少年時代に遭遇した忌まわしい事件の影が再来し、「白墨人形」の謎と恐怖もまた蘇る…30年の時を経た二つのパートを交互に展開していく、巧みなプロットが特徴のサイコホラー/ミステリ。中核となる30年前の少女バラバラ殺人事件、の他にも小さな謎と伏線を配置し、解きほぐしていく手際が見事で、最後まで心地よくも予想を裏切り続けてくれる。語り手たる主人公の「収集癖」やアルツハイマー病の伏線もあり、ミステリとホラーのバランスも良い。惜しむらくは、主人公たちの家庭環境や、思うに任せぬ成人後の状況など含め、描写を盛り込みすぎて、ピントがブレている向きがなくはない…「チョークマン」ことミスター・ハローランと、事故で美貌を損なわれた少女「ワルツァーの子」の悲恋は、むしろ主人公たちの物語よりも興味深く、読み足りない。
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