

常連だけに書いてた話をかいつまむと、思いのほか文字数を喰うものですね(反省)。ここからは千桃のディープな世界と、オーガストがめざす戦略についての考察を、またまた長文で書き記してみたいと思います。

(ゲームを進行するうえで重大なバレが後続します。見たくないひとは「戻る」ボタンで画面を戻してください)。






























〜ストーリー
舞台は二千年続いた皇国。覇権国家である共和国に、皇国はなすすべなく敗れた。元来、皇国は呪壁、三種の神器、武人という三重の防御壁によって守られていたはずが、なぜか空爆と地上軍によって首都天京は制圧されてしまった。呪壁は破壊され、先代皇帝(と回想は言う)は宰相に殺され三種の神器は散逸するなか、皇娘は供とともに都を落ち延びる。

3年後の現在、共和国占領下の皇国で、皇統とは無関係の偽の皇帝が傀儡として即位し宰相の小此木がほぼ実権を握っている。ただし皇国民は共和国の法律で裁かれ、小此木の搾取にあえいでいた。

物語は旧皇国勢力の弱体化をはかる小此木と、皇国の完全消滅をめざす共和国総督が跋扈する天京に、本物の皇姫、宮国朱璃が帰ってきたところからはじまる…。


ユースティア風味というウワサもありますが、「キャラごとに分岐する選択肢が、それぞれひとつしかない」という話だけですよ。まるで個別に入ってしまったような、キャラごとの掘り下げを本流でやる、みたいなユースティアの悪癖は解消しています。黒いつぶつぶは出てきますけどね。

それゆえに、朱璃ルートありきなのか?という不満は残るのかもしれません。なにしろ個別がかなり短いのですから。ただし、本線上にちょっとずつ「そのキャラらしい」見せ場があって、本線上でも楽しめるようになっています。

このレビューではいつも「その設定は、女の子をかわいくするのに、役に立っているの?」と問いかけます。役に立っていれば、客が納得しづらくても◎です。逆にストーリーがたっていても、流れが強引だったりかわいくなっていなければ×です。

さて、「千桃では、この設定、女の子をかわいくするのに役に立っているの?」。結論を先に言ってしまうと、答えは○です。これでいいと思います。いいと思う理由は、別の日記でまとめます。



〜キャラ別紹介
ほんとうはもう少しつっこんだストーリー紹介をする場所なのですが、今回はなにしろキャラが絡まりすぎてて、ほとんど本編にもっていかれてしまった…。そこでキャラ紹介をしながら、ちょいちょいバレしていきます。


鴇田宗仁(ときた そうじん CV:春野風)
このゲームの主人公。本来はプレーヤーの目になって、まさにプレーヤー視点でゲーム進行を見守らなくてはいけない立場だが、そんなことはなかったぜ(爆)。

元々は皇帝に仕える武人。武人とは身体に呪術にまつわる紋章を持ち、呪装刀と超人的身体能力を以て戦う戦士なのだが、巫女である古杜音に「宗仁様の紋章は見たことがない」と早くも俺TSUEEEを指摘される。3年前の共和国軍の戦乱で記憶を失っている。ケガがけっこう早く直る。

実は皇国の皇祖、緋彌之命(ひめのみこと)によって作られた呪装兵器。二千年の時を皇国の安寧を守り続けてきた、三種の神器のひとつミツルギそのもの。動くと呪力が弱まるため、定期的に斎巫女(いつきのみこ)の「研ぎ」が必要。

なんでヒロインじゃなく、主人公の紹介からするの?それはですね、このゲームは主人公が、お兄様や風見雄二のように無双する話だからです。そしてある意味ヒロイン、お兄様や風見雄二のように。ひとそのものの形をした刀、という意味では鑢七花みたいなもんだと思えばいいのかな。刀つかえるけどね。

「千の刃濤、桃花染の皇姫」とは、記憶を亡くした主人公が、宮国朱璃との出会いを通して、自分を取り戻していく話です。おしまい。
本当ならそうなるんだけど…詳細は後述します。


宮国朱璃(みやぐに あかり CV:遙そら)
共和国軍侵攻の戦乱で、伊瀬野に逃れた亡国の姫君。君側の奸小此木を討つために、そして死ぬために3年ぶりに天京へ戻ってきた。小此木を襲った夜、現場で主人公と出会う。重傷をおった朱璃を、主人公は自分の下宿先にかくまうのだが。
緋彌之命の転生先となるべき器。涙を流せず、そのかわりの桃の花びらが舞うのは、緋彌之命と同じ。武人でないのに呪装刀が使える。

体験版部分では、死にたがっていた朱璃に「終戦記念日までに国の再興を考えるように変える」と断じた主人公に、にやりとしたファンも多いはず。Fortune以来よく使う手ですから。
それ以降の朱璃は、ぶれずに凛としてエンディングまで進んでいったように思います。ぶれなかったから、ラストのデウス・エクス・マキナも「まぁアリかな」って思えたのでは。このひとが主人公じゃないのか?そんな感じがします(笑)。別キャラで分岐後、妙にあっさりしてしまうと違和感を感じるのは、きっとそのせいですね。


椎葉古杜音(しいば ことね CV:小鳥居夕花)
二千年続く巫女の家系に生まれた、一族の末裔。うっかりさんで「なんでわたしが(巫女のトップである)斎巫女に選ばれたんだろう」といぶかしんでいる。本来は巫女のトップとして勅神殿に詰めている、はずなのだが、主人公にまつわりついて花屋の手伝いをしたりする。

佳奈すけポジ、そしておっぱい( ゚∀゚)o彡°CGでは設定通りに大きいのに、プレーン(立ち絵)ではそうでもなかったような?(おい)。
でもこのひとのほんとうの魅力は「度胸」じゃないかなって思います。斎巫女の資質について、同僚で神殿のエースである五十鈴と会話するイベがありますが、五十鈴はいくら優等生でも所詮は「官僚」平時の能臣止まりかなという気がするのです。

「宗仁をミツルギと見た場合、本当に必要な呪術は回復ではなく研ぎなのでは?」と気がつくセンス、そして「戦闘中であるにも関わらず、ミツルギが危機に陥っているのも関わらず、研ぎの詠唱を唱えられる」度胸こそが、ミツルギの研ぎを宿命づけられた斎巫女の才覚であり古杜音の魅力だろうと、そんな風に感じました。

とんでもないこと平気でやる子、という先入観のおかげで、共通や日常でもうるさくなりませんでした。ついつい文字を書く手もすべりがちです(意訳:長い)。


鴇田奏海(ときた かなみ CV:猫村ゆき)
武人の家系、鴇田家の娘。自身は武人の紋章をもっておらず武人ではない。鴇田家に預けられた二千年ロボの主人公を兄と慕っていた、主人公の義妹。共和国軍侵攻による空爆を受けた武人街で生き残り、ロボを回収に来た小此木に拾われ、偽りの皇帝として祭り上げられる。
以降、皇宮の「かごの鳥」としてエアお兄様日記をつけ、お兄様への慕情を地下のマグマのように溜め込んで過ごす。体験入学で訪れた学園で見とがめた人は、忘れるはずもない兄であった…。

とんでもなかった、個別ルートとおまけが。義妹と幼馴染みについては極めたはずのオーガスト、10年振りにエロい義妹持ってきましたね(・∀・) でも背徳感は足りなかった。全キャラ(朱璃除く)個別は短めで、シチュエーションを変えながらエッチしてるだけなので、その辺凡庸となってしまいました。火力は朝霧麻衣とは比べものにならなかった。

奏海ルートでは朱璃は皇姫からおりてしまい、皇帝は奏海のまま立憲君主制をめざす展開になります。奏海が皇帝のままなのだから、そのへんの背徳感使う(実は朱璃のおまけで玉座シチュを使ってしまっている)とか、二千年ロボは神機なのでいっそ翡翠帝が所有物としてかこってしまうとか、いろんなことができたはずなのにすごくもったいなかった。

エルザ・ヴァレンタイン(CV:奏雨)
共和国軍総督の娘にして、宗仁が通う学園の生徒会長。共和国に接収されている学園で生徒会長とはお飾りだが、共和国軍人としての戦闘能力/指揮能力は本物。戦争をビジネスとしてしか捉えていない父親を唾棄し、共和国主導ながらも皇国人が生き延びる方策を思案する。宗仁や滸に感化され、「自分の中ある最低限の高潔さ」に殉じて戦争屋の父親を見限り、奉刀会と行動をともにする。

エルザのルート、必要だったかな?(暴言)。本線というか朱璃へ行くルートではよく動きます。主人公が大願を成すための内通者ではなく、あくまで自分が主体で主人公な流れ。古杜音とは別の、完成された猫って印象なので、スーパーサブキャラでおまけでHシーンを与える程度でよかったのかも。そのくらい、本線のほうが輝いているのですよ。

ルートがなかったらなかったで、「攻略させろ」が出てくる、だから作っちゃいました。そんな感じですねぇ。本線で宣言していたとおり、エルザルートでは民主化した皇国で翡翠亭からの禅譲を受けて初代大統領になります。でも「その設定、エルザをかわいくするのに、役に立ってるのかな?」。


稲生滸(いのう ほとり CV:波奈束風景)
稲生家当主の娘にして武人。父で当主である刻庵が共和国軍に拉致された後は、他の武人をまとめる奉刀会会長代行を務めている。主人公とは幼馴染み(のつもり。ロボなのであり得ないが、鴇田家に預けられて後の話)で、戦前から世話を焼いていた。共和国侵攻後、記憶をなくした(実際は小此木が回収したロボの肉片を花屋で再生させていた後の)主人公の世話をしている。宗仁のことが一番わかっているのは自分、という自負が、朱璃の出現によってさざ波を立てる。

真っ正直でカタナ馬鹿、ムカデ分岐がユースティアを彷彿とさせる本作で、なんとなくフィオネやエリスを連想させる立ち位置です。分岐も早かったのでイヤな予感がして、最後まで放置してありました。だってフィオネルートのおざなりっぷりヒドかったんだもの。
滸ルートでは分岐が早いをむしろ生かしたカタチになっていました。すなわち、竜胆作戦の前後で、武人の心得やあり方をなぞって滸をいじるに留めてる。これでいいんです。武人には皇国ののちの政治的なあり方とか、けっこうどうでもよくて、エルザや奏海のような国の後日談いらないんですね。そういう面倒くさいのバッサリ切って、ひたすら主人公とチチくりあう。これがエ□ゲでしょうと。

この人もエルザと同じく、本編で躍動するタイプです。槇の煽りで不知火を抜刀する滸、最高ですね(分岐しても出ますがテキストが別)。こういうとこオーガストだなぁと感じるところです。



<魅力的なサブキャラたち>
ヒロインでも主人公でもない、魅力的なサブキャラたちについて。
「いいエロゲにはいい男キャラがいる」って、槇も刻庵殿もよかった。睦美さんは槇となんとなくいい感じだったので、あのまま放置しておいてほしかったのに。滸を導く存在としても槇数馬、「正しい大人」でした。

刻庵殿、死んだと思ってたのにまさかの立ち絵あり!奥伊瀬野襲撃→古杜音渾身の「研ぎ」→ミツルギ覚醒、までの流れは今作最高の見せ場になりました。最終決戦で「あなたの父は宗仁に斬られたのよ?」と煽る雪花に、「これ以上ない朗報だ」と受ける滸まで含めて、美しい話になりました。


前半を盛り上げてくれた小此木の話はみんなすると思うので、わたしはエルザパパと雪花の話をしましょうか。過去のオーガスト作品でここまでクズな悪役はいなかったと思うのですよ、この二人(笑)。たいがいは主人公&ヒロインとは別のベクトルを持っていて、自分の正義のために動いてるとか、あるいはユースティアレビューで取り上げたガウのように、善悪なく本能で攻撃するタイプ。

難しい話をするために、この手のステレオタイプな悪役にはしなかったはずなのです。でも一周回ってと言うか、世の中に陰湿で分かりずらい悪役が増えたためでしょうか、あえてここでわかりやすい悪い奴を出してきた、これがオーガストの新しい挑戦なのでしょうか?

最終回、まとめ編では、やっとそんな話をしてみます。

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